さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

弱点を攻められても怯まず ウシク、フューリーに逆転判定勝ち

2024-05-19 13:39:42 | 海外ボクシング



ということでほとんど夜通しに近い格好で、DAZNのPPVを見ておりました。
メインは結局朝の7時半過ぎてたんで、割り切って普通に寝て、メインだけ見ても良かったんですが、つい気になってしまい...といっても、途中で何度かがっつり寝ましたんで(笑)徹夜で見ました、と大見得は切れないわけですが。

そういうことで取り急ぎ、世界ヘビー級タイトルマッチ、オレクサンドル・ウシクvsタイソン・フューリーの感想です。


立ち上がり、フューリーが速いジャブ、コンパクトなワンツーでウシクを突き放そうとする展開。
しかしウシクはジャブ、ストレートをボディへ伸ばし、左ロングフックを上へ持っていく。これが初回、2回と当たる。
真っ直ぐは無理に上へ持っていかず、フック、スイングは上、という棲み分けか。これを、微妙にタイミングを遅らせて当てている。巧い。

フューリーも徐々に右アッパーで、ウシクの弱点、ボディを伺うが、最初2つはウシクと見ました。
3回少し微妙ながら、突き放しの右ストレートがヒットしたぶん、フューリーに。

4回から、フューリーがジャブから右ボディアッパーを決め始める。出るウシクに右アッパーの迎撃。この組み合わせなら、定番のパターン。
さらにコンパクトなワンツー。両手上げたりコーナーで待ち構えたり、というパフォーマンスも。ウシクボディ連打で攻めるも、この回フューリー。
5回、フューリーの右アッパーから左ボディ。前に出ていたウシクが一旦旋回して下がる。効いたか、追撃を嫌ったのか。
フューリー、遠目からでも手を伸ばせば、ウシクのボディを打てる。体格差、リーチ差を生かしている。
6回もフューリーの流れ。ジャブ、ワンツー基調に、右アッパーを上、そして下にも。ウシクの出鼻をアッパー上下で捉える。
ウシク大きく旋回して下がる。


フューリー、ストレートパンチとアッパーの打ち分け、棲み分けに間違いが無い。そしてボディも打てている。
3回からポイント4連取と見え、完全に展開を掌握して折り返し。これはウシク苦しい、と見えました。

7回、フューリーが身体を寄せ、抱え込みながら打つ。大柄な方が小柄な相手を疲弊させる、典型的な「手口」。
これやられ出すと、ますますウシクが苦しくなる。さらにフューリーの右アッパー。ウシクの左目に当たったように。
しかしウシク、コンパクトな左を繰り出して踏ん張る。左ボディ、上へと返し、攻め立てる。
少し流れが変わり始めたが、ポイントはフューリーか。

8回スタート、フューリーがボディを叩きに行くが、ウシクがワンツーから連打。左ボディも決める。
失点が続いたウシク、逆襲。プレスかけて出る。ボディアッパー来ても止まらない。ワンツー、逆に左ボディを打ち込む。
ウシクのワンツー入る。フューリー鼻血か?さらにウシク連打、右フックの返しが当たる。ウシクの回。


8回終わり、一度はフューリーの「手に落ちた」かと思えた試合だが、見たところ、まだ5対3。逆転は充分可能。
とはいえ、自分より遙かに大きい相手と8ラウンズ闘った疲弊は、並大抵のものではあるまい...と思いつつ迎えた9回が、ビッグラウンドになりました。


ウシクが上体を揺すって出る。右リードで探り、左ショートをダブルで決め、さらに前に。
フューリー右ショートクロス決めるが、ウシク出て左。フューリー、鼻を再三気にする。
フューリーのボディブローはもうウシクを止められない。ウシクのガードが間に合うようになっている。
ショートの間合いで、ウシクの右フック。さらにもう一発、そして左クロスがさらに返る。

これが決まってフューリー、ロープにもたれる。ダメージありあり。ウシク追撃、左右連打で打ちまくる。
フューリー目線が上を向き、左右に振れ、足元もよろよろ。ウシクの左で巨体が崩れ落ち、青コーナーにもたれたところでダウン宣告。
立ったフューリーに続行の確認が終わったところでゴング。10-8ウシク。


一番きついはずの8、9回に逆襲し、展開を変えるだけでも凄いのに、倒してしまうんだから、ウシクの粘りというか二枚腰とでもいうか...アンソニー・ジョシュア戦でも似た展開はありましたが、より試合巧者のカラーが強いフューリー相手に、一度展開を譲っていながらこれは...ちょっと考えられない。
驚きと共に、感動的でもありました。凄いもの見てるな、という。


10回、ウシクはワンツーで突き放し、攻める。フューリーも右アッパー決めるが単発に留まる。ウシク。
11回、ウシクの方が身体ごとぶつかるように打っていく。身体の力が残っている者の仕業。フューリー圧される。
フューリーの右ボディ、一発入るが、ウシクが左右を打ってくると、鼻を気にする。目に見えて嫌がり、下がる。
最後スイッチしたフューリーに、ウシクの左が決まる。ウシク。
最終回、フューリー奮起して反撃、パフォーマンスも繰り返してポイントを取ろうとするが、ウシクが正確なヒットで対抗し、試合終了。

過去の試合でも派手に倒れ、でも回復が奇妙なほど早く、逆襲して倒し返すという試合もしているタイソン・フューリーだけに、ラスト3回、まだまだわからんのではと思っていましたが、終わってみれば、ウシクがしっかり突き放しました。


判定は2-1で割れ、115-112ウシク、113-114フューリー、114-113ウシク。
さうぽん採点は115-112、ウシクでした。



大柄な体格を生かしつつ、叡智(狡猾、とも言えますが)を感じさせる闘いぶりが光る、巨人にして曲者、タイソン・フューリー。
昨今のヘビー級としては小柄ながら、「スーパー・ヘビー級」との闘いに勝ち続ける技巧の闘士、オレクサンドル・ウシク。

ようやく実現した、世界ヘビー級、真のチャンピオンが決まる一戦は、それぞれに独特の個性を持つチャンピオン同士の闘いとなり、その持ち味は、良さは、もっと言えば「素晴らしさ」は、試合の中で存分に出ていました。
確かに、母国が戦禍に苦しむ中、巨大かつ難敵、というフューリーと闘うウシクの姿に、いかにも日本人的な判官贔屓の心情がなかったと言えば嘘になりますが、けっしてウシクの方ばかりでなく、挑発的なパフォーマンスの影に隠した様々な戦略を持ち、敵を知り己を知る、というフューリーの闘いぶりもまた、この試合をより高みへと導いたものだった、と思います。

見終えて、メインだけでもPPVの価値あった、と満足した次第です。
真の世界一を争奪する試合として、充分と言える内容でした。


唯一、試合後にすぐ再戦だなんだ、という言葉が出ていたことが、ちょっと如何なものかなあと思ったくらいですかね。
そういう契約らしい、とは試合前からわかっていましたが、さすがにちょっと無粋やなあ、と...。
また、時を置けば色々とすっぽ抜けたり、しょうもない、と思うような言動が目に入ってくるであろうタイソン・フューリーが、リングの上では(ちょっとだけお喋りもしてましたが)、清々しくオレクサンドル・ウシクを称えていた姿が、実に良いものだっただけに、勿体ないことだ、と思った次第です。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする