さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

夢が破れたその様が、何故これほどに美しい 大場浩平、死闘に散る

2014-04-04 23:54:52 | 大場浩平



おそらく、彼のキャリアを締め括ることになるであろう、
大場浩平vsランディ・カバジェロの試合を神戸で見てきました。
以下、簡単に試合展開。

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初回、ジャブの差し合いで、カバジェロが大場と互角かそれ以上のハンドスピードを披露。
ボディに散らすパンチも力感がある。大場のジャブ、左フックを軽く食うも、
終了間際に右カウンターを合わせる。大場膝をつくダウン。

2回、大場猛反撃。左はレバーに、右はストマックに、ボディアッパーが次々と決まり、カバジェロ後退。
執拗なボディ攻撃にカバジェロ右クロスからボディ。大場懸命に食らいつく。やや大場。
3回、大場足を止めた展開で闘う。カバジェロが上下に強打を飛ばす。大場はボディ攻め。
カバジェロが有効な強打でリード。

4回、カバジェロがやや突き放しにかかる、接近戦を嫌い、くっつくとクリンチ。
大場は前に出るがややコントロールされ、ボディ当てるも単発。カバジェロ。
5回、接近戦、大場の左ダブル、コンパクトな連打が決まる。
しかしカバジェロは若さと体力を生かし攻める。手数で攻め、押し勝つ。カバジェロ。

6回、大場、ダメージと疲労ありあり。カバジェロの右アッパーでよろめく。
しかし大場くらいつき、連打で反撃。この回は一打の効果でカバジェロ。
7回、大場ロープ際でL字ガードも、カバジェロ攻め込む。
スイッチを織り交ぜ連打、右クロス、ボディ打ち。
大場右カウンター、上下に連打。カバジェロ。

8回、激しい攻防ながら、カバジェロが若さを見せる。大場はダメージと疲労ありあり。
カバジェロが前進、細かい連打で大場後方に倒れる。プッシング風に見えたがパンチによるダウン。
立った大場だが動きが止まり、再開後すぐタオル投入。カバジェロTKO勝ちとなりました。

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ランディ・カバジェロは、Youtubeの動画で見た以上に、バランスがよく、手のスピード、
反応、判断のスピード、若さと体力に秀でた、一級品の選手でした。
世界レベルの水準にある、ホンモノの世界ランカーと言える実力者でした。

おそらく、すぐに世界戦に出して、誰に挑んでも好試合が期待出来るでしょうし、
相手次第では圧倒して王座奪取を成し遂げる可能性も充分、と見えました。
世界戦以外の、普通の試合では、滅多にお目にかかれるレベルの選手ではない、
これはなかなかに有り難いものを見せてもらった、という満足さえ感じました。



そういう相手に、大場浩平は現状の自分の力を全てぶつけて、敗れました。

その現実を受け入れた上で、やはり長きに渡って、彼の天才を目にし、夢を見てきた者としては、
やはり無粋ではあっても、どうしても語っておきたいことがあります。


名古屋時代とは違い、足を止めて相手と正対した上で速いジャブを飛ばし、
相手の右は目で外し、ボディ攻撃で切り込んでいく。
中間距離から接近戦での打ち合いに全て応じ、打ち勝つことを目指して闘う。

最近の数試合をこのように闘い、いくつかの試合でその通りに勝った様に対し、
好意的な評論もいくつか目にしましたが、私はそれに対して強い違和感を感じてきました。

そして、今日の試合でも、私たちが長きに渡って見てきた大場の集大成としてこの一戦を見たとき、
多くの場面、局面で、過去の彼ならああだった、こうだった、と思うところが多くありました。

派手に足を使い、というより飛び跳ね、サイドに回ると速すぎて相手の背後に回ってしまう。
前進してくる相手を、バックステップを踏みながらジャブの連射で打ち据える。
ロープを背負って攻められたと見えた瞬間、クルリと立ち位置を入れ替え、右アッパーで倒す。
鋭い角度で相手の身体を直角に捉える、威力抜群の左右ボディアッパー。

今回の試合において、攻撃面ではこれらの武器が威力を見せた反面、
彼が本来持っていた、他のボクサーとは明らかに別物な天性、天才が見られなかった。
それもまた、事実です。

それが失われたものなのか、捨て去られたものなのかはわかりません。
言えることは、それが現在の大場浩平であるということです。



試合のさなか、場内は大場の好打に沸き立ち、劣勢には悲鳴が飛び続けていました。
両者の気迫、闘志、そして攻防の鋭さ、強さが間断なく披露される、熱く激しい闘い。
場内の入りは、これほどの好カードであってなお、少々寂しいものではありましたが、
リングの上には間違いなく灼熱の炎が燃え上がり、その熱は、観客の心に、確かに届いていました。

試合の後、大場浩平は傷ついた顔に笑みを浮かべ、四方に挨拶をしていました。
その姿は敗れてもなお清々しいものでした。

天才、天性、と軽々しく書く他人には思い知れない労苦の果てに、
得たものがあれば、失ったものもあったが、彼はその現実の中で、堂々と闘い抜いた。
遂に世界王座の夢には手が届かなかったにも関わらず、その闘う姿、
そして闘い終えた姿は、とても美しい記憶として、私の心中に残りました。


今日、大場浩平は素晴らしい試合を見せてくれました。
その事実を、改めて書き記しておきたいと思います。


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5 コメント

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Unknown (R35ファン)
2014-04-05 04:42:28
おはようございます。いつもさうぽんさんがボクサーに対してかける言葉の暖かさや豊かな表現力に敬意を抱きます。
さて、私も大場さんの過去2試合の勝ち方に「これで良いのか」と思いました。危うい攻撃型へのシフトで足使わなくなったなと感じてました。それでもカバジェロを苦しめましたが。
ロリー戦や川端さんとの試合もでしたがビッグパンチもらうんですよね。

カバジェロ強かったです。ありゃカメムシ田3男が逃げる訳だ。
大場さんがスピードで勝てない選手がいるとは!
今の英国の王者や前のマクドネルより確実に強いですね。
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2014-04-05 07:59:06
>R35ファンさん

過分なお言葉、恐縮です。大場の変容は避けようのない理由があったのでしょうが、よくあるボクサータイプの足が動かなくなって...という話以外にも、移籍前に患った疾患の影響もあったのでしょうね。昨夜は体力で負けていたにも関わらず、あのような闘い方になってしまったのが残念でした。力、技以外にも、相手の逆を取るのが好きで得意だったはずの大場が、打つパンチの選択や駆け引きでも負けていて、後手を踏んでいたのも同じくです。大場の打たれるパターンは打った後に止まるところを、という形で、私もちょくちょく批判しましたが、昨夜は打つ前も後も止まってましたね。あれが相手の力量ゆえ、というのは受け入れなければならぬ現実なんでしょうが。

よく知らないんですが、WBOからIBFへの切り替えは、カバジェロのマネージャーがいわゆる「人事」をやった、ということなんでしょうかね。あの一家とも関わりがあるとかないとか効きました。まあどうだっていい話ですけどね(笑)昨日の試合を見れば、あの一家のやってることなど、とことん無価値だということがよくわかります。そんな試合でしたね。

Unknown (さんちょう)
2014-04-05 14:52:10
大場選手、お疲れ様でした。 結果は残念でしたが、ゆっくり休んでほしいです。 さうぽんさんも観戦お疲れ様でした。

大場選手を見てるとホント世界の壁は高いと思わされます。でもこれこそがボクシングの魅力だという皮肉ですね。 やはりバンタム級は1部を除いていい選手が集いますね。
Unknown (neo)
2014-04-05 21:46:07
大場選手、コンディション云々以前に少し体調が悪そうでしたね。さうぽんさんの御指摘通り、以前の病気の影響かも知れません。
カバジェロ、強かったです。個人的には、大場選手は気の抜けた所を打たれる印象があるのですが、初回から出すパンチ出すパンチみんな合わされるような展開はあまり観たことがない気がします。仰る通りちゃんとしたワールドクラスの選手ですね。
大場選手のような、性格も含めて独特なスタイルの選手の指導は難しいんでしょうけど、逸材でした。可能なら世界に届かせてあげたかったです…
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2014-04-06 11:02:01
>さんちょうさん

大場はツニャカオ、ロリー、そしてカバジェロと、世界に挑む目前で、これら海外の強豪に行く手を阻まれました。仮に山中慎介が、世界戦の前に同じマッチメイクを課されていたらどうだったか、と考えることがあります。「1部」の選手に至っては、考える対象ですらないですが。

私は、大場とツニャカオの再戦には若干「逆地元判定」の印象を持っていまして、大場には不運だったと思います。あの試合は今回のカバジェロ戦と違い、足を止め、或いは大きく動き、ボディを狙い、という具合に、ラウンド毎に闘い方を変え、狙いを変えて、シャープなツニャカオと互角以上に渡り合っていました。あの頃の大場が世界に挑む姿を、見てみたかった気がしますね。

>neoさん

内臓疾患の影響は身体の張りの違いにも出ていたように思います。もちろん年齢もあるのでしょうが。
今回は最初から相手の攻防のスピードが圧倒的でしたね。硬質な攻撃と柔軟な防御を併せ持つ一級品でした。真に世界のトップ10、「世界ランカー」の言葉に相応しかったです。
大場の特性を巧く整理して、その良さを出すスタイルは、とうとう未完のままに終わったのかな、という気がします。上記の通り、日本王座5度防衛後、ツニャカオとの再戦に至る時期に、世界戦が見てみたかったですね。

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