「加藤さんは、何で渚ちゃんが、空君の事好きだってわかったんですか?」
私が尋ねると、刑事の勘だねと言って笑った。
「空が、私を迎えに来た時、渚ちゃんがとってもいい顔したんだよ。
何十年か前、ばあさんに初めてあった時、あんな顔してたなって、ふと、思い出してね。
恋は好いね。」
「へぇ~、加藤さんて、鋭いんですね。」久実さんが感心したように呟く。
「でも、空君に彼女がいないって何でわかるんですか?其れも勘ですか?」
「コーヒーが、冷めますよ。」マスターがあきれ顔で、久実さんに言う。
加藤のおじいちゃんが、新聞をごそごそさせながら、後は本人に聞いてみたら良いさと、何事もなかったかのように、口を噤んだ。
恋なんて、随分してないなと久実さんが、自嘲気味に呟いた。
マスターが引く豆の香りが、店を包む。
暖かい日があれば、寒い日もある。
そんな風に、少しずつ春には近づいて行ってるのだろう・・・。