なんかもう、最近は世界戦が全国に流れないことを嘆きこそすれ、驚きはしないものですが、
さすがに大晦日、TBSが放送しながら、関西に流れないとは...と思った一戦、
ヘッキー・ブドラーvs京口紘人戦を、関東在住の友人の厚意により、見ることが出来ました。
初回こそ、ブドラーの旋回、アッパーやスリーパンチの数が目につきましたが、
そこでも京口の左ボディが早速ヒットしてもいて、この後、再三再四繰り出されたこのパンチが、
ブドラーを削り、止め、苦しめることになりました。
2回、京口の左ボディでブドラーの方から、下がって離れる場面あり。トランクス下げる仕草も。
3回、ブドラー右カウンター取って、連打。京口は左のみならず、右ボディストレートも返す。
4回も京口。ブドラー、リターンの連打の数が、5、6発から3発程度に減る。
5回はブドラー奮起、手数出す。京口スタートから飛ばしてきて、少し疲れか。でもボディはしっかり打っている。
6回、ブドラー左右に動いて手数を出すが、京口が肉薄、左アッパー連打、左ボディ、右クロス。
7回さらに京口出る。打ち合いでまさり、右でブドラーのけぞる。もう一押しで10-8つけられそうな優勢。
8回京口攻め続ける。ブドラー最後20秒くらいで、左ボディを外からではなく内側に受け、後退。
9回、京口左アッパーダブル、ブドラー小さく腰落とし後退。
10回、京口落ち着いてジャブから崩す。ブドラーボディ打たれ、苦しいか横を向く場面も。
さあ倒せるか、と思った11回は始まらず、王者コーナーが棄権、TKOとなりました。
試合前半は、ブドラーのサイドステップ、角度をつけた連打と、
やや前傾した姿勢から、左ボディを軸にした京口の攻撃ボクシングが、
まだ均衡した展開を保っていた、と言えますが、6回くらいからは、はっきりと京口が
試合のペースを掌握していたと思います。
よく動き、手数によるポイント相殺、ないしは奪取の術に長けた、老練な南アフリカ人は、
田口良一戦同様、彼自身の持ち味をしっかり出して闘っていました。
しかし転級2戦目、減量苦から解放され、コンディションに自信を持つ、若く無敗の「元王者」は、
スピードやパワーのみならず、攻防動作の切れ、継続性で圧倒的にまさりました。
ブドラーのようなタイプを攻略するなら、ボディを打って動きを止めて、とは
誰でも考えることでしょうが、あれほどよく動き、執拗に手が出て、心身共にタフな相手を、
その言葉通りに「止め」て、仕留める、棄権に追い込むだけの、攻防の質量というのは、
それこそ膨大なものが求められます。
しかし大晦日、京口紘人は、二階級制覇がかかった大一番で、その持ち合わせを存分に見せました。
往年の辰吉丈一郎風に、やや前傾、左足加重のスタイルで、しかしガードの設定だけは高め。
左から切り込み、上体を傾けて、上下に打ち分け、アグレッシブに攻め続けました。
若さ故の体力、一階級上げたことによる良好なコンディションに加え、
デビュー1年3ヶ月でミニマム級IBFタイトルを獲り、アルグメド、ブイトラゴを下し、
転級初戦も充実した内容でKO勝ち、そしてこのブドラーを攻略した過程で見せた、
着実な、着実過ぎる成長ぶりは、まさしく驚異です。目を見張るしかありません。
これは選手本人の素質と努力、指導者の力に加え、陣営が転級のタイミングを誤らず、
適切な判断をしたことも非常に大きかった、と見えました。
それらが全て相まって、新チャンピオン京口紘人という、大いなる「実り」が得られたのだ、と。
試合翌日の報道には「まるで別人」という見出しをつけたものが散見されました。
スタイル自体は何も変わらず、京口の良さが発揮されたに過ぎない、と思うものの、
確かにミニマム最後のパラス戦と比べ、「好不調」という物差しで見れば、その通り、でした。
攻撃の積み重ねで相手を攻め落とすスタイルが、今後、タイプの違う相手、
距離の外し方に長けた選手、または、一打の決め手を持つ選手と当たった場合はどうか、と
あれこれ言えば言えるでしょうが、今回の試合に関しては、満額回答、と言える内容でした。
そして今後も、危惧はあれど、期待感の方が大きく膨らむ、というのが正直なところです。
年末に集中した世界戦の中、今回の白眉、メインイベントと見なすべきは、
間違いなくこの一戦でした。
出来れば大田区でやってくれていれば...と繰り言も出ようかというものです(笑)
あんなお寒い雰囲気の会場でやるには勿体ない、と。
まあそれは、その次の試合も同様でしたが。
あれやこれやあるのでしょうが、このような試合には、もっと別なロケーションが用意されるべきです。
次回以降は、こういう妙なことは無しでお願いしたいものですね。