読書日和

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「家守綺譚」梨木香歩

2014-06-11 23:20:56 | 小説
今回ご紹介するのは「家守綺譚」(著:梨木香歩)です。

-----内容-----
それはついこの間、ほんの百年前の物語。
サルスベリの木に惚れられたり、飼い犬は河童と懇意になったり、庭のはずれにマリア様がお出ましになったり、散りぎわの桜が暇乞いに来たり。
と、いった次第のこれは、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねている新米知識人の「私」と天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録――。

-----感想-----
左は、学士綿貫征四郎の著述せしもの。

この一文から、物語は始まっていきます。
百年ほど前の、綿貫征四郎が書いた手記という形をとっています。
とても不思議な物語でした。

綿貫征四郎は学生時代に亡くなった親友・高堂の実家の家守(いえもり)をしています。
高堂の父親が年老いたので嫁に行った娘の近くに隠居することになり、綿貫征四郎に「この家の守をしてくれないか」と頼んできました。
家主の代わりに家に住み、毎日窓の開け閉めをしたりして普通に生活をして家を使える状態に保つことが、家守の仕事です。
以来、綿貫征四郎は高堂の実家に住み、家守をしながら物書きの仕事をして暮らしています。
物書きで得られる収入は少なく、生活は大変なようです。

綿貫征四郎が洋燈(ランプ)と蝋燭を重用し、電気をあまり信用していない様子を見ると、100年前の物語だというのを実感します。
まだ電気が普及しだして間もない頃でしょうし。

家守をしながら遭遇する、数々の不思議なこと。
まず驚いたのが、庭にあるサルスベリの木が綿貫征四郎に懸想(恋い慕うこと)していること。
木が意思を持って動いているのです。
さらに驚いたのが、床の間の掛け軸から今は亡き親友・高堂が出てきたこと。
高堂は何度も出てきて綿貫征四郎と会話します。
この世ならざることが平然と起きるのがこの作品の特徴です。
そしてそれが特に大掛かりな文章を使うでもなく、ごく自然に淡々と描かれています。
読んでいて「なるほど、この雰囲気ならそういうことがあっても不思議ではないな」と納得してしまうほど、淡々とした文体が良い感じでした
会話の部分が「会話内容」ではなく―会話内容という表記の仕方をしていたのもこの物語の雰囲気に凄く合っていました。

家の池に河童が迷い込んだりもしました
ある時は山でタヌキに化かされたりもしました
また、何か変わったことが起きると隣の家のおかみさんがあれこれ助言してくれます。
おかみさんもこの世ならざることについて「ああ、それはあれだよ」と当然のように納得していて、驚きとともに描くのではなく、当然のこととして描かれていました。
そして、最も綿貫征四郎の助けになってくれているのが犬のゴロー
まずい展開になりそうな時、何度もゴローによってピンチを脱出することがありました。

最後はやはり、親友の高堂がなぜ死んだのかの真相に迫る物語になっていました。
高堂は湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になってしまっていたのです。
恐ろしい展開というより、夢見心地でいるうちに気がついたら死んでいたというような展開で、これはこれでちょっと怖いなと思いました。

そして読み終わってからこの「家守綺譚」には「冬虫夏草」という続編があることが分かりました。
独特の和の雰囲気を持つとても面白い物語でしたし、続編もぜひ読んでみたいと思います


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