「おお、白クマ、ピーナッツチョコも捨てがたい」南条君は、袋の中を、のぞきこむなり、どのアイスを選ぶか迷っている。
久実さんが、「お腹を壊さないなら、両方食べれば」と言った。
ほんとにと言いながら、マスターの出してくれたクリスタルの皿に、2本のアイスを取り分けて、ごきげんだ。
渚は、カップのバニラ、新人は、雪見だいふくを、選んだ。
加藤のおじいちゃんが、「ところで、新人さんのお名前は?」と、尋ねた。
渚が、新人に代わって、「桜田リンちゃんです」と、紹介した。
リンちゃんも、渚に続いて、よろしくお願いしますと、深々と頭を下げた。
加藤のおじいちゃんも、自分の事を「加藤のおじいちゃんです」と、自己紹介した。
南条君が、「不動産会社の会長だよ。」と、付け足すと、もう引退した、ただのじじいだよと言って、皆を笑わせた。
マスターが、アイスラテを皆に配ってくれた。
「仕事は、慣れた?」久実さんが、リンちゃんに尋ねた。
リンちゃんは、何時も主任に怒られてばかりです。と言って、困ったような顔をした。
「主任って?」久実さんが聞くと、南条君が「伊達っち、うるさくて」と、リンちゃんを庇った。
渚も、「私も新人の頃、良く怒られたから、あんまり気にしない方が良いよ」と、言った。
リンちゃんは、自分が言ったことを忘れたかのように、雪見だいふく美味しかったですと、久実さんにお礼を言って、口の端についたアイスを、キャラクターデザインのハンカチで拭いた。
加藤のおじいちゃんが、「アイスも人も、色んな種類があるからさ、良く味わってみないと、わからないよ。」と、含蓄のある言葉を呟いた。