読書日和

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「メロディ・フェア」宮下奈都

2013-04-13 20:33:55 | 小説


今回ご紹介するのは「メロディ・フェア」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
大学を卒業した私は、田舎に戻り、「ひとをきれいにする仕事」を選んだ。
けれども、お客は思うように来ず、家では妹との溝がなかなか埋まらない―
いま注目の著者が、迷いながらも、一歩ずつ進んでいく若い女性を描いた、温かく軽やかな物語。
明日、笑顔になれますように。
書き下ろし番外編を収録!

-----感想-----
というわけで、「スコーレNo.4」の流れから興味を持った宮下奈都さんの小説。
ちょうど「メロディ・フェア」が平積みされているのが目に留まり、こちらも読んでみることにしました。
※「スコーレNo.4」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

今作の主人公・小宮山結乃(よしの)は、福井県にあるショッピングモールの中にある化粧品会社のカウンターで働く社会人1年目の女性。
当初彼女の希望は「花形」とされるデパートの一階フロアの化粧品カウンターへの配属でしたが、そうはなりませんでした。
しかも配属されたショッピングモールの化粧品カウンターはあまりお客さんも来ず、パッとしない場所。
そんなわけで当初の理想だった「花形」とは程遠い暇な日々を送っていました。
「ショッピングモールとデパートでは客層がまるで違い、モールのお客さんは小さい子ども連れの家族やお年寄りがメインで、化粧品カウンターを目当てにモールへ来るお客はあまりいない」という彼女の分析はたしかにそうかも知れないなと思いました。
ただ一緒に働く先輩の馬場さんという人は結乃の5倍の売り上げを誇る「凄腕」でお客さんからの信頼も厚く、極端にお客が少ないわけでもないようです。
それとこういった職場で働く美容部員を「ビューティーパートナー」と呼ぶのも初めて知りました。

この結乃がビューティーパートナーとして働きながら出会う、色々な人達。
毎日夕方になると現れてスツールに座りこんで、何も買わないのに一人で喋り倒していく浜崎さんというガサツな感じのおばちゃん。
化粧にも全く興味を示さない人でした。
その彼女がある日、「あかるい口紅がほしいんや」と結乃に相談してきたことがありました。
この浜崎さんに似合う口紅を選ぶエピソードはなかなか良かったです。
結乃も「口紅一本がひとを支える」という気持ちが沸き立ち、少女の頃から大切にしてきた「口紅が好きだった」という思いを再認識するのでした

それからカウンターには寄らないのに、毎日鉄壁のメイクをして化粧品カウンターを睨みつけるように歩いてくる謎の女性が、ある日結乃に話しかけてきたこともありました。
その凄まじいメイクぶりから結乃が彼女のことを「鉄仮面」と呼んでいたのはウケました(笑)
鉄仮面のようなメイク、どんなものなのでしょうかね
実はこの人の正体が意外で、物語の重要な人物になっていました。
「化粧」とは何なのかを考えさせる人でもありましたね。
結乃は彼女のことを心の中で「そこまでメイクで武装しなくたって…」と評していました。

そして、妹の珠美(たまみ)との溝。
なぜか化粧を嫌い、結乃の「ビューティーパートナー」という職業にも良い顔をしない珠美。
一見わだかまりが消えて仲良くなったかと思いきや、化粧の話が絡むとまたすぐにギクシャクしてしまうんですよね。
珠美がなぜ化粧を嫌い頑なにスッピンにこだわるのかは興味深かったです。

結乃の働くショッピングモールで毎日17時20分になると流れる「メロディ・フェア」という曲。
「Who is the girl with the crying face
Looking at millions of signs」
作中でたびたび登場するこのフレーズ、興味を持ちました。
物語的にもこれが流れると早番の先輩・馬場さんは先に職場を上がり、また誰かしら印象的な人物が登場したりと、「節目」的な役割を果たしている曲でした
そして物語の一番最後に登場した「メロディ・フェア」。
この使い方が素晴らしく上手かったです
てっきり作中で何度も登場するから「メロディ・フェア」というタイトルにしたのかと思いましたが、ラストのページで一気に印象が変わりました。
そうか、ここで登場する「メロディ・フェア」を生かすために作中何度も「メロディ・フェア」が流れていたのかというくらい、見事な終わり方だったと思います


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