開店当日   246

2024-05-11 16:27:45 | 小説

久美さんの店に行ってきたと言って、ヤマさんが、顔をみせた。

どうでした?

カウンター席に座ったヤマさんに、マスターが、尋ねた。

ネイビーのポロシャツを着たヤマさんは、マスターの出してくれた、冷たい水を、一気に飲み干すと、大盛況だったよと言った。

小さな店の外まで、行列ができていたそうだ。

久実さんの店って感じの洒落た作りで、置いてある物も、ご婦人方が喜びそうな物が、並んでたよと、報告した。

ズボンのポケットをごそごそさせて、ラピングされた小箱を取り出すと、かみさんに渡そうと思ってさ、と照れながら、カウンターに置いた。

ヤマさんは、指輪なんて、結婚指輪くらいしか、やったことがないからさ、俺が、入院したりして、随分迷惑かけたから、そのお詫びと感謝の気持ちだよと、言った。

マスターが、奥さん、きっと喜ばれますよと言うと、

「本当は、あめ玉くらいでかいのを買ってやりたかっんだけど、針の先で、突っついたみたいな奴でさ」と、言って笑った。

☕入りましたよ。

マスターは、ヤマさんの優しさに心打たれたけど、敢えて、淡々とコーヒーを勧めた。

 

 

 

 

 

 


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