読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「植物図鑑」有川浩

2014-09-06 17:58:53 | 小説
今回ご紹介するのは「植物図鑑」(著:有川浩)です。

-----内容-----
お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。
咬みません。躾のできたよい子です―。
思わず拾ってしまったイケメンは、家事万能のスーパー家政夫のうえ、重度の植物オタクだった。
樹という名前しか知らされぬまま、週末ごとにご近所で「狩り」する風変わりな同居生活が始まった。
とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)“道草”恋愛小説。

-----感想-----
主人公は河野さやか。
25歳のOLです。
ある日、さやかが仕事を終えて帰ってくると、マンションの前の植え込みに男が倒れていました。
手持ちの現金も尽き、お腹が空いて行き倒れていたとのことでした。
男は「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」などと言ってきます。
そしてさやかはこの男を部屋に上げ、食事とお風呂を提供してあげました。
さやかは自炊をあまりしないため、カップラーメンでしたが。
それにしても冒頭からとんでもない展開だなと思いました

次の日さやかが起きてくると、男は既に起きて朝食を作ってくれていました。
何しろさやかは自炊をしないので食材がほとんどないのですが、男はキッチンにかろうじてあった玉ねぎと卵だけで料理を作っていました。
しかもこれが美味しく、さやかは男の料理の腕に驚きます。
男は行く当てもなく、アルバイトをしながら各地を放浪していたようで、さやかは部屋を後にしようとする男を「行く当てがないならここにいないか」と引き止めます。
さやか的には情が移ってしまったようで、さらに料理も上手く、しばらくその上手い料理を食べたいと思ったようでした。
男は樹木の樹と書いてイツキという名前で、苗字のほうは本人が嫌っているらしく、言いませんでした。
イツキという名前以外には苗字も、どこから来たのかも分からないまま、二人の同居生活が始まっていきます。

樹は植物への造詣が深く、半端ではなく詳しいです。
週末になると二人で出かけ、山菜や野草を取りに行くようになります。
そこで樹の植物への知識が大活躍で、まるで博士のようでした。

「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」
という昭和天皇の名言があるのですが、作中ではこの言葉が何度も出てきました。
道端に生えているどんな草にも名前はあり、しかも面白い名前のものもあり、興味深かったです。
「ヘクソカズラ」、「スカシタゴボウ」などがありました。

出かけて取ってきた山菜や野草は、樹が料理してくれます。
最初はツクシ、フキ、フキノトウから始まって、実にたくさんの山菜や野草の料理が登場しました。
料理の場面は楽しく、次はどんなものを作るのかと興味を持ちました。
「クレソン」や「アップルミント」がその辺に自生しているのも驚きでした。
高知県馬路村のゆずポン酢が出てきた時は先日「県庁おもてなし課」を読んだばかりだったので「あの村のゆずポン酢か」とすぐにイメージが湧きました

さやかと樹の前をセキレイが走っていく場面があったのですが、その場面を見たら私もセキレイが見たくなりました。
両足で人間みたいに速く走る鳥とのことです。

「ワラビ」と「イタドリ」についての話も興味深かったです。
「イタドリ」は特に高知県の人に親しまれている山菜で、全国的な知名度はワラビのほうが上ですが、味はイタドリのほうが圧倒的に上とのことでした。
徳島や愛媛では最初イタドリを食べる文化がなかったらしく、高知から業者が軽トラで遠征してきてイタドリを収穫していくのを不思議そうに眺めていました。
やがて「もしかして食べたら美味いんじゃないか」と思い食べてみたら美味しかったようで、徳島や愛媛でもイタドリを食べるようになりました。
山菜にまつわるこんな話も語られていたので読んでいて面白かったです。

「食材、特に野菜ってこれはこうとか使い方を頭で限定しないほうが面白いものができたりするんだよ」
樹のこの言葉が示すように、「レタスの味噌汁」という変わった味噌汁も出てきました。
作中では「食べてみると軽く火の通ったレタスの食感は味噌汁によく合った」とあり、どんなものなのか一度飲んでみたい気もします。

そしてこの物語では恋愛の書き方がとんでもなく甘ったるかったです
そこは好みによって評価が分かれるところだと思います。
甘すぎる恋愛とさまざまな山菜や野草が印象的な一冊でした。


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ビオラ)
2014-09-07 13:24:51
最近は、お料理ができたり、育児ができたりと、家事的な事ができる男性って、評価高いですよね。
一昔前は考えられない事でしたが、この小説も今時って感じです^^

キャベツの味噌汁は、時々作るけど、レタスの味噌汁は、作ったことないな^0^;
返信する
ビオラさんへ (はまかぜ)
2014-09-08 00:34:09
たしかに料理ができたり育児ができたりすると評価が高いと思います。
妹の赤ちゃんを見ていて、育児は本当にすごく大変だと思いました。
夫が少しサポートしてくれるだけでも、妻的にはかなり助かるのではと思います。

レタスの味噌汁は気になるところですね。
キャベツはスープの具として少し作中で紹介されていて、味噌汁を和風のスープと考えれば、キャベツのスープがあるのだからレタスのスープがあっても不思議はないとのことでした。
どんなものか、一度飲んでみたい気はします
返信する

コメントを投稿