さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

微笑の殺し屋、難敵を序盤で返り討ち 拳四朗、右ボディでKO勝ち

2018-05-29 07:36:19 | 関東ボクシング



遅い感想文になりますが、金曜日のメイン以外について。

セミファイナルは拳四朗が、前王者ガニガン・ロペスを返り討ちにしました。

関西では放送枠が一時間に縮められたので、判定になっていたら、
フルラウンド放送はおそらくなかったであろう一戦でもあり、
出来れば早い回で決着すればなぁ、と思いつつ、
この両者の対戦、どちらを見ても、その可能性は低い、というより「無い」と思っていました。


初回、両者の位置関係を見ると、遠目にはサウスポーに良い回り、
つまりロペスの側から、無理なく左ストレートが当たりそうでした。
拳四朗は正面から踏み込む。普通なら右リード、ダイレクトを当てるには遠いはず。

しかし、こまめに動き、足で外しつつ、広いスタンスを維持する、
かつての徳山昌守にも通じるスタイルで、ロペスの右ジャブ、左をほぼ外す。

初回は「大振りさせて外した場面の印象だけ、拳四朗か」と思う程度のリードに見えましたが、
2回、右ボディヒット、追撃でまた右ボディ。ロペスが倒れ、予想以上に苦しそう。
「まさか」と思いましたが、そのまま立てず、試合が終わりました。

ロペスは右に回って、拳四朗の右から遠ざかろうとしていましたが、
回って止まった先で、予想以上に伸びてきた右を、ストマックかレバーか、
微妙なところに、読めないタイミングで食い、思う以上にダメージ甚大でした。

また、拳四朗の右は、打ち出しは探るような軌道で、相手の腕の下を通し、
途中からぐっと力を込めて打つ「段差」付きのパンチでした。
アゴとボディの違いはあれど、かつてジョニー・ゴンサレスが長谷川穂積を倒した
右のワンパンチを思い出しましたが、聞けばロスでルディ・エルナンデスに指導されたものだとか。
ロスやメキシコのボクシング・セオリー、その品目のひとつ、なのでしょうね。


試合後は例によってダブルピースを決め「これさえやらんかったら...(--;)」と
頭の古い私なぞは思いましたが、試合についてはもう脱帽するしかありません。
あのしぶとい、攻略し難いガニガン・ロペスを、序盤で沈めるなど、期待も想像もしませんでした。
ロペスのキャリアの中でも、無冠ながら一時はその強打で猛威を振るったデンバー・クエジョ以外に、
ロペスをこんな形で破った選手は、今まではひとりもいなかったのですから。

拳四朗については、そのキャラクターとイメージとは裏腹な、
技巧的でありながら鋭利で、強靱なボクサーとしての内実がある、と見て、
そう書いてもきたつもりですが、今回の試合内容と結果は、さらに私の理解の一段上でした。
私の理解は、まだ拳四朗というボクサーに遠く追いついていなかった。
その驚愕は、とても心地良いものでもありました。

そして、井上尚弥の衝撃に霞んでしまった面もあるにせよ、
WBCライトフライ級の王者経験者を二人退け、堂々たる「王者の証明」を果たした、
拳四朗への評価はさらにひとつ高まることでしょう。
そして、こういう調子で勝ち続けていけば、あのキャラクターとのギャップ甚だしい、
ボクサーとしての強さ、偉大さも、より広く深く、認知される時が来るのかも、と。


ところで、長谷川穂積引退後も、関西でボクシングを積極的に取り上げる「せやねん」で、
試合の前と後(翌日)に、拳四朗が取り上げられていました。
動画二本、紹介します。数日で消しますので、お早めにご覧ください。
拳四朗のキャラクター、ボクサーとしての強さを支えるものが何か、垣間見える内容になっています。
 

試合の前週放送、トレーニング紹介など。




試合翌日放送、計量、試合、祝勝会など。





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金曜日の大田区総合体育館は、どの試合も早期のKO決着で、
ボクシングの魅力を大いに堪能できる興行だった、と言えるものでした。

第一試合は、確かビートの最新号で紹介されていた栃木、宇都宮金田ジムの後藤竜也が初回KO勝ち。

二試合目は、大橋ジムからデビューの元高校王者、桑原拓が、インドネシア人を初回TKO。
しかし、早々からお互いに当たるとこに突っ込んでいき、バタバタ振り回す感じで、
ちょっと浮き足だったのかな、という印象も。パンチは切れ、威力もありそうで、次以降に期待です。

三試合目は溜田剛士が、これまたインドネシア人を3回KO。元ヨネクラジムの溜田、パワーは非凡なものありです。

四試合目は、弟さん登場。これ、関東では放送枠に入ったみたいですね。
井上拓真、厳しいカード続きのせいでKO率こそ低いですが、やっぱり強い。
インドネシア王者ワルド・サブを、初回ボディで沈めました。一蹴、相手にもならん、という風情。
120ポンド契約でしたが、上半身は厚みを増していて、違和感はなし、でした。


と、試合自体は見ていて、退屈するようなものはなかったんですが、
やはり合間合間の休憩が、えらいことになっていました。
これが後楽園ホールで、TVの生中継がない興行だったら、さくさく進行して
多少休憩は入れても、9時までには終わっていたことでしょう。
いやー、今日は面白かったなぁ、早く終わったし、楽で良かった、と言うところなんですが...。

まあ、過去の例と違うのは、英国スカイスポーツや、米国ESPN(オンデマンドだそうですが)でも
生中継されますのやで、という話だったので、まあそれは我慢せなしゃあないか、とも思いますが。
文字通り、尚ちゃん世界生中継デビュー、だったわけですから。

とはいえ、まあ友人たちとあれこれ話したりして、時間は潰せましたけど、
やっぱり、会場まで行って、あんなに長い時間待たされまくる、というのは、
根本的に何か間違ってるぞ、と思います。

興行収入の根幹を成すのが、入場料より放映権料である、それは事実ですが、
それを前提としてしまっている日本のボクシングは、やはりどこか歪です。


今回、英国マッチルームプロモーションが興行に関与し、英国への放送もそれで実現し、
WBSS大会への井上出場、或いは日本での一部開催、放送の話も進むようですが、
エディ・ハーン氏のような、英国ボクシングの隆盛を支える人材から見て、
世界的スーパースターたりうる逸材、井上尚弥の試合が、キャパ4千人程度の会場で
収まってしまっている状況は、どのように映ったものか。
一度、率直に語ってもらえんものかな、と思ったりもしますね。



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懸念も不安も吹き飛ばし「進攻」が始まった 井上尚弥、マクドネルを一蹴!

2018-05-26 09:21:19 | 井上尚弥



昨夜は大田区総合体育館で観戦してきました。
あまり長くならないように、感想を。



立ち上がり、当日65キロ(!)まで増量したという、ジェイミー・マクドネルの背中は、
異様に大きく、長いリーチの構えが、見て立った井上尚弥を圧しているように見えました。

しかしそれもつかの間、さっそく左フックで切り込んで下がらせ、鋭く追撃。
左フックが下にも上にも決まり、あっという間に最初のダウン。
再開後の追撃の際、危ない角度でマクドネルの右が来るが、
ガードの上からでもお構いなしに打ちまくり、あっという間のTKO。

あまりの勢いに、レフェリーが恐怖を感じて止めたかのようにさえ見えましたが、
後で見ると、セコンドも棄権の意志をあらわしていたようでした。



それにしても、試合の一週間前くらいから、あれやこれやと連日、まあ賑やかなことでした。

来日直後から、痩身のイメージだったジェイミー・マクドネルの、予想以上の体格と、
どうやらかなり大規模な「水抜き減量」を計画しているらしい様子が報じられると、
最近のあれこれを経ているこちらとしては、やはり疑心暗鬼に陥りました。

またしても計量失格の事態が繰り返されるのではないか。
それがどのような意図の元でなされるのか否か。
スコット・クイッグ、ポール・バトラーに続き、英国人ボクサー三連発があるのか。

まあ、悪い想像はあれこれと膨らんでいきましたが、
結局、マクドネルは計量に遅刻しながらも、118ポンドのリミットをパスしました。

本来、それで当然、試合の前提条件でしかないことでしたが、
なんだかこの時点で、マクドネルを称えたいような気持になっていました。


ただ、試合当日、マクドネルの体重が、65キロを超えているらしい、と知ったときは、
さすがに驚き、また別の不安が心中に湧き上がってきました。
井上もライト級くらいまで戻るかもしれないが、それにしても異様な数字でした。

バンタム級ボクサーとしては、史上最重量(?)と思しき相手が、
リーチを生かしてストレートパンチで突き放し、構えを締めて「堅陣」を敷いたら、
いかに井上といえども、難しい展開があり得るのではないか。
井上圧勝への期待は当然ありましたが、転級初戦としては厄介なことになったものだ、とも。


しかし、何かと普通ではない懸念、不安のあれこれを、井上はあっという間に吹き飛ばしました。
まさしく怪物、本物のスター、真のチャンピオンたる者の仕業、というしかありません。
良し悪しあれこれ、禍々しい話も含め、ボクシングとは、どんなに強いボクサーにとっても、
様々に険しい闘いではありましょうが、それらを全て、己の力でもって乗り越え、
驚愕を伴った爽快感を与えてくれる、稀有なる存在。

割れんばかりの歓声を聞きながら、改めて、井上尚弥の偉大を実感することが出来ました。


と、まあ固い表現をすればこんな感じですが、改めて惚れ直しましたね、ええ。
キャー、尚ちゃんステキー、カッコいいー!という感じでした(^^)
我ながら、ちょっと気持ち悪いですが...すみません。


さて、試合後は、遂にWBSS参戦表明がありましたね。
日本のリングで、この手の「次の展開」を語る成功例は、
畑山隆則による坂本博之戦決定が上限かと思っていましたが、
何しろ世界規模の大イベントへの参戦を宣言したのですから、
これもまた、歴代の先達を超えてみせたといえるでしょう。
そして、遂に「黄金のバンタム」への、本格的進攻が始まるわけです。




今後、この大会がどのような形で開催されるのかは、まだ不明ですが、
大会の一部は、国内で開催されることでしょうから、当然、観戦しないといけません。
その際は、ぜひとももう少し大きな「ハコ」でやってもらえたらいいなぁ、と。

いや、大田区総合体育館は、良い試合によく当たる、験のいい会場ですし、
全体的に見やすくて、素晴らしい会場ではありますが、やはりもう一回り...。
で、出来たら国技館か武道館がいいですね。見やすいし、アクセスも良いし。
広いこた広いけど、見にくい会場はやっぱり厳しいですね。



昨夜の興行は、6試合あったのですが、1回、1回、3回、1回、2回、1回と
アーリーKOの連発で、当然休憩の嵐が吹き荒れておりました。
しかし、最後は、終わりよければ全てよし、という感じで収まりました。
試合後、帰路につく人々が一様に笑顔で、高揚していたように見えました。

スーパースターというものは、勝利によって人の心を高揚させ、
さらなる期待によって、さらに人の心を満たすものなのです。
やっぱり、こうじゃなくちゃいけませんよね(^^)





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動かれ、打たれ劣勢、追撃届かず 田口良一、奮戦も陥落

2018-05-21 04:18:13 | 関東ボクシング



二大王座統一後の初防衛戦となった、田口良一vsヘッキー・ブドラー戦、
残念ながら関東ローカル放送でしたが、友人の厚意により、映像を見ることが出来ました。
簡単に感想。

※TVerで動画見られます。リンクはこちら


ヘッキー・ブドラーは、以前WOWOWでも試合が放送されていて、そのときの印象は、
はしっこく動いて、手数出して攻める選手、一打の怖さはないが、防御も締まっていて、
自分の特徴をよく知っている、技巧派のビジーファイター、というものでした。

ただ、WOWOWで試合を見るときは、実際に日本の選手と絡んで、どう攻略するかとかではなく、
単に良い試合、高度な試合、凄い選手を見たい、という目で見ているもので、
ブドラーに対して、あまりつぶさにあれこれ考えて見る、ということはありませんでした。


いざ、田口良一と対した今回、序盤の展開を見て、こんなにサイドに丁寧に回るのか、と驚かされました。
ジャブも出すが、右から入って左ジャブを突く、世に言う逆ワンツーを打ったあと、
ダッキングの動作を伴ったサイドステップで田口のリターンを外し、また打つ、という繰り返し。

無駄に下がってしまうのでなく、サイドへ出るから、すぐ次が打てる。
田口はボディブローを好打するも、近い距離で攻勢を取られ、メリンド戦で有効だった、
突き放すジャブを封じられ、また半ば忘れてしまった風でもありました。

2回はボディの好打も見えたが、3回にはもう鼻血が視認でき、明らかに劣勢。
4回は逆にボディを連打され後退、ロープを背負う場面も。

思わず目を疑うような場面でしたが、このままずるずるとは行かないのが、さすが田口でしょうか。
5回は逆にボディを攻める。ブドラー連打もミス、後退も。

ところがブドラー、サイドステップだけじゃなく、試合運び自体にも巧さを見せる。
6、7回は、意図してラウンド前半、手を止めて休んだ感じ。
田口が乗じて出るが、ラウンド後半、ブドラーが盛り返す。

7回は田口が左ジャブを増やし攻勢、ラウンドも取ったか。
しかし終盤はシーソーゲームの様相。8回、ブドラーが抑える。
9回は疲れが見えるブドラーが頭を前に出す。
田口攻めるが精度に欠ける。身体の軸を決めて、身体を回して打てない欠点が露呈、ここは泣き所。

10回、打っては右回りのブドラー。田口は右アッパー見せる。
11回はややブドラーか。田口ジャブを忘れている感。焦り見える。

最終回、明らかな左フックによるダウンが、なぜかスリップ裁定。
田口攻めるが、好機の詰めに精度を欠く。残念。

判定はラウンド数7対5で三者が揃い、最終回の裁定が覆って10-8になったが届かず。
ブドラーが新王者となりました。
採点はかなり田口に好意的、と思いましたが、リングサイドで見ていると、
田口の攻勢や、ボディブローの効果が、我々の見た印象以上によく見えたのかもしれません。
そうとでも思わないと...という言い方にもなりますが、その辺はまぁ...ということで。


これまで、メリンドやバレラといった上位陣や、世界各国のコンテンダー相手に、
苦しい展開でも変わることなく、鬼気迫る猛攻で渡り合ってきた田口ですが、
今回は、残念ながらクリアに負けた、と見えました。

距離で外すのでなく、サイドへの動きで外され、即打たれ、また動かれ、という繰り返しで
試合の序盤を完全に抑えにかかったブドラーの「田口攻略法」は、実に見事でした。
けっして決め手の強打があるではないが、中盤以降、田口の追い上げを巧みにかわし、
休むべきところは休み、攻めるべきところは頑張って攻め、頭を出して嫌がらせもし、
最終回の大ピンチも、しぶとく生き残りました。
やるべきことを、やるべきときに、適切にやりきったブドラーは「然るべき勝者」だった、と思います。


その上で、ちょっと気になったのは、田口も自身で口にした「調子」の問題でしょうか。
確かにブドラーの巧さが光りましたが、序盤早々から打たれ、4回には後退もした。
ここ数試合の印象よりも「弱る」のが早い、というか...「不調」な印象がありました。

風貌のせいで、若く見えますがもう31歳、何年もライトフライの体重を維持し、
ご存じの通りの激戦続きですから、歴戦の疲弊が見えても不思議ではないところです。
もっとも、それが「露呈」されても仕方ないところ、まだこれだけの奮闘を見せているのは、
これまたさすが田口良一、と言うべきなのかもしれませんが。

報道によると田口陣営は判定に不服で、提訴するとか、再戦がどうとかいう話もあるようです。
見解は様々にあれど、陣営がそういう風に動くのは、ある意味では当然なのかもしれません。

しかし、田口の現状を考えれば、さらに一歩先に進む決断として、フライ級転向があってもいいのかな、と
思ったりもします。
セミは見ていませんが、京口紘人も減量は厳しくなっているとのことですから、
こちらも早々に転級し、オプションを行使して、ブドラーに挑むのは京口にすべきではないか、と。

傍目の者がいうほど簡単じゃない、というのは承知ですが、
田口のような闘志に満ちた選手が、その闘志についてこない身体を引きずって闘い、
決定的な破局を迎える、というような「絵」は、あまり見たくないな、と思います。

今後、再起するなら、身体的な負担を軽減して、新たな方向性を模索するべきではないか。
今回の敗戦は残念でしたが、今後次第では、新たな道への「契機」だった、
そう振り返ることが出来るのではないか。そんな風にも思いました。




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世界の最高峰に散る リナレス、天才ロマチェンコを苦しめるもKO負け

2018-05-13 12:43:37 | 海外ボクシング



朝から、見ていて痺れるほどの一戦を、生中継で見ておりました。


日本のファンにとっては、若い頃、デビュー戦から見ているホルヘ・リナレスが、
ついに世界の殿堂MSGにて、キャリア最高の大一番を闘う。
対するは、この試合の注目度、グレードの高さを担う、リナレス以上の評価を受ける挑戦者、
ワシル・ロマチェンコでした。大いに期待、そして注目の試合でした。


初回は、ロマチェンコが出て踏み込み、当てていく。
リナレスは少し後手だったが、2回、少しロマチェンコが足使うと、ワンツーが出る。
3回はリナレスが左フック、右ストレートをボディへ。

離れた距離から、単発ながらボディへの攻撃が出るリナレスに対し、
ロマチェンコは、離れてもええことないな、という感じで、前に出てくる。

4回、ロマチェンコが唯一、強く当てる意志を持って打つ、
左アッパーから右フック返しのコンビが増えてくる。
リナレスは我慢して、単発のボディ攻撃。

この流れで6回、ロマチェンコがリードしていたところ、
リナレスの右ショートが決まり、ロマチェンコがダウン。
「真芯」ではないか、でもそれに近いヒットで、ダメージもあったか。

この一打は、リナレスのロングのパンチの切れ、そして遠くから打てるボディブローが、
普段以上に、ロマチェンコの足捌きを、前進、攻撃に傾かせたが故に決まったもの、と見えました。

当てる巧さはロマチェンコが圧倒的で、軽いが数多くのヒットを喫し続けていたリナレスが、
それを耐えて、見事に決めた右の一打でした。


7回以降、両者それぞれに苦しい中、リナレスは速い連打を繰り出し、
ロマチェンコは右から細かく当てて、懸命に立て直し。
ポイントはヒット数でまさるロマチェンコがややリードかと見えましたが、
内容的にはそういうのとはまた違う、拮抗したものが続きました。

両者ともに懸命の闘いぶりでしたが、ことに、いつものような「好き放題」とは
ほど遠いロマチェンコが、嫌なはずのボディ攻撃を受けても、怯みを見せない姿には感心しました。
対するリナレスは、軽いながらも打たれ続けたダメージの蓄積が徐々に見え、
終盤に入っても、身体の軸がぶれないロマチェンコと比べ、
上体が揺らぐ場面が散見されるようになります。

終局は唐突に見えましたが、振り返ればこういう積み重ねの末、だったのでしょう。
10回、連打から下に返した左、レバーパンチでリナレス倒れ、KOとなりました。
おそらくですが、キャンベル戦で肋骨を痛めていたことにも関係しているのでしょう。
ダメージがかなり深く、闘志はあっても、身体が動かせない、という風にも見えました。




敗れたとはいえ、リナレスはプロ転向後のロマチェンコをもっとも苦しめたと思います。
左右への「旋回」を自在に繰り返すロマチェンコに対し、身体の向きを合わせて動き、
身体の軸をずらした位置から、ガードの真ん中を狙ってくる左を、かなう限り防いでいましたし、
ロングのボディブローは、左右ともに強く、ロマチェンコの余裕を奪っていました。

しかし、これまでとは一段違う、余裕のない展開でも、ロマチェンコはさすがでした。
攻防の継ぎ目が驚くほど滑らかで、打たれない位置取り、という表現では追いつかない、
完璧な移動の繰り返しで、外しては当てまくり、相手の戦意を喪失させるのが常ですが、
今日はボディを打たれ、ダウンも奪われ、リナレスの目にも止まらぬ連打を浴びながら、
要所でしっかり反撃し、その都度、リナレスの追撃を断ちました。


世界の一流同士が、互いの力を発揮して、互いに苦しい展開の中、
懸命に耐え、立て直し、というぎりぎりの攻防を見ていると、思わず手に汗握りました。
これぞアルファベット要らず、真の「世界ライト級タイトルマッチ」だった、と思います。
実際、昔日のそれは、こういうものだったんだろうなあ、と。

どっちも相当強いけど、さらに強い者の方が勝つ。
情け無用、酷薄無情の切り分けなれど、でも、やっぱり、素晴らしい。
こういうレベルのものだと、もう、四の五の言うことありません。
どっちが勝とうが負けようが、嬉しいとか悔しいとか、そういうこっちゃない。
そう思える、次元の違う試合でした。

こういう組み合わせを生中継で見られるのは、本当にありがたいことでした。
これだけでもWOWOWに加入する価値充分、元取れた、という感じです(^^)
改めて両者に拍手です。いやー、素晴らしい試合でした!



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「魔法は消えた」のか、その仮定の意味 ゴロフキン強烈KO、20度目防衛

2018-05-07 05:58:53 | 海外ボクシング



昨日ははボクシング生中継連発の日曜日でした。
簡単に感想を。


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試合までにあれこれあれこれあって、ひとまず決まった試合、という感じでしたが、
ゲンナディ・ゴロフキン、久しぶりのKO勝ちでありました。

バネス・マーティロスヤンは、一階級下なれど、実力は確かなものがあり、
決して楽な相手でもないと思っていましたが、勝負は早かったです。

初回、挑戦者が積極的に攻めて、ワンツーから左も追加してポイントは取りましたが、
攻めるのはいいけど、防御の決めごとというか、打ったあとの「始末」について、
特に考えなく「素」の勝負をしている、という感じに見えました。

これはゴロフキンが出て、ヒットを取り始めたら早いだろう。
もしそれが出来ないようなら、ゴロフキンの衰え、村田諒太の言う「魔法」が
本当に消え始めていることの証なのやろうな...と思っていたら、
2回早々、右アッパーで止めて、右当てて追撃。最後は「強連打」による見事なKOでした。


短い試合でしたが、色々思うところのある試合ぶりではありました。

村田の言う「魔法」については、初回を見ると、マーティロスヤンの積極性、切れ味により、
打たれたこと自体は普通なら仕方ないのですが、やはり往時の姿よりは...と見えました。

そして2回は、マーティロスヤンが積極性と引き替えに、特別な防御への意識を持たなかったが故に、
往時と変わらぬ攻撃力、詰めの鋭さが見られたように思います。

で、これが村田諒太相手だったら、どうなるのかな、と思いました。
防御はマーティロスヤンより堅牢ではあるが、これほど攻め手があるかというと、疑問です。

しかし、ジャブと右ストレート、クロス、左ボディのみで攻め、
防御はブロック中心、それ以外の選択を切り捨て、余計なことはしない、という戦法で、
耐えつつ押し、じわじわと城攻めをするようなやり方に徹して闘えたら、
往時ならともかく、今なら、勝機ありとは言わずとも、試合にはなるのかもしれない。

ゴロフキンの試合を見て、村田と関連づけて、そんな風に感じたのは初めてでした。

「魔法」が消えても、充分強い。しかし初回、打たれて一歩引いたゴロフキンの姿は、
確かに以前のそれとは、少しだが確実に違ってきてもいる...のかもしれません。
もちろん、村田の防御がゴロフキンの攻め手を引き出してしまい、打ち込まれたらあっという間、という、
2回のKOシーンが再現される可能性も高いのだろう、とは思いますが。


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さて、早朝というか、土曜深夜というか、午前2時からはDAZNが、
英国ロンドン、おなじみO2アリーナから生中継をしてくれました。

IBFバンタム級タイトルマッチは、噂の新鋭エマヌエル・ロドリゲスが、
体重超過のポール・バトラーを12回大差の判定で下しました。

バンタムの試合で3ポンドオーバーとは、先のルイス・ネリーには負けますが、
なかなかの狼藉と言わざるを得ません。しかしロドリゲスは、ぱっと見比べて、
大幅にとはいかずとも、なるほど確実に一階級弱の違いはあるな、と見えるバトラーを、
初回早々左ダブルで倒し、連打で二度目。評判通りの実力を見せました。

普通のバンタム級なら、試合はKOで終わっていたかもしれませんが、
そこは実質Sバンタムのバトラーが耐えました。
しかしロドリゲスの強くて正確なジャブ、右の後に来る「返し」の左フック、アッパーが
試合を支配し続け、バトラー3回には鼻血を出し、6回には後退して打たれる場面もあり。

終盤は倒せないと割り切ったか、誘いもあったか、手を少し下げ加減にしつつ、
リベットのようなジャブを当て続け、大差での勝利となりました。
採点は14点差がふたり。さうぽん採点も同じでした。

体重のハンデがあり、倒れない相手にもっと苦しんで不思議ではないのに、
ほとんど質を落とさず勝つあたり、単なる勢いだけの強打者とは違うレベルの選手でした。
パンチが驚くほど伸びるわけではないかわりに、ジャブひとつ取っても硬質で、正確に打てる選手です。
ボクサータイプだけど、パンチは同胞の先達、ウィルフレド・バスケス級の威力を感じました。
足捌きが少し遅めというか、細心さがないなと見える部分もありましたが、
総じて筋が良く、正攻法でまともにやりあったら、相当強そうです。
今回は特殊な条件下での試合でしたから、余計にそう思います。

将来、井上尚弥との対戦があるのでしょうかね。大いに楽しみです。


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ということで、昨日は朝から、というか早朝から、生中継連発で、TVの前にほぼ釘付けでした。

DAZNで午前2時より、英国の試合を生中継。
午前10時半からWOWOW。
午後5時45分から、MotoGP欧州ラウンド開幕、アンダルシアはヘレスより。これはG+。
そいで、夜中の3時半からは、年に二度だけサッカーの試合をフルに見る機会、通称「エル・クラシコ」。

...まあ、物事何でも優先順位というものがありますで、
ホントにこれを全部、リアルタイムで見ていたら、体調がガタガタになってしまいます。
DAZNは午前4時くらいに起きて見ました。これでも早いだろうと思っていたら、
上記のロドリゲス戦がそのくらいから始まったので、危ないところでしたけど。

しかしWOWOWは、長々とやっていましたが、メインは2ラウンドですから、
正直言ってそれまでは飛び飛びでした。アンダーがいくつか飛んだので、仕方ないところですが。
来週の生中継は、他にあれこれ重なりはしないので、一点集中して臨むとします。

しかしGP、酷い多重クラッシュ連発でした。見ていて肝が冷えました。
大怪我などはなかったようで、不幸中の幸いでしたが...。


コメント (7)
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体格差ものともせず/大流行/「枠」は不要/姫路決戦/処分なし?

2018-05-01 04:45:15 | 話題あれこれ


※なぜか、姫路の試合について書いた部分が欠けたまま、記事をアップしてしまいました。
追記して更新しておきます。大変失礼しました。



GW中は、各地で試合が続きます。
神戸の久保-大沢戦を皮切りに、名古屋で大阪で、その他もいろいろ。
昨日は名古屋で、坂晃典の再起戦があり、見に行こうか迷ったのですが、所用により断念。

相手は少し前に記事にしたとおり、デビュー3戦目の力石政法
ライト級の選手で、サウスポーに強打を秘める若手ですが、
坂は体格差をものともせず、正面から打ち崩しての2回TKO勝ちを収めました。
動画ありましたので、貼っておきます。







体格差もあり、パンチの切れ、威力では力石にも光るものが見えますが、
パンチの精度、打たれたときの耐久力、受け方などの違い...
つまりは「キャリア」の差が出た、という感じですね。

坂はフェザーでは相当減量がきつかったようで、今後はSフェザーで活動する模様。
体力面で安定すれば、機動力と強打を生かせると思います。今後に期待ですね。



名古屋と言えば、薬師寺ジムの森武蔵、4月1日の試合動画も貼っておきます。





相手はどうという選手じゃないですが、話が早いのは良いことです。
マッチメイクも大変なんでしょうね。

と、ここまで書いて、あ、坂が転級するなら、階級一緒やな、と気づきました。
実現したら名古屋行きは決定ですが(笑)


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この話題はもううんざりですが、我々が神戸で観戦した当日、大阪の試合では、
メインの日本ユースタイトルが、計量失格で中止になっておりました

清瀬天太を破って全日本新人王になった、長身のサウスポー武田航が、
大阪に来て、入口裕貴の挑戦を受ける、若手同士の好カード。
久保大沢戦がなければ、見に行っていたかもしれないくらいです。

武田が「中川抹茶」という、意味不明のリングネーム(誰が考えつくんですかね、こういうの)に
改名したことは、どないなものかと思いますが、まあ、それは脇に置いて、良いカードだと思っていました。

専門誌などでも様々な考証記事が出ていますが、昨今の減量方法は、相当リスキーな部分があるようですね。
フィジカルアドバンテージを求めるのは、今も昔も同じでしょうが、あまりに際どい綱渡りになっていて、
それに失敗している、というのが大半なのでしょう。
今回の入口は、Sバンタムでも試合していて、今回バンタムに落とせなかったという話ですから、
陣営共々、落とせるか否かの見込み違いもあったのでしょうか。

それにしても、インフルエンザか花粉症か計量失格か、というノリです。
大流行の趣ですね。勘弁してもらいたいです。


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日本ランキングが改定される、とのこと。

今までは「保留選手」という、意味不明の枠があり、世界ランキングがあろうがなかろうが、
日本タイトル挑戦をしない選手、という「謎の一団」が別記載されていましたが、
それが撤廃されるということです。

あと、12位までがタイトル挑戦資格者である、とするかわり、
13位以下にも、A級選手が条件を満たせばランクされるとのこと。

昔日の「ロジカル・コンテンダー」制では、世界タイトルは6位まで挑戦資格があり、
ランクは10位まで作成されていましたが、形としては同じですね。
問題は、階級によっては人数がかなり多くなるということですが、
実際、Sフライとバンタムでは、21位まで広がったとあります。

もう、ここまでやるなら、4回戦まで含めて、全選手ランク付けしたったらええがな、と思ってしまいますが。
テニスの世界ランクみたいに、厳密にポイント制にして。無理でしょうけど。
その上で、タイトル挑戦資格を「1位のみ」にしてしまえば、と。無理連発ですね。失礼。

しかし、相変わらず世界ランカーや、OPBFやアジアパシフィックは除外なんですね。
東洋、アジア最強、という昔日の栄光はすでに過去、単なる地域王座に過ぎないものを、
そこまで「珍重」してどうなる、とみんな思っているんですけどね。

気持ちよく日本ランキングにも記載してもらって、国内タイトルのカード充実を実現しないと、
本当に、いよいよ厳しくなってくるのは、火を見るより明らかでしょう。
いちいち余計な「枠」など要らない。そんなものは害でしかない。そう思います。


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少し先の話ですが、7月21日、姫路にて、清瀬天太が「オレどん」こと、
オーレイドン・シスサマーチャイに挑みます


上記の入口や、全日本MVPの市村蓮司戦などを破った、日本ユース・Sバンタム級王者の水野拓哉に
初黒星をつけ、武田航に敗れたものの、その後は負けなし。
さる筋から、上位クラスに挑むため、鋭意交渉中、と聞いていましたが、こういう相手になりました。

井岡一翔に敗れたのち、Sフライで世界上位に長く、井上尚弥との対戦も?と
当ブログでのみ噂になっていた(笑)サウスポーの技巧派ですが、
タイでの試合ぶりをちょこちょこ、YouTubeなどで見る限り、
言い方は悪いですが、レベルの高い「当て逃げ」は健在で、清瀬にとっては難しい試合になりそうです。

しかし、清瀬がボディストレートなどで止め、先回りして左フックを決めるなどして、
徐々に攻め落とせたとしたら、清瀬の成長を大いに称えられる一戦でもありましょう。

これは姫路木下ジムにとっても、ひとつの「決戦」といえる試合でしょう。
当日はなんとか見に行きたいなぁ、と思っておりますが、聞けば第一試合開始は午後3時。
むー。終電シビア...(^^;)


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さて、一昨年あたりに有名週刊誌に出ていた話ですが、やっぱりホントだったようです。

週刊誌やら、あとは新聞記事でも一部、けっこう詳らかに、生々しい描写の記事が出ていたそうですが、
話半分としても、相当、重大な事件だと思います。
比嘉大吾の無期限出場停止の際に、社会的影響うんぬんという言い方がされていましたが、
これはそれ以上の話でしょうに。

ところが、今のところ、この件で協会やらコミッションやらが、当該ジムに何か処分を科したとか、
そういう話が一切聞こえてきません。
ボクシング界って凄いですね。どこの世間に出しても通らない非常識が、当たり前に通ります。
ファンとしては、色々ともう...こういうのを「馬鹿負け」っていうのでしょうか。やれやれです。


コメント
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