お持たせの栗どら焼きを口に運びながら、冬子さんは、曇った窓の外を気にしている。
「何だか、今にも雪が降って来そうね」
「この空じゃ、降って来そうだね」加藤のおじいちゃんが、老眼鏡を額にずらしながら、相槌を打つ。
マスターは、冬子さんリクエストの抹茶を、立てている。
「昨日、空が神戸に行ったんだけど、あっちは雪がひどいみたいで、気がかりでね。」と、加藤のおじいちゃんが、言った。
「仕事ですか?」マスターの問に、「向こうで就職が決まったみたいでね」と、言葉に元気がない。
良かったじゃありませんかという冬子さんに、「ふらふらしないで、家の仕事でも手伝えばよいのに」と、辛らつだ。
抹茶をすすりながら、「私は、星と空を分け隔てなく育てたつもりなんだけど、やっぱり空には、甘かったんだろうかね?」自問するように言ってため息をついた。
マスターが、「そんなことありませんよ、空君もしっかりしてますよ」と、空を庇った。
冬子さんが、肩のショールを引き寄せながら、冷えると思ったら、やっぱり降って来たわよと、窓の方を見ながら二人に告げた。