何故わかったの? 60

2021-02-25 06:22:35 | 小説

「加藤さんは、何で渚ちゃんが、空君の事好きだってわかったんですか?」

私が尋ねると、刑事の勘だねと言って笑った。

「空が、私を迎えに来た時、渚ちゃんがとってもいい顔したんだよ。

何十年か前、ばあさんに初めてあった時、あんな顔してたなって、ふと、思い出してね。

恋は好いね。」

「へぇ~、加藤さんて、鋭いんですね。」久実さんが感心したように呟く。

「でも、空君に彼女がいないって何でわかるんですか?其れも勘ですか?」

「コーヒーが、冷めますよ。」マスターがあきれ顔で、久実さんに言う。

加藤のおじいちゃんが、新聞をごそごそさせながら、後は本人に聞いてみたら良いさと、何事もなかったかのように、口を噤んだ。

恋なんて、随分してないなと久実さんが、自嘲気味に呟いた。

マスターが引く豆の香りが、店を包む。

暖かい日があれば、寒い日もある。

そんな風に、少しずつ春には近づいて行ってるのだろう・・・。

 


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大丈夫だよ・・・。 59

2021-02-23 12:38:52 | 小説

渚ちゃんが、ため息をついている。

どうしたの?

「就活も、恋も失敗続きで、嫌になったみたいだよ。」マスターが、渚ちゃんに変わって答える。

渚ちゃんは、旅行が好きで、旅行社に就職したいって前に聞いたことが有る。

この時期、旅行社の就活なんて絶望に近いだろう・・・。

「職種を変えてみたんだけど、全然だめで、親は、焦んないでのんびりしろって言ってくれるけど、

却って、心苦しくて・・・。」

いつも明るい渚ちゃんが、落ち込んでいるのをみると、私も心が痛む。

「で、恋の方はどうなの? 相手はどんな人? 

久実さんが、興味津々で尋ねる。

「やっぱり彼女がいたみたい。

ただの片思いだから、どうでもいいんだけど・・・。」

渚ちゃんが、悲し気に笑う。

何でも、数日前、憧れの人が背の高い綺麗な女の人と歩いている所を見てしまったそうだ。

「大丈夫だよ。

空には、彼女がいないはずだから・・・。」

えっ、え~!!

加藤のおじいちゃんの爆弾発言に、一同驚愕! 

渚ちゃんは真っ赤になって店を飛び出して行った。

 


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黄色い薔薇 58

2021-02-21 09:18:49 | 小説

「黄色い薔薇、綺麗ですね。」

渚ちゃんが、店に入って来るなりマスターに言った。

「花屋で、見た時、黄色が鮮やかで、春が来た~って感じでさ、思わず買ってしまったよ。」

マスターが、カップを拭きながら答える。

「黄色い薔薇って、素敵だけど、黄色い薔薇の花言葉って、別れじゃなかった?」

久実さんが、微笑みながら言う。

そう言えば、私もそんなことを、聞いたことが有る。

「でも、靴を贈ると別れるとか、江の島にカップルで行くと別れるとか、色々聞くけど、それってジンクスでしょ?」

「皆ひどいよね、たまに花を買ってきたら、別れだ、なんだって・・・。」マスターがコーヒーを運んできながら、ため息をついてる。

「でも、別れの後には、出会いが待ってますよ。」

離れた席から冬子さんが、助け舟を出す。

青磁の花瓶に生けられた黄色い薔薇が、ちょっと笑ったような気がした。 🌹

 

 

 

 


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バックナンバーとbtsがコラボ

2021-02-16 07:05:35 | 日記

4月2日公開の劇場版シグナルの主題歌を、私の好きなバックナンバーが、btsに楽曲を提供したみたいですよ。[FILMOUT]って題名です。

少しだけ聴いたんですけど、切ない曲にbtsの甘い歌声がマッチして、ずっと聴いていたくなりますよ。

坂口健太郎主演のシグナルは、確か韓国ドラマのリメークだと思うのですが、一台の無線機が過去と現代を繋ぐ、

サスペンスドラマで、この曲は、映画のイメージにもぴったりだと思います。

4月に、公開される映画が楽しみです。  


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また老人・・・。 57

2021-02-12 08:13:26 | 小説

渚ちゃんが、いら立っている。

「マスター、日本って老人しか国際社会につながるような役職に就けないんですかね?」

「そんなことないと思うよ。」

「だって、森さんが会長辞任するのって、遅すぎるくらいだけど、後任が又、老人じゃないですか?

過去にどんな功績がある人なのかってことより、今が大事だと思うんですよね。世界は、呆れてると思う・・・。」

「私も老人だけど、この際、お若い方に譲るべきだと思いますよ。」

冬子さんが、静かに言い放つ。

「フィンランドの首相や、台湾のit大臣なんて30代でしょ。

私が腑に落ちないのは、辞める人が、後任を選ぶって変だなって思うんですよ。町内会の会長選びじゃないんですから・・・。」

マスターも、呆れている。

「それに、もしかしたら名誉会長にとどまるかもって話もあるんでしょ?

ああ、結局なんにも変わらないんですね。」

「うちの父なんか、今朝早くから近所の一人暮らしのおばあちゃんの家の電球取り換えに行きましたよ。お金なんて、貰えないだろうに、おばあちゃんが、困るだろうからって。」

「そんな風に庶民は、生きているのに、なんであの人たちって、

自分の地位や、名声にしがみつくんだろうって考えちゃう。」

すっかり冷めてしまったコーヒーを渚ちゃんが悲し気に啜った。

 


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自粛太りだ~

2021-02-11 12:02:59 | 日記

朝晩は、寒さが厳しいけれど、日中は、春の日差しだ。

庭の水仙や椿が一足早く、春の訪れを告げている。

それにしても、自粛生活が長引くと、体を動かす機会が、減少し、間食が増え、結果体重の増加に繋がってしまう。

ああ~

去年の緊急事態宣言の時も3㎏増え、何とか元の体重に戻ったのだが、体重計に乗るのが恐怖で、

暫く体重を計らなかった。

今日、意を決して体重計に乗ったら、2,5㎏の増加!

ああ、ポテチ、チーズポテチ、バターポテチ、オニオンポテチが無駄な肉に化したんだね。

ネットをみながらの間食、当分控えます

 

 


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加藤のおじいちゃん、会長を辞職 56

2021-02-05 08:18:08 | 小説

加藤のおじいちゃんが、マスターと話していた。

昨日、テレビで森さんの謝罪会見を見ていて、自社の会長を辞めることを即決したそうだ。

「森さんの発言を聞いて、自社の会長を辞める決断をした意味って何ですか?」とマスターが訊ねた。

私の会社は、風が吹けば飛んでしまうような小さな会社だけど、婿(空君のお父さん)に言われて、名前ばかりの会長職に就いていたんだけど、自分が周りの人たちに、いかに迷惑をかけていたか実感したそうだ。

「私は、森さんより少し年下だけど、昭和生まれとしても、時代錯誤発言を繰り返す姿は、哀れにみえてね。」

「特に、謝罪会見の中で、世の中には、男性、女性、ああ、両性がいるみたいな発言には、驚いてしまったよ。」

両性って何?

「世界中が注視している中で、あんな発言を繰り返すようじゃ、終わったなと思ったよ。」

マスターが、加藤のおじいちゃんのカップにコーヒーを注ぎながら、

本人もだけど、周りの人達もきちんと辞職するべきだと伝えて上げなくちゃねと、同調した。

「会見の最後に、はっきり辞職すべきだと言った記者が、一人だけいたけど、勇気があると思いましたよ。他の記者たちは存在に怯えてましたものね。」

「私も自分の年齢、自分の考えの愚かさに気付かされて良かったと思ったよ。

人生の最晩年まで、あんな風には生きたくないなってね。」

何だか、今日のコーヒーは、美味しいね。


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