暑い暑いと言いながら、ヤマさんが店にやって来た。
そんな様子を見て、冬子さんが、「私は、昨日に比べて、少し肌寒いような気がするんですけど、ヤマさんは、良く動いていらっしゃるから、暑いのね。」と、言った。
腕まくりをして、マスターの淹れてくれたアイスコーヒーを一気に飲み干すと、やっと落ち着いた様子で、二人に、相談に乗ってもらいたい事があると言った。
「ヤマさんが、相談事なんて、珍しいね」
カウンターを拭きながら、マスターが、興味深げに尋ねた。
「実は、明日、かみさんの誕生日なんだけど、何をプレゼントしたら良いか、頭が痛くてさ・・。」
「あら、ヤマさん優しいのね。奥さんにプレゼントなんてステキだわ」冬子さんが、ヤマさんを、褒める。
マスターが、「私みたいな独り者に聞かれてもねえ、冬子さん、考えて上げて下さいよ」と、冬子さんに、賽を投げる。
「何時もは、どんな物を差し上げているの?」冬子さんが、ヤマさんに、尋ねる。
「何時もは、ケーキだったり、寿司だったりなんですけど、今年は、他の物にしてやりたいと思って」
「女の人は、バックだったり、装飾品が、良いんじゃないかしら?」
ヤマさんも、冬子さんのアドバイスに、納得した様子で、お礼もそこそこに、店を飛び出して行った。
「ヤマさんて、優しいわね」冬子さんの言葉に、マスターも、「一見、ガサツなんですけど、ホントは、凄く優しいんですよね。」と、うなづいた。