冬子さんが、何時もの席で、レース編みをしている。
西日が、眩しいと言いながら、ちょっと手を休め、冷めた紅茶を啜った。
「随分、熱心ですね、あまり根を詰めると、肩が凝りますよ。」と、マスターが、忠告した。
そうねと言いながら、途中まで編んだレース編みを広げてみて、「後、もう少しなんだけど、今日は、もう止めておきましょうね」と、自分に言い聞かせるように言って、畳んだ編み物を、紙袋にしまった。
マスターが、見かねて、紅茶を入れ直してくれた。
「この間、図書館で、渚ちゃんに、親切にしていただいたお礼に、サマーカーデガンを差し上げようと思っているのよ」と、冬子さんが、マスターに話しかけた。
読みたい本が、本棚の高い所にあったので、あきらめて帰ろうとしたら、渚ちゃんが、何処かでその様子を見て、脚立を持ってきて、取ってくれたそうだ。
「渚ちゃんを見ていると、昔の私を見ているようで、とても愛しくなるのよ。」と、付け加えた。
ちょっとお転婆で、おせっかいで、困っている人がいると、ほっておけないのよね・・・。
「レースのカーデガン、きっと渚ちゃん喜びますよ」と、マスターが、太鼓判を押した。