根津甚八

2022-08-28 07:43:33 | 日記

tvで、僕らの時代を見た。

木野花、小泉今日子、安藤玉枝の三人が、出ていた。

舞台で、向田邦子の、阿修羅のごとくに、出演されるそうだ。

三人が、嘗て好きだったアイドルの話になり、木野花と、キョンキョンが、根津甚八が、たまらなく好きだったと、話していた。

ああ、この人たちもそうだったんだ!

私も、当時、彼が一番好きだった。

アングラって、いっても今の人は、知らないよね。

アンダーグランウンド演劇出身の俳優で、根津甚八は、立っているだけで、存在感のある俳優だった。

安藤玉枝が、二人に、どこが魅力だったのか、尋ねていた。

二人が言うように、色気、青春の陰り、低い声、女殺し・・・。数え上げればきりがない。

キョンキョンが、冬の運動会を何度も観た気持ちが良く解る。

私は、立原正明原作のドラマ「恋人たち」で、相手役が、大竹しのぶのドラマが、胸にささった。

晩年は、体調を崩されて、ドラマに出ることもなく、亡くなった。

でも、僕らの時代を見て、木野花とキョンキョンの会話から、遠い青春の、思い出が蘇り、

根津甚八という、光り輝く俳優が居たことを、思い出せてよかった。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遅い夏休み   170

2022-08-16 17:53:56 | 小説

椿さんが、れんげちゃんを連れて、店にやって来た。

カウンターに生けられたトルコ桔梗を見て、[お花っていいですね、癒されますね。]と、言った。

れんげちゃんも、「紫が、綺麗だよね。」と、母親の真似をして、花を褒めた。

マスターが、れんげちゃんには、リンゴジュース、椿さんには、アイスコーヒーを、勧めた。

冬子さんから聞いて、心を痛めていたと、ヤマさんの容体を、椿さんが、尋ねた。

マスターも、詳しいことは、わからないけど、徐々に快方に向かっていると、加藤さんから聞いたと伝えた。

星君が、加藤さんの指示を受けて、ヤマさんの家族を、支えているみたいだと言った。

「私も、やっと、今日から夏休みが取れたんで、渚ちゃんに、海苔巻き作って来たんですけど、渡して頂けますか」と、紙包みを、テーブルに置いた。

あんまり上手に出来なかったけど、マスターの分も、作って来たので、食べて見て下さいと言った。

「まあまあ、美味しいよ。」れんげちゃんが、生意気な口調で言ったので、マスターが、吹き出した。

最近、ヤマさんの心配で、笑うことが、絶えていたので、れんげちゃんと、椿さんが来てくれて、

久しぶりに、心に、余裕が出来たような気がする。

干瓢、卵、椎茸、ほうれん草、ピンクのそぼろの入った太巻きは、色とりどりで、食欲を誘う。

これを見たら、渚ちゃんも、きっと喜ぶだろう・・・。

 

 

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真夏の日差し   169

2022-08-10 06:38:18 | 小説

「取りあえず、一安心よね」冬子さんの言葉に、マスターも、加藤のおじいちゃんんも、深く頷いた。

渚ちゃんから、連絡があって、ヤマさんが、icuから、一般病棟に移ったそうだ。

コロナ禍なので、直接本人との面会は、出来ないそうだが、手術の結果が良かったみたいで、2週間もすれば、退院出来そうだとのことだ。

加藤のおじいちゃんは、大好きな☕を、断って、ヤマさんの無事を祈っていたので、やっと、コーヒーが飲めると、安堵している。

「それにしても、店も、暫く休まなくちゃいけないだろうし、色々大変ですよね、」と。マスターが言った。

「私は、奥さんや、渚ちゃんの事が、心配で、何かできることがあれば、何でもしようと思っているんですよ」と冬子さんが、思いつめた口調で、言った。

ヤマさんの心配で、寝不足が続いたせいか、頬が、やつれ、目も窪んでいるように見える。

加藤のおじいちゃんも、「私も、出来る限りの事は、するつもりだし、娘や、星にも手伝わせるつもりだから」と、言った。

ただでさえ暑い今年の夏は、皆を痛めつけるかのように、ジリジリと照り付ける。

 

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長い夜が、明けて・・・。  168

2022-08-07 09:15:14 | 小説

どれくらい時間が経ったのだろう。

自分では、絶体眠らない自信があったのに、いつの間にか寝てしまったようだ。

渚の膝には、水色のタオルケットが、掛けられ、長椅子の背には、グレーの固めのクッションが、あてがわれていた。

きっと、星の気遣いだろう。

長い廊下の向こうから、手にペットボトルを持った星が、歩いてきた。

「少しは、眠れた?」渚に声を掛けると、アクエリアスのペットボトルを渡した。

お礼を言って、ペットボトルを受け取る時、見上げた星の顔は、目が、少し充血して、疲れがにじみ出ていた。

こんなにも、自分を心配してくれたのかと思うと、思わず涙ぐんでしまった。

星は、渚が、泣いたのは、ヤマさんを、心配してなのだと、勘違いしたようだ。

「さっき、看護師さんが来てくれて、もう、大丈夫だから、連絡があるまで、家で待つように言われた」と、渚に、告げた。

星は、家まで渚を送り届けると、空には、オレから、連絡しておくからと、言った。

渚は、星の言葉を、遮ると、空には、余計な心配を掛けたくないので、父が落ち着いたら、自分で、連絡すると答えた。

「それで良いの?こんな時こそ、空がいたら良かったのに・・・。」

星には、感謝しても、仕切れないほど、感謝してるのに、尚も渚の事を考えてくれる

想いに、胸が苦しくなった。

 

 

 


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヤマさん、倒れる  167

2022-08-05 22:13:40 | 小説

日頃、元気だけが、オレの取柄だと口癖のヤマさんが、倒れた。

幸い、命だけは、取り留めたものの、心筋梗塞で、緊急手術を受けた。

渚ちゃんの横には星が、付き添っていた。

さっきまで、渚の母も、一緒だったが、疲労が激しく、星が、自分が付き添うからと言って、自宅に、帰した。

連日の暑さで、血圧が、やや高めだったせいもあったのか、仕事先で倒れたヤマさんを、病院に運んだのも、たまたま居合わせた星だった。

マスターや、冬子さん、久実さんもすぐに病院に駆け付けたかったが、こんな時期なので、遠慮するように、言われてしまった。

加藤のおじいちゃんから、星が付いているから、心配ないと言われても、皆の動揺は、激しかった。

マスターの店に集まって、ヤマさんの回復を、ひたすら祈っていた。

「代われるものなら、私が、代わってあげたい」と、冬子さんは、涙ぐむし、久実さんも皆に、☕を、運んだり、テーブルを、拭いたり、じっとしていられないようだ。

マスターが、「ヤマさんは、絶対、大丈夫だから」と、皆に言うというより、自分に言い聞かせるように、呟いた。

加藤のおじいちゃんだけが、「ヤマさんは、死んだりしないよ。みんながあんまり心配したら、ヤマさん、困っちゃうよ」と、皆を安心させるように、断言した。

細く開いた店の窓から、ぼんやりした月明かりが、見えた。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする