宴の後  232

2023-12-28 17:39:48 | 小説

店の常連が、勢ぞろいした久しぶりの忘年会は、9時半に、お開きとなった。

後かたずけは、久実さんと航が、マスターを手伝うと、申し出たけど、

すっかり酔いが、回った二人を見かねて、結局、渚が手伝うことになった。

遅れてきた星も、料理は、得意じゃないけど、皿洗いくらいは、出来るからと、マスターのエプロンを借りて、手伝い始めた。

ヤマさんが、冬子さんと加藤のおじいちゃん、椿さん親子を、車で送っていった。

航は、悪いと思ったのか、一度、久実さんを、アパートに送った後、差し入れだと言って、コンビニで、肉まんと、餡まんを買ってきてくれた。

「マスターや、渚ちゃんは仕事が忙しくて、あんまり食べてないでしょ。星さんも、後から来たから、中華まんくらいまだ、いけるでしょ」と、皆に勧めてくれた。

マスターが、航の心遣いに、感謝して、☕入れるから、一旦休憩しようよと言った。

渚と星も、タオルで、手を拭くと、航に、お礼を言ってから、まだ湯気の出ている中華まんを、頬ばった。

「外、寒かったけど、星が綺麗でしたよ」航が、二人に話しかけた・・・。

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サンタの長靴  231

2023-12-22 17:14:07 | 小説

忘年会一番乗りは、冬子さんとピンクのニット帽を被ったれんげちゃんだ。

今日は、学童を休んだそうで、ママは、後から久実さんと、お料理、持ってくるってと、れんげちゃんが言った。

マスターが、二人に席に座るように勧め、厨房を手伝っていた渚ちゃんが、冬子さんには、お茶

れんげちゃんには、オレンジジュースを運んできてくれた。

今日は、休暇を取ったそうで、冬子さんが、悪いわねと言うと、好きでやってるので、気にしないで下さいと言った。

れんげちゃんが、冬子さんにもらったクリスマスの絵本を広げて見ているところに、ヤマさんと、加藤のおじいちゃんがやって来た。

二人とも、申し合わせたように、お菓子の詰まったサンタの長靴を手にしている。

れんげちゃんへのプレゼントだ。

「すごく、欲しかったんだけど、高かったから、ママに言えなくて」と言って喜んだ。

後から来た椿さんが、二人に、何度もお礼を言った。

ヤマさんも、加藤のおじいちゃんも、れんげちゃんは、孫みたいなものだからと、口をそろえて言った、


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の夕暮れ   230

2023-12-15 17:03:52 | 小説

ヤマさんが、店を出るのと入れ違いのように、渚ちゃんが、やって来た。

今、お父さん、帰ったとこだよと、マスターが、声を掛けると、そこで、合いましたと、言って、

淡い水色のコートを、ハンガーに掛けた。

「外、寒くなって来ましたよ。」と、言いながら、カウンター席に腰かけた。

カウンターのイスには、冬子さん手作りの毛糸編みのカバーが、掛けられている。

「お父さん、大分、元気になったみたいで、良かったね。」と、マスターに言われて、「ちょっと、調子が良いと、じっとしてなくて、母が、言っても聞かないんです。」と、こぼした。

クリームたっぷりのカフェラテを、美味しそうに一口飲んだ後、「22日、私も、手伝いに来ますから・・・。」と、言った。

マスターが、忙しいんじゃないの?と言うと、「私に声掛けてくれないなんて、みんなひどすぎですよ」と、言って、怒った。

「皆、気を使ってるんじゃないの?」マスターに言われ、「そんなの、余計な気遣いですよ、私が、厨房手伝わなかったら、どうなると思ってるんですか?」と、鼻息が荒い。

久実さんと、南条君が、手伝ってくれるって言うから、何とかなるんじゃないと、マスターに言われても、後に引く気配がない。

確かに、久実さんや南条より、バイト経験者の渚が、手伝ってくれた方が、マスターには、助かるけど、星の事は、ほっといて良いのだろうか?

 

 

 

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久し振りの忘年会  229

2023-12-08 08:12:59 | Weblog

仕事帰りの南条航と、久実さんが、店に寄った。

久し振りに、忘年会をしたいのだけど、22日頃はどうかと、マスターに尋ねた。

特に予約が、入っていないから、大丈夫だよとマスターが、言った。

カウンターに置かれた樅木やサンタの🛷のアレンジされたスノードームを、航が手のひらに乗せて、見いっている姿は、少し子供ぽくて、微笑ましかった。

加藤のおじいちゃんや、ヤマさんには、マスターから、話しておいてほしいと久実さんから頼まれ、了承した。

予算や、料理の事など予め決めた後、準備は、久実さんと航、図書館の新人の、リンちゃんも手伝うと、言った。

いつもなら、渚ちゃんが手伝ってくれるけど、今年は、忙しそうだからと、久実さんが、意味深に、言った。

それを聞いた、航が、羨ましい限りですと、言ったものだから、普段は、あまり笑わないマスターが、プッと、吹き出した。

 

 

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

焼き芋   228

2023-12-01 11:07:54 | 小説

寒くなったねと言いながら、加藤のおじいちゃんが、少し背をかがめて、店に入って来た。

手にした湯気の出ている紙袋を、マスターに渡した。

「来る途中のスーパーで、焼き芋、買ってきたから、みんなで食べようよ」と言った。

「ご馳走様です。」と、お礼を言った後、棚から志野の大皿を、取ると、綺麗に洗ってから、アツアツの、焼き芋を、並べた。

「焼き芋も、こんな皿に盛ると、見栄えが良いね。」と、加藤のおじいちゃんが、褒めた。

店の隅に、見慣れぬ二人連れの客がいたが、冬子さんの姿は、ない。

マスターが、察して、そろそろ、冬子さん、いらっしゃるんじゃないですかと、言った。

加藤のおじいちゃんが、☕を飲みながら、焼き芋を食べ始めた頃、ドアが開いて、冬子さんが、入って来た。

挨拶も、そこそこに、首に巻いたストールを外しながら、「あら、丁度よい所に、来たみたい」と、言って、カウンターに置かれた、焼き芋の皿を、嬉しそうに、見ている。

加藤のおじいちゃんが、「冬子さんに食べさせたくて、買って来たんだよ」と、声をかけた。

冬子さんは、マスターの出してくれたおしぼりで、手を拭くと、焼き芋を、美味しそうに、食べ始めた。

☕を一口飲んだ後、「でも、昔は、焼き芋屋さんが、焼き~いもって言いながら、軽トラで

売りに来てたのに、今は、スーパーで、売るようになって、時代が変わったんだなって、しみじみ思うわ」と、言った。

加藤のおじいちゃんも、「昔は、良かったよね。焼き芋、買いに行くと、これ、一つおまけしとくなんて、言ってくれてさ・・・。」

冬子さんが、「今は、おまけどころか、焼き芋にだって、消費税が、付きますよ」と、嘆いた。

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする