久実さんの、雑貨屋が、ついに閉店した。
注文したアイスラテを、美味しそうに飲む久実さんを見て、
「大丈夫なの?」とマスターが尋ねた。
「こうなるって、だいたい分かっていたし、仕方ないのかなあって・・・。
オーナーが、無理して退職金出してくれたし、失業保険も、貰えるから何とかなるでしょ?」
他人事みたいに話す久実さんの心中がわかるだけに、マスターも慰める言葉も見つからない。
「ごめんなさい、こんな時に・・・。」
渚ちゃんが、困ったように、「私、7月から正規採用が決まったんですと言った。」
良かったじゃない、と久実さん、おめでとうとマスター。
「良いのよ、私の事、気にしなくたって、渚ちゃんだって頑張ったんだから」と久実さんが、申し訳なさそうな渚ちゃんを気遣う。
「久実さんにだって、そのうち良いこともあるよ。」
奥の席から、加藤のおじちゃんが、声をかける。
私も、心当たりに、聞いてみるから、焦らないで、ゆっくりしたら良いよと言ってくれた。
亀の甲より年の劫。
加藤のおじちゃんは、普段あんまり口数が多くないが、こんな時には、頼もしい。
残りのアイスラテを飲み干した久実さんは、元気が出ましたと言って帰って行った。