読書日和

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「FINE DAYS 」本多孝好

2008-03-16 20:11:07 | 小説
今回ご紹介するのは、「FINE DAYS」(著:本多孝好)です。


-----内容-----
死の床にある父親から、僕は三十五年前に別れた元恋人を捜すように頼まれた。
手がかりは若かりし頃の彼女の画。
僕は大学に通う傍ら、彼らが一緒に住んでいたアパートへ向かった。
だが、そこにいたのは画と同じ美しい彼女と、若き日の父だった…(「イエスタデイズ」より)
異例のロングセラーとなり、新世代の圧倒的共感を呼んだ著者初の恋愛小説、待望の文庫化!

-----感想-----
この小説は、以下の四つの物語で構成されています。

FINE DAYS
イエスタデイズ
眠りのための暖かな場所
シェード

途中まで四つの物語はつながっていると思っていたのですが、実は全く違う物語でした。
どの物語も読者を引き付ける魅力があると思います。
恋愛小説とありましたが、恋愛以外にも物語自体のスリリングさが目立ちます。
表題作の「FINE DAYS」と「眠りのための暖かな場所」は神秘的、心霊的な魅力があります。
どちらの物語も、とある女性の周りで自殺や事故が起きるという共通点があります。
私がそれぞれの物語がつながっているように思ったのはこのためです。

「FINE DAYS」の舞台は高校。
この物語に登場する女子高生は、自分に関わった者たちが“たたられる”というジンクスがあります。
言い寄ってきた男や、嫌がらせをしてきた女が、自殺をしたり事故に遭ったりするのです。
この女子高生は「FINE DAYS」の主役というわけではないですが、常に物語の中心にいます。
自分の意思で“たたり”を起こしているわけではなく、本人は特に意識していないようです。
ただ、“たたり”が起こるとき、この女子高生は突然体調が悪くなって、悪寒がしたりするようです。
本人の意思とは関係なく、生霊のようなものが出ているのかも知れません。
このあたりが、物語のスリリングさを感じるところです。
またこの女子高生、最後まで名前が出てきませんでした。
ずっと「あの子」や「彼女」という呼ばれ方でした。
名前が出てこないことで、神秘的な雰囲気が強調されていたように思います。
そんなわけで、「FINE DAYS」は恋愛よりミステリー的な物語でしたね。

「眠りのための暖かな場所」も、ミステリアスな要素がありました。
こちらは、「絵に描いたことが現実になる」という特殊な力を持った女性が登場します。
気に入らない人がいれば、その人が死ぬ絵を描いて殺すことができるのです。
物語の終わり方が印象的でした。
このままではこの女性に殺されてしまうのでは、というような展開だったので、その後どうなったのかがとても気になります。

「シェード」は、昔話が物語の中心になっています。
とあるアンティークショップの老婆が語る、ガラス職人の男とサーカス団の女の物語は、切ないものでした。
ガラス職人の男は、母親とサーカス団の座長の反対を押し切って結婚するのですが、その後には悲しい結末が待っていました。
ただ、四つの物語の中では「シェード」が一番恋愛の要素が強かったような気がします。

「イエスタデイズ」が読んでいて一番面白かったです。
癌に侵された父の頼みで、真山澪(まやまみお)という父の昔の恋人を探すことになった主人公の「僕」。
内容の欄のとおり、父と真山澪が昔住んでいたアパートの一室に行ったら、そこには不思議な光景がありました。
若き日の父と真山澪がいたのです。
この部屋の中に入ると、タイムスリップで過去に行けるようです。
仲良く付き合っていた父と真山澪でしたが、真山澪が「昔の恋人」である以上、二人の関係がいつか終わってしまうことを悟る「僕」。
決して過去を変えられないと理解しながらも、二人の関係が終わってしまうのを止めようとする「僕」の葛藤が切なかったです。
若き日の父には、今の父にはない純粋さがあったので、それを失ってほしくないという思いがあったのです。


というわけで今回読んだ「FINE DAYS」、いろいろな内容が含まれていて面白かったです
通勤の時間や昼休みを使って少しずつ読んだのですが、この本は一気に読んだほうが良いかも知れません。
どの物語も、途中で読み止めてしまうのが惜しいくらい面白い内容になっています。
文章が綺麗なのでさくさくと読み進めていくことができますよ
興味を持った方は読んでみてくださいね

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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ビオラ)
2008-03-16 23:18:41
ちょっとゾッとするような物語を想像してしまいます。

最近複雑な構成の作家の物語読んだりしていたから、これも4つがつながっていると考えるのも分かる気がします。共通点も多かったようですし。

私がも読むとすれば、きっと一気に読んでしまって、誰かに本を譲る気がします^^;
何だか後に残りそうな、ちょっと不思議な物語な気がするから・・・。

でも忘れてはならないのは、この物語達は『恋愛物語』だという事なんですよね。そこを読み取らないと・・・ですね^^b
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面白そう! (viviandpiano)
2008-03-17 01:51:04
「イエスタデイズ」、不思議な話みたいで読んでみたくなりました。
人を探すとか、時を越えるとか、
とっても魅力的な設定ですもんね。
ちょうど、読んでいたのが「時と人」に関する物語たちだったので、
琴線に触れたのかもしれません。

う~ん。
読みたい本が、たくさんあって困ります(^^;
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ビオラさんへ (読書日和)
2008-03-17 19:32:28
ゾッとするほどの怖さではないですが、ちょっと怖いところはありますね
複雑な構成の作家って伊坂幸太郎さんのことですよね。
この前読んだ「ラッシュライフ」が、いくつもの物語が少しずつリンクしていく展開だったので、「FINE DAYS」でも似たような展開を想像してしまいました。

たしかに、他の人にも読んでもらいたいような小説です
『恋愛物語』の要素は、短編によっては少ないものもありますが、どの物語にも含まれています。
そういうのを探しながら読むのも面白いかも知れませんね
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viviandpianoさんへ (読書日和)
2008-03-17 19:40:41
「イエスタデイズ」はオススメの物語ですよ
なんだかスラスラと読み進めました。
流れるような物語で、あっという間に最後まで読んでしまいましたね。
viviandpianoさんも時と人の物語を読んでいるのですか
読みたい本、viviandpianoさんならどんどん読んでいけそうな気がします。
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深い言葉 (かえる※)
2008-03-17 20:32:20
確かに、文章が綺麗ですよね。

「FINE DAYS」は
不思議な恋愛小説ですが
登場人物が語る言葉がたまに深いですよね。

たとえば…
「私は生まれ、生き延び、ここにいる。
ここから先の時の中に自分の力では選べないものが
溢れているとしても、私はその時に向かって
昂然と胸を張っていたい。」(眠りのための暖かな場所)とか。


本多孝好の著作は、こういう言葉に考えされられて好きです。
文庫化したものは読みました。
他の著作もおすすめですよ!
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かえる※さんへ (読書日和)
2008-03-17 21:53:47
かえる※さん、「FINE DAYS」を読んだのですね。
その言葉、深いなあと思います。
未来が決まっていたとしても胸を張って受け止めるということですよね。

本田考好さんの本は「FINE DAYS」が初めてだったのですが、とても読み応えがあったので他の作品にも興味が出てきました
本屋に行ったら探してみようと思います。
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うんうん♪ (あかね)
2008-03-18 12:34:39
私もこの作品読みましたが。。。
私は「眠りのための~」が1番好きでした♪
1番ミステリだからかな?
でも、ラスト。。。主人公が未来へ進もうとしての行動だったんだーって思うと、殺されては欲しくない!!!
「イエスタデイズ」はすてきなお話ですよね♪
全体的に、ファンタジーのような感じも受けた1冊。。。
他に本多先生の作品。。。読んでみたいです♪

TBさせていただきます
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あかねさんへ (読書日和)
2008-03-18 20:47:58
「眠りのための暖かな場所」も良いですよね
ラストは驚きでしたね。
ぜったいあの姉の怒りを買って、大変なことになると思うのですが、殺されてほしくないと思いました。
主人公は死を覚悟しての行動だったのでしょうね。

「イエスタデイズ」は一番読み進めやすかったです。
流れるような物語でしたね。

TBありがとうです!
こちらもTBさせて頂きますね
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こんにちは~ (hito)
2008-10-28 11:37:35
サクサク読めますよね!
ちょっとファンタジー要素が強くて、今まで読んだ本多作品とちょっと違うような気もしましたが、好きです。

イエスタデイズは間もなく映画公開ですね。塚本くんだし見るの楽しみです♪
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hitoさんへ (はまかぜ)
2008-10-28 20:07:49
そうですね、なかなかテンポ良く読める作品でした。
神秘的なものもあり、切なさもあり、魅力のあるストーリーだったと思います。

先日書店に行ったら、「FINE DAYS」のカバーが映画版に変わった特別版が販売されていました。
映画は11月1日から公開のようですね。
楽しんできてください^^
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