ということで、関東在住の友人の厚意により、先週土曜日、沖縄での比嘉大吾vs西田凌佑戦を見ることが出来ました。
このカードが決まったとき、他にやるべき相手がおるやろう、というのが第一印象でした。
前戦で大森将平をクリアに破っているとはいえ、4戦目の西田凌佑を選ぶとは、という。
ただ、WBOアジアパシフィック王座を獲得したとはいえ、相性の良いストロング小林佑樹を倒しただけで、比嘉大吾復調、とは到底思えなかったですし、その辺を陣営も冷静に考えているのかな、とは思いました。
小林と西田が所属する六島ジムに、タイトルにまつわるオプションがあったのかもしれない、というところまでは、頭が回っていませんでした。
とはいえ、この記事のコメント欄にもご指摘あったとおり、番狂わせの可能性がゼロではない、若くて上昇期、上の階級、サウスポーとくれば「間違い」が起こることもあるかも、というカードでもありました。
24日、府立からの帰り道で結果を知らされ、もちろん驚いたのですが、こういうこともあるか、とも思っていました。
しかし、実際試合の映像を見ると、思った以上の比嘉完敗、西田快勝でした。
比嘉が不調だとか、精神的にどうとかいう印象はさほどなく、大柄な西田が打つべきパンチをしっかり打ち、果敢に攻めてくる比嘉に打ち勝った、という試合で、要するに「単に、西田の方が強かった」と見えた試合でした。
初回、3回に左アッパーを決める前後にも、右リードから果敢に入ってくる比嘉に対し、左から右の返しなどを再三、しっかり決める。
4回は左ボディで止めて、すかさず上に左から連打。6回は強引にボディ連打の比嘉に対し、それ以上のボディ攻撃から連打をヒット。
7回はボディから攻めた西田の追撃で、比嘉がロープへ後退。10回、比嘉がラフな打ち合いを仕掛けるが、西田は少しだけ付き合うも、また左ヒット。
最終回、意地を見せたいはずの比嘉が疲れていて、西田の連打が試合を締めくくる。
競った試合とか、比嘉の方が不調でどうとかいう感じではなかったことが驚きでした。
比嘉も右で入ったり、ボディ攻撃を果敢に仕掛けたり、相当頑張っていましたが、これまでの試合でなら、決まれば局面を変えられるヒットがあっても、西田がフォームを崩さず、カウンターを狙い、ボディから連打を返してくるので、徐々に八方ふさがりになっていった、という風に見えました。
比嘉は劣勢にあって、アタマも構わず強引に、ラフに出たりしたところがありましたが、悪いと見えたのはそのあたりだけでした。
こういう試合になったのは、もちろん前日計量は118ポンドで揃っているとはいえ、リングの上で実際に闘う際には、かなり差があったと見える体格差が一番の原因でしょう。
若く、キャリアも浅いが元々上の階級の西田が、かなりリカバリーし、なおかつ体調も良かったことが、比嘉を終始苦しめました。
しかし「それだけ」では、比嘉を相手にクリアに勝つことは出来なかったでしょう。
どの局面においても、攻防共に適切な選択をし、終始冷静に動いて外し、踏み留まるべきときは留まって返し、上下、下上の組み合わせに留意したコンビを、的確に決め続けた西田凌佑の実力は、大森将平戦の印象もさらに上回るものに見えました。
率直に言って、これほどとは、という思いです。これでプロ4戦目とは、脱帽するしかありません。
今後、バンタム級にとどまれるものかどうかは不明ですが、それこそ大森将平を引き合いに出すなら、益田健太郎を豪快に倒した時の大森に比べても、派手さや爆発力は劣るにしても、長い試合でも自分の力をコンスタントに発揮出来る安定感は、西田の方があるのではないか、と思います。
もちろん、元世界王者とはいえ、体格で劣る復帰途上の比嘉大吾に勝ったのみで、時にヒットを喫してしまっていた試合内容を、即世界云々の、水漏れ無しの完璧なものとして、見上げることは出来ませんが、国内のバンタムないしはSバンタムに、楽しみな若手が登場した、とは充分に言えるでしょう。今後の試合ぶりが楽しみですね。