今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

塞王の楯

2024年04月11日 | 「本」のひきだし

ブクログより


時は、秀吉が死に戦乱の気配が漂う時代。
戦国時代というと、主人公は武将だったり、その妻だったりするが、本書の主人公は主に城の石垣を積んで、城を守る穴太衆と呼ばれる石工達。
またそんな石工の積んだ石垣に対抗するのが、鉄砲職人の国友衆、「絶対破られない石垣」と「どんな城も落とす砲」と互いに敵対、まさに矛と盾。
そういう集団があったことは知っているし、地元の普段から見聞きしている城や地が舞台であるので、興味は尽きず面白くないはずがない。
石垣は積んだら終わり、鉄砲は納めたら終わり、今まではそういう認識だった。
しかし彼らの仕事は、いざ城攻めにあう、または今まさにあっている。そういう時にも要請があれば駆けつけ、戦況によって石を積みかえたり、飛び交う玉の間を縫って、崩れた石垣を補修したりと、そこらの小者たちより危険な戦いを繰り広げる。
クライマックスではそんな戦いが琵琶湖畔に建つ大津城を舞台に繰り広げられる。
穴太衆、飛田屋 副頭の匡介と、国友衆、最高職人の彦九郎。当然、飛び道具のほうが有利で、作戦を練り、総動員で不眠不休の作業、しかし万全尽きてもはやこれまで、と思われた。
この時の大津城の城主は、京極高次。戦闘意欲に欠け蛍大名と呼ばれた。その妻は浅井長政の次女、初。
そんな城主だが、家来や民には慕われ、最後まで逃げ出すことなく、城に残り采配を振るった。この高次が実に好ましく、この殿のためならと皆が心を一つにしたのも頷けるのだ。

第166回直木賞受賞作


塞王の楯 / 今村翔吾

直木賞受賞後、全国の書店を回ったり(その間、執筆などは車の中で)閉店する本屋さんを立て直したり、いろいろ尽力中の今村さん、目が離せません。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする