何だか雲行きが怪しくて、今にも一雨やってきそうだ。
暫く休んでいないし、こんな日に店を開けても、仕方がないかな?
マスターが、店を開けるのを躊躇していると、ドアが開いて、冬子さんがやって来た。
傍らに、れんげちゃんを連れている。
「何だか、嫌なお天気ね、お邪魔しても良いかしら?」
まるでマスターの気持ちを見透かすように、冬子さんが尋ねた。
「どうぞ、どうぞ、今開けようと思っていたところですから・・・。」
「そうかしら?」
「お休みにしようなんて、考えてらしたんじゃなあい?
れんげちゃんが、学童に行きたくないって言うから、一緒に来たのよ。」
「だって、ママは仕事だし、何処にも連れてってくれないんだもの・・・。」
「じゃあ、おじさんが、何か美味しいものをごちそうするよ。」
マスターの言葉に、機嫌を直したれんげちゃんは、手提げ袋から本を取り出して読み始めた。
「この間、渚ちゃんの図書館で、借りてきたのよね。」
表紙には、ルノワールの絵のような少女が4人描かれている。
「若草物語」、タイトルを見て冬子さんが、「昔、私も読んだのよ」と言った。
マスターの出してくれたりんごジュースを飲みながら、れんげちゃんは、熱心に本を読んでいる。
「冬子さんは、4人のうちで、誰が好きですか?」
マスターが、尋ねる。
「そりゃあ、ジョーが、一番魅力的だわ。
行動力があって、思いやりがあるし、想像力が豊かで・・・」
「冬子さんも、ジョーに、ちょっと似てるかな?」
マスターの言葉に、「おだててもダメですよ、何もでないわよ」と言いながら、悪い気はしないらしく、遠くを眺める眼差しは、ほんとにジョーを彷彿させる。