久実さんの夢  239

2024-02-25 18:58:07 | 小説

奥の席で、久実さんと星が、ノートパソコンを見ながら話しこんでいる。

マスターが、コーヒーを運んでいくと、久実さんが、マスターに、「この店、どう思います?」と、唐突に尋ねた。

「どうって?」と、質問の意味が、分からないマスターが、聞き返した。

星が、パソコンをずらせて、マスターに見せた。

画像は、最近閉店した駅近の帽子屋のものだった。

「ここで、自分の店、やってみたいと思っているんだけど、どう思いますか?」久実さんが、改めて、マスターに、尋ねた。

「久実さん、アルハンブラ、やめるの?」

「アルハンブラも、それなりに面白いけど、自分がやりたい内容と違うし、人間関係も、煩わしくて、思い切って自分でやってみようって考えていたんです」と、思いつめたように話した。

星には、良い物件があったら、声を掛けてほしいと、頼んであったそうだ。

「ビルは、古いけど、駅に近いし、帽子屋も、人気があったが、オーナーが高齢になって廃業したそうだし、悪くない物件だと思うんですよ」と、星が、補足した。

この頃、久実さんが、何か悩んでいるようなのは、マスターも気づいていたが、

自分で、店をやろうと思っていたなんて、考えてもいなかった。

 

 

 

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