図書館の近くにある公園の桜が、満開になった。
勤務を、終え、先輩の南条と一緒に、満開の桜の下を歩く渚ちゃんの肩に、ヒラヒラと、桜の花びらが、舞い降りてくる。
「これだけ温かいと、すぐに花、散りそうだね」と、南条が、呟く。
「明日は、温度が、下がるみたいだから、案外持つかもしませんよ」
渚の言葉に、もう一度、桜の木を見上げて、その美しさに、見とれている南条は、何時ものはじけた彼とは、別人の趣だ。
何か、桜に、思い入れが、あるのだろうか?
「帰りに、マスターの店に寄ろうと、思うんですど、先輩も一緒に、行きますか?」
渚が、誘うと、暫く店に、行ってないから、一緒に行こうかなと言った。
二人は、休暇中の伊達さんが、店にいるとは、予想もせずに、ドアを、開けた。
ドアを、開けた瞬間に、レモンイエローのカーデガンを羽織った伊達さんの姿が、目に入った。
まずい所に来たなと思いつつ、二人は、仕方なく店の中に、入った。
マスターが、暫くぶりだねと、南条に、声を掛けた。
冬子さんが、ちょうど良い所に、来たわねと言いながら、言葉とは、裏腹に、困ったような顔をしているのを、二人は、見逃さなかった。