ルピナス   238

2024-02-16 10:12:01 | 小説

冬子さんが、ラッピングされたピンクの花の鉢を、大事そうに抱えてやって来た。

おはようございます。

マスターが、ドアを、押さえながら、挨拶した。

冬子さんは、花の鉢を、カウンターに、そっと置いた。

「駅前の花屋さんで、売っていたのよ。綺麗でしょ?」

ルピナスですね。マスターが、答える。

「流石、マスターね。私の知り合いの男の方で、チューリップくらいしか、知らない方がいるわよ。」と、言って褒めた。 

「出窓のあたりにでも、飾ってあげて」と、冬子さんが言った。

コーヒーの準備をしていたマスターが、私が頂いちゃって良いんですかと、尋ねた。

「私、一人で愛でるより、皆さんに見て頂いた方が、花も、喜ぶわよ。」

二人が、そんなやり取りをしている所に、散歩帰りらしい年配の客が、入って来た。

目ざとく、ルピナスの花を見つけると、綺麗な桜草ですねと、声を掛けた。

マスターは、笑いを堪えながら、ルピナスって、言うんですよと、客に教えた。

冬子さんは、何時もの席に戻り、素知らぬ顔で、☕を啜った。

 

 

 

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