読書日和

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「面白くてよくわかる!臨床心理学」福島哲夫

2017-01-08 22:03:06 | 心理学・実用書


今回ご紹介するのは「面白くてよくわかる!臨床心理学」(著:福島哲夫)です。

-----内容-----
どうしたら、カウンセラーになれるの?
⚪臨床心理士とカウンセラーは、どう違う?
⚪カウンセリングの基本は同情ではなく、共感的理解
⚪クライエントだけでなく、カウンセラーも悩み成長する
悩みがあってもいい。
それを踏まえて進もう!
苦しんでいる人を、敬意を持って受け止めるスキル!

-----感想-----
フロイトの精神分析学、ユングの分析心理学、アドラーの個人心理学、これらは人によって相性の良し悪しはあると思いますが三つとも臨床(患者さんに接して診察や治療を行うこと)に応用できる心理学です。
人の心の不調と向き合う臨床心理士にもフロイト派、ユング派、アドラー派といて、それぞれの心理学をベースにして患者さん(クライエント)とカウンセリングを行っているようです。
私はカウンセラーを目指すわけではないですが、これらの心理学がどう生かされているのか知ってみようと思いこの本を読んでみました。

P18「臨床心理学とはどんな学問か」
臨床心理学は、「心の悩みや心の悩みを原因とする体の不調などに苦しむ人を、心理学的な手法で援助するための学問」とありました。
また「「患者の治療」ではなく、クライエントが心を成熟させ、悩みや苦しみが癒されるよう寄り添い、手助けする学問」ともありました。
理論だけではなく、心の悩みを相談しに来られる方を手助けするための意味合いが強くあるようです。

P20「フロイトとユングの決別」

人間の心の中の「無意識」に対する考え方の違いから二人は決別しました。
イラストの血管が浮き出るほど激怒して火花を散らす二人のうち、左側がフロイト、右側がユングです。
こんなに激しい対立になったのでしょうか
ユングと決別する前にはアドラーとも決別していて、フロイトはだいぶ決別しやすい人だったようです。

P22「心理療法について」
フロイトは「心理療法とは、抑圧された無意識を意識化し、それまで無意識だった衝動や欲求や不安を、意識によってコントロールできるようになっていくプロセスと考えた」とのことです。
過去にあった何らかの嫌な体験が忘れたと思っていても心の中にはしっかりと存在しており、それが現在の自分自身の心に影響を与えているのを知ることで、その嫌な体験の記憶と向き合いコントロールできるようにすることによって、心の不調を治そうというものです。
フロイトのこの考えはアドラー心理学の体育会的で手っ取り早いイメージと対極にあると思います。
フロイト派から見るとアドラー派は「何だその強引さは」となり、アドラー派からフロイト派を見ると「何だそのまどろっこしさは」となるような気がします。

P24「クライエントについて」
臨床心理学では相談に来る人のことを患者ではなくクライエントと呼ぶとのことです。
これは相談者を「治療の対象」としてではなく、カウンセラーが手助けすべき相手と捉えているからとあり、この考えは良いと思いました。
そしてこのクライエントという言葉を初めて使ったのはアメリカの臨床心理学者カール・ロジャースとのことです。

P28「パーソナリティについて」
心理学ではある人の人格をパーソナリティと呼びます。
パーソナリティの成人後の一貫性(変わらなさ)は非常に高いとあり、これはたしかにそうだと思いました。
年齢を重ねれば重ねるほど、その人の性格は変わらなくなります。
そしてもし自分自身の身近にこのタイプの物凄く嫌な人がいる場合、アドラー心理学の「相手を変えようとしても無理なので自分が変わったほうが良い(相手への反応の仕方を変えるという意味合い)」の考え方が有効だと思います。

P38「臨床心理学が様々な場面で必要とされている」
「専門家以外の人たちが、人間の心の働きについてある程度の知識を身につけ、人を援助するスキルを向上させるなら、多くの人の心の健康が、より守られることになるでしょう。」とありました。
さらに「これからの社会では、より多くの人が心について理解を深めることが大切と言って過言ではありません。」とありました。
これらは私もそう思います。
このストレス社会、「とにかく根性だ」の体育会的根性論で突っ走ったのでは必ず自殺のような悲劇が起きるので、「人間の心には限界があり、さらにその限界は人それぞれなので、自分が大丈夫なのだから周りも大丈夫であるべきだと押し付けてはいけない」ということを社会全体が理解するべきだと思います。

P50「臨床心理士とカウンセラーの違い」
カウンセラーは特定の分野に詳しい人のうち、相談に乗る態度を身につけている人で、健康な人を含め、浅く、常識的に扱うとのことです。
そして臨床心理士はカウンセラーのうち、臨床心理学を専門に学んだ人で、特定の心理的な問題を深く、専門的に扱うとのことです。
カウンセラーのほうは心理分野だけではなく「カツラのカウンセラー」「化粧品のカウンセラー」などもあります。

P52「カウンセリングとはどういうことか」
カウンセリングとは、「クライエントの問題を解決するためのコミュニケーションの技法」とのことです。
クライエントとの信頼関係を築きながら、クライエントが現在抱えている様々な症状や問題の悪化を防ぎ、あるいは取り除き、さらにはパーソナリティの成長を手助けしていくとありました。
そしてカウンセラーは共感的理解によってクライエントと良好な対人関係を築けるよう、訓練を受ける必要があるとありました。

P54「カウンセラーに求められるもの」
カウンセラーはクライエントに対し同情したり腹が立ったりと、色々な感情を抱くことがしばしばありますが、そうした自分の感情に振り回されてしまうと、カウンセリングは効果的なものにならないです。
なのでカウンセラーは共感しながらも、自分自身をある程度コントロールする必要があるとのことです。
これはすぐにはできないと思いますし、たしかに訓練が必要だと思います。

P60「カウンセラーに向いているのはこんな人」

必要な資質として三つ挙げられていました。
①「この人なら分かってくれる。だからこの人に話したい」と思わせるような受容力。
②相手を共感とともに理解する共感的理解の力。
③相手に伝える能力。
相手に伝える能力は相手の話を聞いていること、理解していることを伝える意思表示はもちろん、相手が上手く言えないことを、カウンセラーが代わりにまとめるという伝達能力も必要とのことです。

P62「心の問題について」
心の問題は一人で苦しむよりも、カウンセリングを受けて相談する方が解決しやすいとありました。
これはそのとおりだと思います。
カウンセラーは敵ではなく、クライエントが苦しい状態の心と向き合い整理していくのを手助けしてくれる存在なので、一人で悩むよりだいぶ良いのではと思います。

P70「人の心を「理解する」とはどういうことか」
「人の心を100%「わかる」ことはできないという自覚が必要。人の心を「わかる」とは、未知の部分があるという自覚と、常に背中合わせ。」というのが印象的でした。
他人の心を完全に理解することはできないというのを分かった上で、できる範囲で理解していくことが大事なのだと思います。

P80「臨床心理士の育成過程」
カウンセラーに必要な資質として新たに「絶え間なく自分自身を見つめていく能力」というのが出てきました。
一括りにカウンセラーと言っても臨床心理士、認定カウンセラー、産業カウンセラーなどがあります。
ここでは最もハイレベルな資格の臨床心理士の育成過程が説明されていて、書かれている内容が凄まじかったです。
臨床心理士になるための訓練は尋常ではなく大変だと思いました。
これは人の心の問題を深く専門的に扱うためには自分自身の人格を磨くことが何より大事ということなのだと思います。

P84「どんな時にカウンセラーが必要なのか」
「客観的な症状の重さではなく、その人にとって苦痛が重荷となった時こそ、カウンセラーが必要な時なのです。」という言葉が印象的でした。
他の人から見ると大した問題ではなさそうでも、その人から見ると心が押し潰されそうなくらい重大な問題だったりすることがあります。
そしてこれを周りが「そんなの大した問題ではない」と切り捨てたり押さえつけたりすると悲劇につながる可能性があるかと思います。
「その人にとっては重大な問題」だというのを周りが認識することもまた必要なのだと思います。

P156「日本の社会が抱える心理的問題」
先が見えない社会的不安、安らぎの場であるはずの家庭の崩壊など、現代を生きる私たちは、心に問題が生じる要素をあまりにも多く抱えているとありました。
特に苦痛に晒されているのが精神的にもまだ成熟していない子供たちとのことで、問題点が三つ挙げられていました。
①少子化が進み、家庭内に同年代の兄弟姉妹がいない、もしくは少ない。
②親戚づきあいも頻繁ではなくなっているため、血縁関係の交流も少ない。
③昔のように近所のおじさんやおばさんが、時には親のように叱ってくれるような親密な地域社会も崩壊している。

これらのことから、今の子供たちは精神的に「孤立化」していて常に寂しさを感じているとありました。
そしてこれらのことと反比例して、その分、子供に対する親の影響力が増しているとありました。
その結果親の過剰な期待を子供が背負うことになり、心理的に追い詰められ苦しんでいるようです。

これは特に一人っ子だと過剰な期待を全部背負うので大変です。
子供は生き生きとしている姿が一番だと思うので、追い詰めるのではなく毎日が楽しくなるように育ててあげたほうが良いと思います。


心理学の上に臨床が付き「臨床心理学」となったことで、様々なカウンセリングの技法(カール・ロジャースの考案した来談者中心療法など)や各種の神経症や精神病の種類についても詳しく解説されていました。
そして実際に人の心と向き合う臨床の場で、カウンセラーがクライエントの心にどう向き合っているのか、興味深く読めました。
何かとストレスの多い社会となっている今、悲劇を防ぐためにもカウンセラーの方々の存在は重要だと思います。


臨床心理学の土台となる各心理学の本の感想記事

「面白くてよくわかる!フロイト精神分析」竹田青嗣

「ユング名言集」カール・グスタフ・ユング
「面白くてよくわかる! ユング心理学」福島哲夫
「ユング心理学でわかる8つの性格」福島哲夫
「ユング心理学へのいざない」秋山さと子
「ユング心理学入門」河合隼雄
「イメージの心理学」河合隼雄

「マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編」岩井俊憲
「嫌われる勇気」岸見一郎 古賀史健
「幸せになる勇気」岸見一郎 古賀史健
「面白くてよくわかる!アドラー心理学」星一郎


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