図書館の傍にある公園の駐車場に、見覚えのある車が止まっている。
何時だったか空君が、兄貴に借りたんだと言って乗って来たブルーのBMWだ。
でも、今日は仕事のはずだから、見間違いだろうと思って、車の横を通り過ぎた。
渚ちゃんが、公園の出口に近づいた時、後ろから軽くクラクションが鳴らされた。
慌てて、銀杏の木の方へ身体を避けると、さっき駐車場で見たBMWが、静かに止まった。
窓が開いて、空君の兄の星が、顔を覗かせた。
公園の傍のマンションに、下見に来た帰りだと言った。
良かったら家まで乗って行かないかと、誘ってくれた。
お仕事中でしょうからと、渚ちゃんが断ったのだが、話しておきたいことが有ると言われて、
乗せてもらう事にした。
何時も、じいちゃんや、空がお世話になってありがとう。
最初に、星から話しかけられた時、な~んだ、話ってそんなことだったのかと、ほっとした渚ちゃんだった。
何時かマスターも言っていたけど、星と空君は、雰囲気は似ていても、顔立ちは、あまり似ていない。
空から、僕のこと何か聞いている?
唐突に星が、話し始めた。
何かって?
僕たちが、本当の兄弟じゃないって事。
えっつ!
星の言葉に、渚ちゃんは、絶句した。
もしかして、私の事からかっているのかも?
ドラマ好きだって思っているのだろうか?
渚ちゃんが、思いめぐらせている時、からかってなんていないよと、星が、渚の心を見透かすように、
呟いた。
爺ちゃんの孫は孫なんだけど、空とは、兄弟じゃなくて、従兄弟なんだ。
僕の両親が小さい頃、離婚して、その後父が亡くなったから、爺ちゃんに引き取られたんだ。
戸籍上は、空の両親の養子になってるんだよ。
でも、何で私に、話してくれたんですか?
じいちゃんも、空も僕の為に話さない方が良いって考えてるみたいだけど、後から他の人から聞くより、話しておきたくて・・・。
車は、いつの間にか、マスターの店の前まで来ていた。
窓から、懐かしい☕の香りが漂って来た。