若草物語 92

2021-08-08 17:40:31 | 小説

何だか雲行きが怪しくて、今にも一雨やってきそうだ。

暫く休んでいないし、こんな日に店を開けても、仕方がないかな?

マスターが、店を開けるのを躊躇していると、ドアが開いて、冬子さんがやって来た。

傍らに、れんげちゃんを連れている。

「何だか、嫌なお天気ね、お邪魔しても良いかしら?」

まるでマスターの気持ちを見透かすように、冬子さんが尋ねた。

「どうぞ、どうぞ、今開けようと思っていたところですから・・・。」

「そうかしら?」

「お休みにしようなんて、考えてらしたんじゃなあい?

れんげちゃんが、学童に行きたくないって言うから、一緒に来たのよ。」

「だって、ママは仕事だし、何処にも連れてってくれないんだもの・・・。」

「じゃあ、おじさんが、何か美味しいものをごちそうするよ。」

マスターの言葉に、機嫌を直したれんげちゃんは、手提げ袋から本を取り出して読み始めた。

「この間、渚ちゃんの図書館で、借りてきたのよね。」

表紙には、ルノワールの絵のような少女が4人描かれている。

「若草物語」、タイトルを見て冬子さんが、「昔、私も読んだのよ」と言った。

マスターの出してくれたりんごジュースを飲みながら、れんげちゃんは、熱心に本を読んでいる。

「冬子さんは、4人のうちで、誰が好きですか?

マスターが、尋ねる。

「そりゃあ、ジョーが、一番魅力的だわ。

行動力があって、思いやりがあるし、想像力が豊かで・・・」

「冬子さんも、ジョーに、ちょっと似てるかな?」

マスターの言葉に、「おだててもダメですよ、何もでないわよ」と言いながら、悪い気はしないらしく、遠くを眺める眼差しは、ほんとにジョーを彷彿させる。

 

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