- 初・遍行 初遍行触等
- 二・別境 次別境謂欲勝解念定慧 所縁事不同
- 三・善 善謂信慚愧無貪等三根勤安不放逸行捨及不害
- 四・煩悩 煩悩謂貪瞋癡慢疑悪
- 五・随煩悩 随煩悩謂忿恨覆悩嫉慳誑諂與害憍無慚及無愧掉挙與惛沈並懈怠放逸及失念散乱不正知
- 六・不定 不定謂悔眠尋伺二各二
六位の心所と『唯識三十頌』本文を掲載しました。
「頌に曰く、初めの遍行というは触等なり。次の別境というは謂く欲と、勝解(しょうげ)と念と定と慧となり、所縁の事不同なり」(『論』)
「論に曰く、六の位の中に初めの遍行の心所というは、即ち触等の五なり。前に広く説きつるが如し」(『論』)
遍行を解釈するのに二つに分かれる。初めに頌の初句を解釈し、後に遍行の意義を解説する。そして(「この五の遍行の自性と作業とは、前の第三巻の第八識のうちに、すでに広く解し訖る。・・・」)最初の触等の五はすでに一度前に広く説いた通りである。
触等の五 - 触・作意・受・想・思の五つの心所
(解説) 心王と心所の関係について鎌倉の良遍は「ソモソモコノ八識ハ、心ノ中ノ本ナルガ故ニ、是ヲ心王ト名ヅク。此ノ八ノ王ニ多クノ眷属アリ。是ヲ心所ト名ヅク、具ニハ心所有法ト名ヅク、略しシテ心所ト云ウ。是モ同ジク心ナレドモ、サマザマクサグサニ細カナル心ハコノ眷属トス。是ニ六位有リ。一ニハ遍行。是二五アリ。五コトナリトイヘドモ、ミナ心ノ起コルゴトニ普ク必ズアルガ故ニ遍行ト名ヅク。・・・」(『唯識大意』鎌倉旧仏教p129)と説明されていますように、遍行とは、心王が起こる時に必ず遍く起こる心の働き(心所)のことをいいます。それに五つ配当されているのです。いわゆる触・作意・受・想・思の五つの心所です。
広説は『述記』によりますと、第三巻の記述を指すといわれていますが、『論』では巻第三の心所相応(五遍行)を指します。(『選註 成唯識論』p45~47)第八識は「幾ばくの心所と相応するや」と、問いを立てられ、詳しく説かれています。其の最後に「其の遍行の相をば、後に当に広釈せん」といわれており、この後がここの遍行の説明にあたるのです。したがって第三巻と第五巻に分離して遍行は説明されていることになります。第三巻においては阿頼耶識が如何なる心所と相応するのかにおいて述べられており、そこでは「常に触・作意・受・想・思と相応す。阿頼耶識は無始の時よりこのかた乃し未転に至るるまで。一切の位に於いて恒に此の五の心所と相応す。是れ遍行の心所に攝むるを以っての故に」と阿頼耶識と相応する心所は五遍行のみであることを明らかにしています。そして五遍行についての説明(定義・内容・働き・性格等)がされています。ここ第五巻では遍行に五つの心所があることを述べています。