さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

記録より大事なもの/中部の星/ヘビー級の過酷/天狗登場/30周年

2017-01-15 10:57:52 | 話題あれこれ



新年から、あれこれ試合も始まり、話題もあり、ということで、
ぼちぼち更新していきます。本年もよろしくお願いします。


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金曜日、ホールではチャールズ・ベラミーvs別府優樹戦、スプリットで引き分け。
動画を見ることが出来ました。




試合記事のとおり、1、2、5回は別府が山場を作るなど、思った以上の健闘。
チャーリー(やっぱ、この方がしっくり来ます)はダメージ甚大というわけではないにせよ、
それでも少し効いたときもあったか。

それでも要所で強打を返して、別府に後退を強いたものの、逃してしまい、判定へ。
引き分けは少し甘いかな、逆がいたのはちょっと意外かな、という印象のドロー。

内容としては、チャーリーもウェルターに落として、ちょっと厳しかったにせよ、
やはり別府優樹が思った以上に健闘し、若手としては力のあるところを見せた、という試合でした。

新人王獲得後、強い相手と対戦していないことを批判的に見られていた別府ですが、
私としては、そんなもの「カラスの勝手でしょ」の世界で、
30年前の選手が作った記録、数字に、今の若手選手のマッチメイクが影響されねばならないとは
これっぽっちも思わないんですが、今回、陣営は15戦目でこういう挑戦を行いました。

マッチメイクの難しさや、その意図を完全に理解して、語れるものではありませんが、
格下相手の試合から、一足飛びにこういう試合をするのは、心配な面もありました。
しかし結局は、別府の健闘が、そうした杞憂を、ひとまず無意味なものにしてくれたと思います。

当然、あれこれ不備な面も見えましたが、その馬力、体力はなかなかのもの。
後半はスタミナと耐久力に不足が見え、苦しい展開が続いた時も、動いて凌ぎ、
強豪チャーリーと8回を闘い抜いたのは、現段階では立派、と称えていいでしょう。


同時に「たった」15試合で、若手に対し、性急に大きな試合を闘えと求めることの是非も、
考えさせられる試合でした。
何度か過去に書きましたが、もう誰も彼もが「浜田に倣え」というのは止めにした方が良いでしょうね。
選手のキャリアは、結局は人それぞれ。浜田が高校王者からプロになって、19戦目で作った記録と、
アマチュア経験が少ない選手がデビューからたまたま倒し続けた結果を、
同列に並べて論じるものでもないでしょうし。

その結果、可能性を秘めた若い選手のキャリアが、取り返しのつかない形で
壊れてしまうこともありえます。
今回は、大過なく収まった、という感じではありますので、一安心、というところでした。


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昨日買った専門誌をぱらぱらと見ておりますと、昨年12月4日、あの「薬・辰決戦」の日に行われた
刈谷での薬師寺ジム主催興行で、森武蔵という選手がデビューし、初回KO勝ちを収めた記事がありました。

マガジンの中部担当、松本直史記者は、日頃は堅い表現で、厳しめの評をすることが多い印象ですが、
今回は多少、その印象とは違っていました。

41秒、衝撃の秒殺デビュー。17歳の逸材、森が好発進。
薬師寺会長は「デビュー3年での世界奪取」と青写真を描くが、それが夢物語といえぬ輝き。
実力はすでに日本ランカー以上、等々。

いったい何の騒ぎやこれは、と思って、動画探してみたらすぐに見つかりました。
とりあえずデビュー戦の手撮り映像。





もちろん初回KOで弱く見えるはずもなし、全体像が見えるわけでもなし。
しかしスピード抜群、二度目のダウンを奪った左ダブルの切れなど、
若き日の長谷川穂積を思い出させるパターンでもあり、確かに目を引きます。

17歳のサウスポーで、スーパーフェザー、ないしはライト級。
熊本出身、U-15で2度の優勝経験あり。
その素質に惚れ込んだ薬師寺会長がスカウトしてプロデビューということだそうです。

薬師寺ジムには、全日本では敗れたものの、新人王西軍代表になった矢吹正道に続き、
期待の若手が育ってきているようです。
何でも、今年は新人王戦に出るという話ですので楽しみですね。
路線変更が無く、勝ち上がってくれば、府立やホールで見られるかもです。

こちらは中部で放送されたと覚しきドキュメントです。
けっこう注目されてるみたいですね。

※15分45秒くらいから、同日デビューの中山和則のミットを受けているのは、
どうやら大場浩平さんのようです。





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昨夜はありがたいことにG+生中継。
藤本京太郎が日本人初のOPBFヘビー級王座獲得なりました

2回に見事な右でダウンを奪いましたが、図体のごつい相手が諦めず振ってくる強打に脅かされ、
終始気の抜けない試合展開だったようです。
本人も試合後のコメントで、苦闘ぶりを語っていますが、日本人のボクサー、
及び打撃系格闘技選手にとり、ヘビー級とはやはり化け物の世界で、非常に厳しいものなのですね。

かつてK1の佐竹雅昭などは、ガード、ブロックしてもダメージが脳に来る、という具合で、
過密な日程で試合を組まれて大変だったそうですが、藤本もまたK1時代から今日にいたるまで、
日本人選手としては抜きん出て、100キロ超えの相手と多く闘ってきた選手ですから、
誰よりもその苦しさを、身をもって知っているのでしょう。


しかし藤本、非常に選手層の薄い日本のヘビー級において、
その苦しさを身一つで背負わされている感さえあります。
もう少し、選手の数自体を増やしていかないと、どうにもならないと思います。
そのための施策を行う力も意志も、どこにも見当たらないのが、日本ボクシング界の現状ですが...。


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で、昨日の興行には、天狗まっしぐらの新王者、小國以載が登場しました

拳を傷めて、少しブランクになりそうだとかで、残念ではありますが、
精神的には好調そうなので、まずはじっくり治してもらいたいものです。

しかしつくづく、関西のジム在籍のまま、世界王者になってほしかったと思います。
ある意味、非常に貴重な人材です(笑)。まあ、仕方のないことではあるのですが...。


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最後に、少し前に見つけた、SHOWTIME30周年の動画。
懐かしいのやら、最近のやら、あれこれと。

TV局自ら出したものなので当然ながら、画質が良いのが嬉しいです。





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驚異の闘志と頑健さ、しかし変わらぬ「被弾前提」の熱闘 田口良一ドロー防衛

2017-01-05 21:40:02 | 関東ボクシング


大晦日、大田区のセミ、田口良一vsカルロス・カニサレスはドローで田口の防衛でした。

3回の途中くらいまでは、カニサレスが出て先制、田口は若干劣勢という流れ。
しかし田口が右のボディだったか、カニサレスの連打に返したヒットあたりから、
カニサレスが目に見えて足を使う型に変わったように見えました。

田口は前に出て圧力をかけ、カニサレスは徐々に圧されて苦しくなってくる。
しかし田口はジャブやアッパー気味の左、ボディ攻撃などはあるが散発的で、
完全に捉えるには至らず、ガードの隙間をヒットされる。

8、9回あたりは捉えるかと思ったが、10回はカニサレスも踏ん張って右当てる。
最後は、メインのコラレスと同様、ホールドの注意が出るが、減点はなしで終了。

会場で見ていると、ラウンドごとに採点を迷う回がけっこうありました。
田口の前進とヒットか、カニサレスが捌いて当てているか。
全体を見るか、好打を取るか。
正解の無い採点だろうなあ、と思って自分の採点を見ると、6対6になっていました。

公式は三者三様のドローでした。8対4で二人が割れ、あと一人がドロー。
8対4でどっちか、という試合だったようには思いませんでしたが...。


カルロス・カニサレスは、田口良一が世界戦で迎えた相手の中では、一番手強い選手だったかもしれません。
スピードもパワーもなかなかあり、田口がいつもどおりに打たれながらも執拗に出て、
捉えて攻め落とす、という展開は、この相手には難しかろう、と、試合序盤の段階で思いました。

反面、まだ不備が多い、青い段階の選手だな、という印象ではあります。
前に出る、足を使う、とふたつの闘い方を見せたものの、
総じて何をやるか、やりたいか、が見え見えで、わかりやすい選手でした。
打つパンチも同じ距離、タイミング、組み合わせが多く、ジャブで崩して攻めるより、
左右フックの組み合わせがいくつか、という印象。
もちろんそれで田口を充分苦しめましたが、競った回をもう少し取るには、不足があったというところでしょう。


今回の挑戦者選びについては、田口が本人の希望で強敵を選んだ、という報じられ方でしたが、
見ていて、それはあながちウソでもないのかな、という印象を受けました。

カニサレスが真に世界一流のボクサーだとは思いませんが、実際やってみて、
田口の被弾前提の前進と、執拗な攻撃での攻め落としがかなわなかったわけですし、
何よりもキャリアの下降期ではなく、上昇期の選手であったことも含めて、
過去の誰よりも手強く、敗北の危険性が高かった、と思います。

それにしても、いつものことですが、田口良一の闘いぶりには、鬼気迫るものを感じます。
白面の美男、不器用ながら良く鍛えられた頑健さをもって敵に肉薄し、
ある程度の被弾を前提にせざるを得ない、厳しい展開を、果敢だ懸命だ、という表現では
物足りないような姿勢で闘い抜く。
「評」の言葉を抜きにして言えば、畏るべき、としか言いようのない選手です。


しかし、世界王者としてどうか、といえば、このくらいの選手相手に、
壮絶な闘いをせねばならない、という時点で、やはり如何なものか、と思います。
もし彼が日本チャンピオンで、この選手と闘って勝ったなら、それは殊勲でしょうが...という。

何よりも、いくらタフだからといって、このような被弾前提の試合ぶりでは、
真に世界一流の、力の出しどころを弁えた、世界上位にふさわしい練度のあるボクサーと対したら、
厳しい結果が待っていると思います。
彼の防衛回数は5を数えましたが、宮崎亮戦が指名試合ということになっているものの、
直近の彼のキャリア、そして現状にそんな内実がなかったことは、誰もが承知の事実です。
一度も、本当に世界王者としての抜きん出た技量を示さないまま、こういう数字に到達したことも含め、
世界王者としての田口には、残念ながら不足を感じます。

そして、このような闘いぶりが、果たしていつまで続くものなのか、ということも、不安です。
その闘志には感嘆させられてばかりですが、そうはいっても...という気持ちですね。



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この日はセミセミにOPBFとWBOアジアパシフィックの「統一戦」がありました。
Sフェザー級、伊藤雅雪と渡邊卓也の一戦です。

初見(だと思う)の渡邊は、リーチもあって良い体格に見えましたが、
立ち上がりから伊藤に気圧されたか、ロープ際に下がってしまう。
伊藤は低い姿勢から、じっくり見てフェイントをかけるが、ジャブは省略、攻撃は散発的。

渡邊は試合が進むにつれ、時折鋭いワンツーが見られるが、全体的に手数が出ない。
伊藤もまた、カウンター狙いが度を超している印象。

両者、ことに伊藤の悪いときはこうですが、試合運びや組み立てが見えず、
その場その場の反応、対応だけにしか意図が見えない試合ぶり。
終盤は渡邊が疲れたか、少々フォームが乱れ出すが、伊藤は相変わらず、
カウンターの「合わせ」狙い優先で、攻め崩そうという型が作れない。

後楽園ホールのような、狭い空間で双方の応援団が多数を占めるロケーションなら、
多少違ったかもしれませんが、場内の「その他」の観客にとっては、見ていて
「終わるまで、大したことは起こらないだろうなあ」と確信が持ててしまう、退屈な試合でした。

判定は前に出ていて、手数、ヒットとも上の伊藤が、当然支持されました。
伊藤は渡邊が出てきた時の隙に、何らかの「合わせ」技を決めたかったのでしょうが、
渡邊は総じて消極的で、その狙いにも当然乗らない。
では、伊藤がその先、何か違うことをするかというと、何もなかったように見えました。

伊藤は合わせ技の巧さ、目の良さ、俊敏さなどに秀でて、センスのある選手だと思いますが、
ことこういう展開での「試合運び」に関しては、非常に凡庸、或いは歪な選手です。
きっと頭の中では、物凄い勝ち方、倒し方が理想像としてあるのでしょう。
しかし現実の試合展開において、それを実現するには、あまりにやること、やれることの幅が狭すぎ、
あまりに偏り、選り好みが過ぎます。この上を狙うには、不足が多すぎると改めて思わされました。


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この日はワタナベジムの若手選手も多数出場しました。
京口紘人、谷口将隆はそれぞれ勝利。谷口は少し拳を傷めたか、判定。
この両者はライバルであり友人でもあるそうですが、現時点では京口が一歩リードかという印象。

その前には、中山佳祐というサウスポーが出ました。
あれ、この選手見たことあるな、と思ったら、以前、大阪で久高寛之と対し、
二度ダウンして判定で敗れたものの、それ以外は健闘して、良い試合をしていた選手でした。
ワタナベジムに移籍しての初戦だったそうです。
タイの選手にKO勝ちでしたが、試合数がたくさん見込めるジムへの移籍を、
今後の成長に繋げられるかどうか、ですね。



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一躍、同級世界最強に躍り出た 田中恒成縦横無尽、元王者フエンテスを圧倒

2017-01-03 00:19:36 | 中部ボクシング


モイセス・フエンテスvs田中恒成戦は、大晦日当日、
CBCがネットでライブ配信したものを見ることが出来ました。

このあと、観戦のために向かった大田区総合体育館で、関東在住の方に聞いたところでは、
驚いたことに関東でも放送がなかったとのこと。
確か昨年末は中部と関東で放送、関西では放送無しだったと思うんですが、
今年はそこから一歩後退というか、より状況が悪くなっています。
(ちなみに関西では今年も放送無し。その時間は漫才の特番でした)

この手の話になると
「そういえば、畑中清詞vsペドロ・デシマの時は、関東は綱引き選手権だったなぁ」と
関東の方は必ずといっていいほど言います。
それに対して関西人は「チャナ・ポーパオインに新井田豊が挑んだとき、
関西ではハイヒールモモコ一家のハワイ旅行だったんですよ」と返し、対抗するのが常です。
お互いに自慢にも何にもならん話ですが...。

脱線しましたが、田中恒成のような逸材に、そのようなTV放送の取り扱いは相応しくない。
それを示した、田中恒成の圧倒的な勝利でした。


モイセス・フエンテスは長身、大柄なスラッガーで、スピードに欠けるが
打ち合いに持ち込んで右の強打を生かし、その駆け引きにも秀でた実戦派、という感じの選手です。
あのドニー・ニエテスと一分一敗、それ以外にもイバン・カルデロンに引導を渡した試合や、
来日もしたルイス・デラローサを初回で仕留めた試合など、あれこれ見たことがあります。
ひとたび好機を掴んだら怒濤、という、いかにもメキシコの強打者、というイメージがあり、
田中恒成がペースを渡したり、好打されて攻め込まれたりしたら危ないかも、と思っていました。

しかし実際は、田中恒成のスピードと強打が、フエンテスを圧倒し続けました。

初回からジャブ、右から左と好打。3回は右ストレート上下を突き刺す。
打っては鋭くバックステップ、フエンテスの反撃をほぼ外しきる。

4回はもう縦横無尽。左右に出ては多彩なパンチを上下に散らす。
5回、右にシフトした田中の左ボディが決まる。
フエンテスはロープに詰められ、右で崩れかけ、こらえたが容赦ない追撃にさらされ、ダウン。
レフェリーはそれまでの展開も考慮したか、カウントせずにすぐTKOを宣しました。

50キロ契約で闘ったノンタイトルのレネ・パティラノ戦と同様の、
或いはそれ以上のワンサイドマッチでした。
フエンテスが何らかの事情で不調だったにしても(前日3度計量オーバーしたそうですが)、
ここまで一方的な内容になったのは、田中恒成の圧倒的な強さによるものだと見えました。

凄いな、怖いな、とさえ思うのは、見た印象でしかないですけど、
田中恒成はまだ、テンポを完全に上げ、打つ手を出し切ったわけではないように見えることです。
スピードも手数も、パンチングパワーも、もっと出そうと思えば出せる。
しかしそこまで行かずとも、この日のフエンテスなら充分に攻め落とせてしまえた。

試合序盤から好調でしたが、それでも最初から力を振り絞り、手の内をさらしてはいない。
まだ余力はある。どの程度かまでは不明なれど、他にもまだ攻め口が残っている。
汲めども尽きぬ、とは言い過ぎかも知れませんが、田中恒成は強豪に圧勝してなお、
その膨大な才能を見る者に感じさせる、スケールの大きな逸材であることを、改めて示しました。

田中恒成は試合前日までは無冠の身でしたが、この試合内容とタイトル獲得により、
ドニー・ニエテス転級後の、108ポンド世界最強の座を手に入れてしまった。
そんな印象すら持ってしまいます。八重樫東、田口良一、ガニガン・ロペスという面々を
一気に追い越してしまった、と。

日本ボクシング界の未来は、井上尚弥と共に、この田中恒成の拳にかかっている。
そう評するべきかもしれません。
むろん、今後に様々な困難が待ち受けるにせよ、それに負けずに成長し、乗り越えていってもらいたい。
遠くない将来のフライ級進出も含め、その圧倒的な技量力量で、より開かれた「世界」の舞台で
その才能を解き放ち、闘ってほしい。そんな、壮大な夢を見てしまいます。


中部在住の友人の厚意により、放送された動画も見ることが出来ました。
以下、紹介しておきます。数日で消しますのでお早めに。


その1。



その2。




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この大晦日、岐阜の会場ではもうひとつ、注目の日本フェザー級タイトルマッチ、
林翔太vs下田昭文戦も、CBCによるライブ配信が行われていました。
これ、告知も何も見たことがなく、当日たまたまPCを開いたらやっていて、
慌てて見始めたようなことです。
TV放送は、中部で後日あるんでしょうかね。当日はなかったはずですが...。

試合展開は、序盤は下田リードで、5回終了の途中採点は、4対1で下田が二者、
あと一人は48-48でイーブン。2-0で下田。

まあ、ひとりは地元有利のジャッジがいても仕方なく(と言っていいのかは置くとして)、
あと二人の、まともな方々の支持をしっかり取り付ければいいだけのことですが、
6回くらいから林がペースを上げ、下田がヒットにより左右瞼を切ってしまうなど、
ちょっと展開が変わってきます。

下田は片方の出血がそれなりにあり、またヒットによるカットなので(実際そうだったと見えました)、
ドクターストップがかかると、負傷判定ではなくTKO負けになるということで、
ちょっとナーバスになったか、打ち込みにかかるかと思えば、足を使って捌く、という感じで、
ちょっと闘い方に迷いが見えました。そこへ林が果敢に打っていき、林が取る回が増え、
あとは微妙なのもあるが、林に流れるかな、という感じの回もあり、という具合。

そういう後半戦、9回終盤、微妙な感じだったところ、林にとっては良いタイミングで、
下田にとっては悪いタイミングで、林の右がヒットし、下田が尻餅をつくようなダウン。
足もかかっておらず、押されてもない、ヒットによるダウンでした。

林は勢い込んで最終回も出て、試合終了。
採点は正直微妙、前半の4対1、3ポイント差が覆るかどうか、でしたが、
その二者の判定が95-94、ダウンの分だけ林、と出て、あとひとりも当然、林。
3-0で林翔太の防衛となりました。

前半戦の劣勢をものともせず、諦めずに打ちかかっていった林の果敢さが、
際どい勝利を彼に与えました。
見方は様々にあるかも知れませんが、その健闘を称えないわけにはいかない、
そういう闘いぶりだったと思います。


昨年の細野悟戦に続き、下田昭文はまたも、際どく微妙な試合を落としました。
ことさら無茶苦茶な不当裁定、判定に出くわした、というのではない。
試合ぶりはどこが悪いというでなく、体調も悪くなさそうでしたが、
負傷などから展開を悪くしてしまい、僅かに及ばず、という負け方でした。
はっきり言えるのは、あまりに痛い、痛すぎる結果だ、ということだけです。

まだまだ老け込む歳でもなく、実力が衰えているとも見えませんが、
下田昭文は、またもそのキャリアにおける重大な岐路に立たされてしまいました。
彼の今後は、いったいどのようなものになるのか。注目でもあり、心配でもありますね。



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望外の完全勝利を生んだ冷静と胆力 小國以載、強打グスマンを下し戴冠

2017-01-02 16:15:02 | 小國以載



この試合が決まったとき、少しだけ記事も書きましたが、相性自体は悪くはないと思っていました。
ジョナタン・グスマンは和氣慎吾戦で強烈な印象を残しはしたものの、反則込みの勝利でもあり、
突出した強打はあるが、全体的に完成度が高いボクサーというと、まだそうとも言えない。

長身、リーチにまさる小國以載が、距離の差を生かして闘えば、
その上で過去の試合で見せた、序盤からダウンシーンを何度も生んだ長い右で先制し、
遠くからでも打てるボディブローを決められれば勝機はある...と書きかけて、
いくらなんでもこれだけ連ねると、予想じゃなくて願望だなぁ、と思い直したようなことです。
実際の試合が、こんな、何もかも良いように回るわけがない、やはりパワーの差が大きいし、と。


大晦日、大田区総合体育館で、同道した方のスマホにより結果を知りました。

TBSが当日、どういう番組を放送したのか、全てをチェックはしていませんが、
いわゆる例年通りの「スポーツバラエティ」を延々と流したあと、
9時過ぎから井岡一翔の試合を生中継し、その後にこの試合を録画で放送したようです。
えらく遅い時間の放送で、それは如何なものかと思ったものの、そのおかげもあって、
私は会場から戻ったホテルの部屋で、それを見ることが出来ました。
思った以上にクリアな勝ちでした。
もう少しグスマンの追い上げがあったのかと思っていましたが、採点以上の差が見えた試合でした。


序盤から、好調時の足の動きがあり、なおかつほどよく重心が降りた構え。

相手の身体の軸、正中線をインサイドから打てる長いジャブ、右ストレート。
ボディ攻撃は右ストレート、左アッパーを内外に打ち分け、またこれを、遠近両方で打てる。

好機の詰めがやや甘く、派手な連続攻撃はないが、打つべき手は打ち、下がるときは躊躇なく下がれる。
長身、リーチを利して懐深く、防御動作に無駄がない。

序盤に好打で先制、ないしはダウンを奪うなどでリードした試合展開の場合、
その優勢な状況を生かして、その後の試合を巧く運ぶ勝ちパターンを持っている。
総じて機を見るに敏、冷静。


これら、過去の試合で小國以載が見せてきた特徴が、最初から最後まで十全に出た試合でした。

見ていて、この大舞台で、これだけほぼ完全に自分の良さを出し切れるものか、と驚嘆しました。
試合運びは徹底的に冷静で、その闘いぶりは、見た目からは窺い知れない、
彼の「胆力」といったものに支えられているのでしょう。

しかし、思い返せば彼がOPBF王座を獲った時も、大橋弘政を攻略したロリ・ガスカ相手に、
当時ランク15位だった小國が勝つとは、少なくとも私は思っていませんでした。
彼はその時の驚きを、今度はIBFのタイトルマッチで再現してみせたわけです。

序盤から長い距離を構築し、望外のノックダウンを奪い、そのリードを次の展開に生かす。
グスマンの反撃を、ダウン奪取時にダメージを与えたボディ打ちで食い止め、断ち切る。
距離の違いを最大限に生かし、ジャブだけでは止まらなさそうなグスマンを、
時に右ストレートで狙い打ち、突き放し、リードを守って試合終了。
大まかな流れは、こうして振り返ると、丸ごとガスカ戦のそれを踏襲していました。

ガスカ戦との違いは終盤です。かつては終盤、失速する傾向もありました。
ところが今回は、終盤にもしっかりヒットを重ね、打ち込み、その追撃の流れで
またも強烈なボディ打ちを決め、グスマンを再度ダウンさせました。
レフェリーが不自然なほど酷い誤審をしましたが、あれは実質、KO勝ちだったと思います。
このあたりは明確に、成長した部分だと言えるでしょう。

ここに至るともう、改めて脱帽というか、お見それしました、という感じで、
見ていてとても嬉しい気持ちにさせてもらいました。


出来れば実際に、会場で彼の戴冠を見たかったという思いもありますが、
初防衛戦はどうあっても、そうさせていただくことにします。
その初防衛戦は、岩佐亮佑で決まりのはずなので、ちょっと複雑ですが楽しみですね。

小國の唯一の敗戦の相手、和氣慎吾と同じくサウスポーなのが、ちょっと気がかりですが、
自分の良さを確実に伸ばして、予想不利の試合を覆してきた小國ならば、
また我々を、大いに驚かせてくれるのかもしれません。

翌日会見はこんな感じだったそうです。
さっそく飛ばしてますね(笑)


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井岡一翔は、暫定王者スタンプ・キャットニワット18歳を7回TKO。
2回に、ヒットを取ったあとの「移動」を怠るポジショニングミスをしたところを打たれ、
ダウンしたのにはちょっと驚きでしたが、4回くらいから左で立て直し、断続的に連打で攻め、
7回にボディ攻撃でフィニッシュしました。

ついに実現、夢の対決、統一戦...というような試合では全然なかったですが、
それでも闘志に溢れる若い挑戦者を、ダウン以外は問題なく退けた井岡一翔の実力は、
一流王者や上位が次々と転級し、大げさに言えば過疎状態にあるフライ級においては
高く評価されるべきものだと、改めて示した一戦でした。

しかし、まあ「いつもの感じ」ではありましたね、良くも悪くも。
距離が長いとか、抜群に速いとか巧いとかでもない、
井岡一翔のコントロール出来る範囲内に収まる相手を、今回も慎重に選んだのだなぁ、と。
もちろん、その目論見通りに勝つ技量は、一定の水準において、大したものではあるんですけど。

名のある王者がいなくなって、翌日会見では毎度の通り、あれこれ言ってはりますが、
記者の皆さんもええ加減飽きてはるんやないですかね、と思ったりもします。
こういう緩い状況になるまで、耐えて忍んで艱難辛苦...ってな現象は、
何も井岡一翔の周りに限った話でもないですが。

とりあえずはドニー・ニエテスの奮戦によって、伝統階級たるフライ級が、
少しでも従来のレベルに近づくことを、ボクシングファンとしては願うしかないですね。


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雪辱ならず、しかし彼は敬意の中を去った 内山高志、コラレスの逃げ切り許す

2017-01-01 03:42:23 | 関東ボクシング

昨日は大田区総合体育館に行ってきました。
関西依怙贔屓で売る当ブログとしては、京都に行くのが筋やないのか、という気もしたんですが、
どうしても内山高志の「最後の一戦」をこの目で見ておきたい、という思いでした。


セミが終わって場内にTV東京のVTRが流れ、それが終わろうかというときでした。
青コーナーの方から、内山の名を呼ぶ声が沸き上がり始めました。
ひょっとしたら、花道の奥に内山の姿が早めに見えたのかもしれません。
まるで彼の登場を待ちきれないように、人々は早々に声を上げていました。

両者入場、本来なら...もう、こういうのは古い考え方なのかもしれませんが、
後から入ってくるべき王者、ジェスリル・コラレスが先に登場し、次いで内山が入場。
場内は一斉に大歓声と拍手で内山を迎えました。

長きに渡る「王朝」を築いた男への、雪辱の期待はもちろんのこと、だったでしょう。
しかしその熱量は、単なる目前の一戦を勝利することのみに向けられたものではなく、
ひとたびの敗北で却って浮き彫りになった、ひとつの勝利がいかに難事であるか、
その積み重ねが、どれだけ膨大な労苦の元に成し遂げられた偉業であるかという
事実に対する、改めての驚嘆と敬意にも満ちている。そんな風に感じました。


試合は序盤、内山より大柄で、なおかつ速い驚異のサウスポー、コラレスの優勢でした。

何しろ大きく、距離が長く、踏み込みが速い。
左のパンチは、内山を鋭く脅かす。立ち上がりは内山、外せないかに見える。
内山が出ると、体を左右に翻して、連打とスイッチを織り交ぜた攻撃でヒットを取る。

しかし同時に、これらの攻め手のみならず、防御、というのを通り越した「護身」もまた、
こちらの想像を超えた次元のものでした。
好打してはクリンチ、ミスブローしてもクリンチ、という具合で、自分のやることだけやると、
ひたすらに体を寄せ、揉み合う。ことにミスブローのあとのクリンチが一番スピードがあることには、
見ていて呆れるのを通り越し、感心してしまうほど。

能力が高いことは見て取れるが、果たしてこの選手、本人が模索していたという
「ビッグマッチ」の舞台たる、米国のマーケットで売り物になるボクサーかな、と疑問でした。


しかしそのボクシングは、内山にとり御しにくく、脅威であるのも事実でした。
3回、ボディを打たれ、スイッチを交えてのコンビで後手に回らされる。
右ボディストレートが散発的に出るが、そのたびに倍する手数、ヒットを喫し、
後続をクリンチで断たれ、また攻められ、序盤は失点続きでした。

5回も低い姿勢から突き上げるようなワンツーなどを打たれ、劣勢。
しかしこの回終盤、コラレスがミスしてバランスが崩れ、そこに左フックが当たったか?
ダウンの裁定。場内一気に歓声に満ちる。

これで流れが変わるかと淡い期待もしたが、コラレスは頻繁にスイッチし、
左右の構えから左フックを決める。内山の攻めは散発的。
8回を経ても流れは変わらずも、9回終盤に内山がボディを決め、
10回は右ボディから猛攻。左右のボディが数回決まり、コラレスは露骨にホールド。

場内は囂々たる声援、しかし内山攻めきれない。
11回、コラレスはほぼ横向いて回り、しまいには走って逃げる。
揉み合いでは、ロープをつかんでのクリンチも。
しかし攻めると、軽い連打を放り込んでくる。また逃げ、クリンチ。
最終回は内山が攻めたが、ノックアウトはならず、判定でした。


採点は2-1でした。会場での私の採点は、115-112でコラレス。
自分では、内山に甘いかな、と思った数字でした。


試合後、場内は判定への不満も、ちらほらありました。
しかし内山本人がインタビューで、悔しさを押し殺して静かに敗戦を認め、
場内へ感謝を述べると、誰もが結果を受け入れねばならない、という雰囲気にもなりました。


試合全体を見て思うのは、ジェスリル・コラレスの能力の前に、
現状における内山高志の戦力は、それを攻略するにはさまざまに不足があった、
ということです。厳しいようですが、そして残念至極ですが、そう思います。

そして、過去のどの時点かなら、それがかなったのか、という問いには、もう意味はありません。
時は過ぎ去り、王朝は終わり、失われたものがいかに偉大で、貴重なものだったのかを思い返す。
我々に出来ることは、それに多大な敬意を払うことのみ、です。



感情を押し殺して言葉を紡いだのち、内山高志は静かにリングを去りました。
その背中に向けて、盛大な拍手と、敗れてもなお敬意に満ちた声がかけられていました。

そのしばらくのち、勝者コラレスがリングを降りる頃には、場内は閑散としていて、
彼を称える声も拍手も、まばらなものでした。

この日、フルラウンドの闘いで見せた姿がその全貌である、とするならば、
少なくとも私は、この選手の能力の高さが、現状の内山を上回ることは認めるにせよ、
到底、敬意の対象たりうるものとは思いませんでした。


そして、改めて内山高志の偉大を思っています。
どんな相手にも、堂々たる闘いぶりで、強烈な勝ち方を長きに渡り見せ続け、
そのこと自体が当然であるかのように存在していた、王者の姿を。

今更詮無いことですが、その頃に、一度でもいいから、直にその姿を見ておくべきだった。
愚かしいことこの上ないですが、そんな風に思っています。







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狙い定めて「斬り」倒した 井上尚弥復調、河野公平有明に沈む

2016-12-31 01:27:16 | 井上尚弥



今日は有明コロシアムにて観戦してきました。
最後三試合が生中継され、清水聡の試合も放送されたとのことですので、
ざっと感想から。


メインは井上尚弥がここ二試合の不調ぶりを見せることなく、ほぼ好調でした。
河野公平はガードを固めて前進、時に真正面からストレート、
時にフックでガードを外から打ち抜きにかかりました。

しかしその前進をジャブで突き、河野のガードが前に出たところをフックで叩き、
強烈な左でボディをえぐり、右をまじえて対角線のコンビを決め...
井上尚弥の自在かつ強烈な攻撃は、見る見るうちに河野公平を切り刻んでいきました。

ことに、かつては剛の拳を振りかざし、所かまわず強打して相手を圧倒していた井上が、
右を打つ頻度を下げて、左の数を増やし、相手を崩していくさまは、
最近の故障続きのわが身を省みた闘いぶりと見え、感心させられました。

4回、かつてマルガリート戦でマニー・パッキャオが見せた、ガードを固めて止まる姿を
井上が再現したのには少し驚きましたが、あれも優勢ながら膠着、という状況を生んだ
河野の闘志とタフネスを揺るがすための方策だったのかもしれません。

左の多様、対角線のコンビ、右アッパーの迎え撃ち、そして効果的だったボディ攻撃。
桁外れの破壊力、豪快さの代わりに、それぞれの攻撃をアクセントにし、より生かす形が見える。
それは最後、河野が好打の手ごたえの有無を構わず出ざるを得ない展開で決めた、
6回の残忍なまでに狙いすました左フックのカウンターが象徴していたように思います。


そして、ここ二試合の不調から脱した、的確かつ威力十二分な井上の攻撃にさらされながら、
十分に「らしさ」を出し切って敗れた前王者、河野公平の闘いぶりにも、圧倒されました。

3回や5回などは、ボディでダメージを受けていただろう、その上にさまざまな形で攻められ、
普通の選手だったらもう2、3回倒れてる、と思うほどの劣勢でした。
去年、ろっ骨を折って世界戦を延期していることもあり、ボディ攻撃で劣勢となった後は、
そのことが気になって、心配する気持ちになってしまいました。

しかし普通なら一線を越えたはずの劣勢でも、河野公平は河野公平のままでした、
あの井上でも、単に力押しでは崩しきれなかったであろう、と見える粘り強さに、何度驚嘆したかしれません。
最後はうまく引き寄せられ、強烈なカウンターの一撃に沈みましたが、
あの強烈な負け様もまた、河野公平ならではのものだと、妙な言い方ですが感心しました。


スーパーフライ級の新旧対決、昨年末に実現していれば二団体統一戦だった一戦は、
結果と内容で、見る者を圧倒し、納得させる見ごたえ十分の一戦となりました。
復調を示し、今後の飛躍を改めて期待させてくれた井上、
敗れたりといえども、その存在感を十全に示した河野、両者を称えたいと思います。


あと、最後については、レフェリーが無茶をしたな、とは誰もが思うことでしょうが、
河野陣営も、最初のダウンでタオル入れるなりしないと、とも思いました。
立ち上がった河野はぐらついているのみならず、一瞬、井上の方が見えていないような印象でした。
事故にでもなったら...なんて、今さら言わせないでもらいたいです。
今時、こんな無茶なことがまだあるのか、と、愕然となってしまいました。


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セミ以下も簡単に。
八重樫東はこれまた、前回、けっこう重篤な負傷を抱えたまま闘った、苦闘の印象を
格下とはいえ粘り強いサマートレック相手に、払拭した一戦でした。

相手との力量差もありましたが、丁寧に左を突き、足も使って動き、一発狙いでなく
適切なコンビネーションの選択も見え、良いタイミングも取れたので、
強振せずともヒットの分だけ効果もあり、良い回りの展開が続きました。

元々、こういう展開を作れるセンスは十分、持っていた選手のはずです。
しかしミニマム級の頃の、相対的に強打者の側だった頃の感覚のせいか、
どうも打ち合いを長くやる印象が否めませんでした。

友人が「久々に良い八重樫を見たよう気がする」と言っていましたが、同感でした。
次がたぶん指名試合か何かになり、その相手に同様の試合が出来るかどうかはわかりませんが、
せっかく掴んだ良い方向性は、是非に「次」でも見せてもらいたいものです。


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村田諒太はメキシコのブルーノ・サンドバルに3回KO勝ち。

パンチはないが、いかにもメキシカンなボクシングで、左フックやアッパーを
巧みに上下に散らしてくるサンドバル相手に、2回までは打たれっぱなし。
左リードに切れがなく、後続の右も、返しの左が来ないと相手に知れて、ダックで逃げられる。

相手にパンチがないと知るほど雑になる村田の悪癖を、またさんざん見せられるのか、
と少々げんなりしたところで、3回、右が二発決まってサンドバルがダウンしました。
当初、スリップの裁定でしたが、見るからに効いていて、なぜカウントしないのか不思議でしたが、
途中からカウントを取り始め、サンドバルはダメージ甚大、驚くほど効いていて、とてもじゃないが立てず。
そのままKOとなりました。

福地レフェリーは、正直、ジャッジとしては信用ならん、という気もしますが、
レフェリーとしては良い部類で、ことストップの判断に関しては、実に良い例を何度も見たことがあります。
それだけに、稀な全国生中継の試合で、こんな不細工なことになってしまったのは残念でした。

仮にスリップ、つまりヒットのダメージでなく倒れ、その際にキャンバスに頭を打ってダメージを負った、
という判断ならば、サンドバルに休憩を与えて試合を再開するのが筋でしょうが、
なぜか「やっぱりカウントします」ってやっちゃったんですからね。完全なミスと、その自己追認です。
かばい立てしようのない失態でした。


村田諒太に関しては、先日の記事に書いたこちらの見方を覆すような試合ではありませんでした。
世界のミドル級に挑む状態には、ちょっと遠いような気がしてなりません。
「番組」のナレーションから、知らない間にゴロフキンの名前が消えてなくなっていることにも、
なんだかいかにもタコにも、って感じがします。


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その他前座について...というか、今日の試合は、第一試合の原隆二、山本浩也戦以外、全部KOでした。

原は初回からボディ攻撃で攻め込むが、序盤からの攻めで相手を倒すまでの爆発力はなく、
山本も徐々に反撃に出る。しかし原が粘る山本を再度攻め、判定勝ち、という試合でした。

第二試合はオタ井上こと?サウスポーの井上浩樹が、岐阜のパンチャー宇佐美太志と対戦。
初の日本人対決で、あの宇佐美を選ぶとは強気な、どうなっても知らんぞ...なんて思っていたら
井上浩樹が見事な強さを見せました。韓国遠征試合などを経て、こちらが見てない間に筋金が入っていたのでしょうか。

井上、右リードがジャブ、フックと出る。2回、ボディを打ちに来た宇佐美に、鋭い左アッパーを決めて倒す。
3回、連打で倒し、右でよろめかせてストップ。終わってみれば圧勝でした。

「(宇佐美は)イケメンだったので、オタク代表として許せないなと」
「勝ったので明日はコミケに行きます」

コメントもなかなか個性的な井上でした。これは今後、要注目です。


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5月に敗れたビクトル・ロペスに再戦を挑んだ長身、松本亮が雪辱を果たしました。
しかし、松本は5月の敗戦試合よりはいいものの、その前までの不調ぶりはそのまま。
長身、リーチを生かしきれず、懐を深く使えず、動きに乏しく、好打しても動かず止まっているため
相手のお返し、リターンを高い頻度で受けてしまい、試合のペースを握れない、という印象。

実力をどう見るかはおいて、闘志、意欲を見せるロペスに好打され、右から左のヒットも生きない。
6回、それでも右をヒット、追撃の右も決まり、ロペスを打ち込んでストップ勝ちしましたが、
病気からの回復は見えても、そもそもそれ以前からの不調はそのまま残っていました。
今後が明るく見通せるとは到底言えない出來でした。


五輪銅メダル、清水聡はカルロ・デメシーリョを3回、右フックのカウンターで、文字通り「沈め」ました。

デビュー戦でもそうでしたが、一見滑らかではない動きなれど、相手を全部、自分の掌の上に乗せている印象。
初回、ジャブで間を埋め、左。2回、心持ちクラウチングで圧し、デメシーリョの手を引き出す。
3回、連打で攻め立て、デメシーリョが体を回して打つタイミングで、右拳をその位置に「置く」かのような
振り幅の小さいカウンター。デメシーリョはダメージ甚大、試合後もなかなか立てず、場内も静まっていました。

なんというか、このレベルの相手と試合させるのは危ない、事故になるかもしれん、と真面目に思います。
たぶん、見えている景色や、時間の流れが全然違うんだろうな、というか。

デビュー戦の韓国人選手もそうでしたが、清水は相手の動きを利用して、小さなパンチで最大の威力を生む、
非常に危険なカウンターのタイミングを持っています。
これから相手が強くなっていく上で、そのタイミングを追い求めるだけでは済まなくなるのでしょうが、
この恐ろしい狙いを持つカウンターパンチャーが、自らにどういう肉付けをして、上昇していくのか。
大いに楽しみです。


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手短に、と思って書いても、毎度のことですがけっこう長くなってしまいました。
長丁場で、引っ掛かることもありましたが、総じて熱戦、見どころ多い興行でした。

明日、ではなくもう今日ですが、内山高志の試合を見てきます。
当然、感想は年明けになりますが、また何か書くとして、それを皆様への、新年の挨拶に代えさせていただきます。
本年も拙い当ブログを、広いお心で読んでくださった皆様に感謝いたします。
来年もどうかよろしくお願いします。




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まだ足りない「段階」/天草で世界戦/対照的/ロシアの異様/レナードを踏襲?

2016-12-28 00:29:14 | 話題あれこれ



年末の世界戦ラッシュ、おいおい感想を書いていくことになりますが、
試合の数だけ公開練習があり、調印式があり計量があり...例年同じ事を思いますが
取材する方々も、大変な思いをしておられることでしょうね。

とりあえず、おのおのの試合については、予想というか思うところはざっと書いてきたので、
それ以外の話題を拾ってみました。


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ミドル級の世界戦線は、ゴロフキンがダニエル・ジェイコブスと対戦決定し、
残るWBO王者を巡っての争奪戦があれこれと話題になっています。

カネロ・アルバレスは、良いお金になる試合(チャベスJr.戦?)或いはWBO獲得を経て、
ミドル級への順応を果たし、同時にゴロフキンが多少なりとも疲弊し、下降するのを待ち、
その上で対戦に踏み切る、という目論見のようですね。
まあ、そうそう何もかも都合良く、話が回るはずもないでしょうが...。

で、村田諒太はというと、30日の試合を経て、現王者サンダースへの挑戦希望のようです。
率直に言うと、ミドル級での世界挑戦は、確かに最強ゴロフキン相手ではなくても難事で、
壮大な挑戦ではあるんでしょうが、そこに辿り着く段階には、まだ全然来ていないと見えます。

現状の村田は、元五輪金メダルの肩書きはあれど、中堅やベテランに快勝出来る、という
位置でしかなく、ここから世界を目指すために、例えばヒトロフ、ファルカンといった五輪組や、
或いは世界上位の誰かひとりとでも対戦し、勝つくらいのものを見せないと、
挑戦者として選ばれるには、いかにも不足が多い、と言わざるを得ません。
まあ、サンダースが「格下ながら五輪金」の選手を選ぶ、という構図ならあり得るのでしょうが。

30日の相手の実力は見てみないと不明ですが、快勝するにしてもよほどの水際立った内容でないと、
世界どうという感じではないように思います。
世界への「前段階」ではある、そこに来てはいる、それだけでも大したものではあるんですが...。


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熊本の天草で、WBOミニマム級暫定王座決定戦が決まったとのこと。
福原辰弥がメキシコのモイセス・カジェロスと対戦だそうです。

これ、真正ジムの山中竜也が出る、という話だったはずなんですが、ランキングで言えば
福原が2位、山中は4位で、今回はそういう順番?の通りになった、ということなんでしょう。
福原は井上拓真戦で見たのみですが、しっかり鍛えられていて、粘り強い闘いぶりでした。
暫定というのは残念ながら、震災で苦しんだ熊本に王者誕生なるか、期待したいですね。
しかし試合を見る手段があるのかどうなのか、非常に暗い予感がします...。


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辰吉寿以輝のA級昇格初戦、相手は31戦のキャリアがある石橋俊とのこと。

デビューから、実力以上の注目を集め、キャリア構築もスター用のそれを用意さえた辰吉と、
強敵相手に負けも多いが、歴戦のベテランである石橋。
正直、意味のわからん外国人選手としばらく闘うのだろうと思っていたので、驚きのマッチメイクでした。

試合のレベルが高いものになるかはわかりませんが、当日の会場が、
なかなか熱量の高い盛り上がりを見せるのではないか、という想像は成り立つと思います。
今回の試合が、厳しいマッチメイク、と言えるかどうかは微妙なれど、
これからも安易な道には行かず、じっくりと実力をつけていってもらいたいですね。


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いやもう、この人、いったい何回目ですかね、こんな話
実力自体はある選手だと思うので、余計に残念ですが。

しかし、統括団体がやっとこさ、ドーピング検査に厳しい体勢を整えたら、
途端にあれこれ、出るわ出るわ。ええ加減にせえよおのれらは、という感じですね。

何もロシアに限った話でもないんでしょうが、他でもこんな記事があります。
以前BSで見た、ドイツ人ジャーナリストによる告発番組なども見ると、
記事にあるように「感覚が違う」としか言えないですね。
そして、ポベトキンもまた、その範疇に入る人なのだ、ということなんでしょう。


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メイウェザーの再起については、本人は否定一辺倒なれど、
パッキャオとの再戦がどうの、という話は途切れることなく話題になっています。
そこへ加えて今度はゴロフキン戦、という話というか「話題」も。

現在、世界的に見ても若干、停滞気味なボクシング界ですが、
その要因として一番大きいのが、記事中にもあるパッキャオ戦の内容でしょうね。
その組み合わせをもう一度、機運が高まれば、みたいな話には、首をかしげるばかりですが、
ゴロフキン戦となると、話の筋としては如何か、と思うものの、やはり気を引かれてしまいます。

これまた記事中にあるとおり、ハグラーに挑んだレナードの例を踏襲するか、というと、
レナードのナルシズム、エゴイズムは、メイウェザーのそれとはまた種類の違うものだと思います。
レナードは名誉のために、無謀と見える挑戦をするナルシストでしたが、
メイウェザーは何よりもまず自己保身が先でしょうからね。
あるとしたらゴロフキンじゃなくパッキャオなんでしょうね。

あちらでは、引退後もあまりに生活が派手なので、あれだけ稼いでてもすぐ破産するで、
なんて囁かれているそうで、あまりにもありがちな話に嫌気が差しますが、
そうなれば早晩...という感じなんでしょう。

その才能は驚異的なものでしたし、それは認めざるを得ないんですが、
やはり現役時代同様、いろいろと「如何なものか」と思わされます。
その一点においては、過去に類例のない存在です、このお方は。


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熱戦増加傾向にあり、という印象 今頃全日本新人王戦雑感

2016-12-27 22:36:51 | 新人王戦


ながらく更新が滞ってしまいました。
年末連続観戦予定のためもあり、ちょいと忙しかったのもありますが、
例えば全日本新人王だとか、いろいろ気になる試合とか、CSやネット動画で見る、
そのくらいの暇は充分あったんですが、何となくキーボードに手が行かず。
ひょっとしたらこれ「長谷川ロス」なのかなあ、とぼんやり思ったりもしました。

しかし、ええ歳こいてそんなことばかりも言っていられず、言うてる間に
年末上京観戦ツアーも目の前に迫ってきました。
とりあえずは一番最近見た全日本新人王についての感想をざっと書いて、
あとは年末のタイトルマッチラッシュについて、おいおいやっていきます。

年末観戦は30日有明、31日大田区に行きます。
京都での小國以載世界戦だけは、後ろ髪引かれる思いではあるのですが...。


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ということで今頃ですが全日本新人王決定戦。こちらに詳しい記事が出てます。
簡単に、目についたところを。


ミニマム級は、身体のパワーでは富岡達也でしたが、西の富田大樹が3回から足を使い
ジャブを増やした切り替えが奏功した感じでした。


ライトフライ級は試合内容よりも、G+実況解説の無茶苦茶さが印象的。
目の前でやってる試合で、何が起きているのか見えてないんか...と。
蟹江ジムの戸谷彰宏、パワーに欠けるがインファイトで正確なヒットを重ね勝利。
このジムはちょいちょい、新人王決勝に好選手を出してきます。指導者が良いんでしょうね。


フライ級の注目対決は、終わってみればボクシングへの習熟度の違いが出た、ということか。
まだ18歳だという、サウスポー中谷潤人の、若さに似合わず練れた感じと、
当て勘とパワーに頼った八方破れの矢吹正道の攻防は、ラフだけどスリル溢れるものでした。


Sフライはサウスポー福永亮次の左ストレートが当たる位置に、
藤本耕太が自分から寄っていく繰り返しで、見ていて奇異にさえ思いました。
対サウスポー対策を誤った選手と陣営を見たことは数あれど、これほど酷いのは珍しい。
普通に見て、そういう印象でした。私にはわからない意図があったのかもしれませんが。
藤本の身体の切れやスピードを見ると、充分勝てる相手だったと思いましたが。


バンタムは西日本ではMVPだった城後響が、正確なヒットを取るも
パワーと手数で押す新島聖人に二度ダウンされ、4回にストップ負けでした。
2回の攻防などは、再三好機と危機が入れ替わるスリリングな展開。
城後は再三あった好機に、逆に好打を浴びてそれを手放したのが痛かったです。
詰めの甘さ、パワー不足も僅かに感じました。


Sバンタムは当てる巧さ、外す巧さでは上だったと見えた松本竜也を、
サウスポーの岡本文太が際どく攻略。若干攻勢で上回ったか。
松本は受け身になりすぎた時間があり、それが響いた。


フェザーは専門誌などでも取り上げられていた注目の木村吉光が
スピード豊かに攻め込むも、2回に真っ正面から行くところに澤井剛志の左でダウン。
それ以外の回は速さで上回り、サイドに出て、ボディも攻めて押さえたが、
時々正面から行ってしまう場面もあり。
フライ級の矢吹正道同様、素質はあるがまだこなれていない。良い素材ではありそう。


Sフェザー級はサウスポー対決、ダウン応酬だったが、より深いダメージを与えた
粟田祐之が、最終回に上田隆司をリングエプロンに叩き出す派手なシーンもあり。
体格に恵まれた両者だが、パワーの差で粟田。


ライト級、スイッチヒッター?の石井龍輝が、小田翔夢の強打に対し、
当ててはクリンチ、という展開。3回、石井のヒットが4発あり、
そこで小田がマウスピースを落とすと、石井がレフェリーにアピール。
しかし誰も試合を止めていないので、小田が右から連打、ダウンを奪う。
これで心身ともに動揺した?石井に、小田が右アッパーを出鼻に叩いて4回KO。

この3回のシーンは本当に驚いたし、色々考えさせられました。
石井にしてみたら、アマチュア時代の感覚そのままの「スポーツマンシップ」だったのでしょうが、
私のような古い人間には「そこ、もう一発打つチャンスやのに」「誰も試合止めてないのに、
何やっとんの」としか映らないものでした。
なんというか、時代は変わってるんやなぁ、というか...。
これも、いつ頃ボクシングを見始めて、どんな試合を見聞きしてきているか、という部分で
だいぶ受け止め方が違う話なのかもしれませんが。



Sライト級は吉開右京がシャープな右を連発し、最後は左フックで大野俊人を3回KO。
大野は驚異的な逆転劇で勝ち上がってきた猛ファイターでしたが、
全日本の決勝では、逆転勝利はかないませんでした。
吉開はこのクラスにおいては、素晴らしい切れ味を持つ好選手でした。今後に期待です。


ウェルターとミドルは、それまでのクラスと比べると、若干スピードや切れが落ちる。
豊島亮太とあぐーマサルは、打ち合いの中でより相手を見て闘えた方が勝った、という印象でした。


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全日本新人王戦は、力を入れて見るきっかけひとつで、見始めると止まらない、
予選の段階から誰それを追いかけて、なんて思ってしまうと一巻の終わり、という感じですが、
ここ数年、全体的に好試合、熱戦、劇的な展開の試合が多くなっているような気がします。
今回も例年通りの長丁場ながら、生中継を見ていてもあっという間に時が過ぎてしまいました。


反面、階級にもよりますが、この試合の勝者が日本ランキング下位に入る、というのは
如何なものなのかな、と思うのも事実です。

もう数十年前、協会からの要請をコミッションが受け容れて、
優勝者を自動的に日本10位(今は15位)にする、という申し合わせが出来たのだそうです。
しかし、JBCルールに明文化されているでもなく、当時とは色々、事情も出場資格も違うのだから、
何も全階級、判で押したようにランカーにすることもないだろう、と思いますね。


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幸福な引退に祝福を 長谷川穂積引退表明

2016-12-10 14:31:49 | 長谷川穂積


長谷川穂積引退表明、正直言うと驚きでした。
過去の例からいっても、たぶんもう一試合、防衛戦を闘うだろうと思い込んでいました。

もちろん、このまま引退するのが一番良い、それが出来ればなぁ、と思ってはいました。
しかし、何かとあれこれ難しい世界でもあり、そうはならないのだろうな、とも。

今回、現実に王者のままの引退が実現したことは、事情はどうあれ、長谷川ファンとしては嬉しいことです。
9月の勝利は、単にそれ自体が望外の喜びでしたが、進退がこうして決まった今、
思い返せば、あれ以上幸福なフィナーレはなかったのだ、と思えます。
終わりよければ全てよし、といいますが、どちらかというと「さらによし」とでも言えましょうか。


過去に、長谷川に匹敵する業績を残し、それを越える広範な支持を得たボクサーの中にも、
いずれ来る「ボクサーでなくなる」時を、不幸な形で迎え、過ごしている者もいます。
それを思えば、長谷川穂積がこのような引退をかなえたことは、僥倖とさえ言えるのではないでしょうか。


彼への思いは、尊敬や感謝と共に、ときに分不相応な「評」も含め、
長年に渡りこのブログで書き綴ってきました。
この10数年、ボクシングファンとして、良くも悪くも様々なことを思いましたが、
長谷川穂積の存在そのものが、時に諦観に覆われてしまうファンとしての思いを、
いつも救ってくれていたように思います。

ボクシング「業界」の卑小さ、自業自得により、日本のボクシングそのものが
数多くのタイトルホルダーを抱える反面、確実に、日々やせ細っている現実の前に、
一介のファンの思うことなど、本当に無力です。
しかし、かつてその状況の中、ボクシングそのものの価値を、凄さを、
自らの闘いぶりで端的に表現し、ボクシングそのものを護る砦のように存在した
天才サウスポー、長谷川穂積の記憶は、永遠に消えることはありません。

そしてこれからも、かつての長谷川のように存在しうるボクサーの姿を、
私は、変わることなく追い続けるのだろうと思います。


今はただ、長谷川穂積の幸福な引退が実現したことを祝福したい。
彼への感謝と共に、そして変わらぬ尊敬の気持ちを込めて。それが率直な気持ちです。
長い間お疲れ様でした。数々の素晴らしい試合をありがとうございました。


====================================

今朝放送の「せやねん」動画紹介しておきます。
数日で消しますので、お早めに。

その1。


その2。


その3。
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強打を「当て」にせず、生かして闘った 尾川堅一「セカンド・レグ」を僅差で制す

2016-12-05 07:22:35 | 関東ボクシング




ということで、一昨日はけっこう久しぶりの後楽園ホールにて観戦してきました。
昨年も観戦した、尾川堅一vs内藤律樹の再戦でした。

前回の「ファースト・レグ」の結果を受け、真の決着がつく「セカンド・レグ」と言うべき一戦。
強打の尾川、技巧の内藤、とカラーがはっきりした両者の対戦は、
その構図は変わらずとも、前回とは少し違った展開になりました。



初回、尾川がいきなり仕掛ける。内藤少し下がり気味、ロープに近い位置取りを強いられる。
しかし尾川、焦って出るのではなく、よく見ている印象。いつもより力みが取れている。
内藤徐々にジャブも出すが、やや立ち後れの感。

尾川右ボディ、前回はこのあと上に右が来た。内藤は飛び退く感じでかわす。尾川の回。

2回、尾川頭を動かしながら右、左とヒット。内藤は左出すが浅い。尾川。

尾川は前にのめらず、冷静に当てている。強振せず、当てていく感じ。
パンチのある選手がこういう風に落ち着いて来ると、相手としたら辛いところ。

3回、内藤右ジャブから。4発ほど決まる。尾川はアッパーからリードも、内藤の左ヒット。内藤。

4回、詰めた距離の攻防。尾川、肩当てて出る。ボディ、ジャブの応酬。
内藤のアッパーが入るが、直後尾川の右。内藤ぐらつく。両者効いていないとアピール。
尾川は追撃すべきところだったと見えたが。まさか自分も効いていた?尾川の回。

5回、スリルある攻防。尾川ボディから攻め、内藤は果敢に左を打ち返す。
内藤ヒットは取ったが、同時にフォームが乱れ始める。内藤。

6回、近い距離で打ち合い。尾川左、内藤右フック、左もヒット。軽めだがバッティングが増える。
両者カット、傷は大きくはない模様。やや内藤。

7回、内藤が右フック合わせ、攻勢。左上下、ジャブ、尾川を後退させる。
尾川右返す。内藤左ヒットもやや浅い。もう少し強いヒットで尾川を止めたいが。内藤。


8回、これまでと違い、体力の無駄遣いをしていない尾川が、左右のボディを立て続けにヒット。
内藤も返すが、今度は右ダイレクトを上に。引き寄せてカウンター狙いも。
スリップダウンを挟んでまた右ヒット。攻勢、ヒットとも尾川。

ここまで流れは五分ながら、終盤乱れ、落ちるとしたら尾川の方か、と見ていたが、
尾川がそんなこちらの先入観を覆した回。

9回、尾川、力まず7~8割の感じで右をヒット。強打者ゆえ、これで威力も充分。
的中率もぐっと上がる。内藤左を返し、相打ち気味のヒットもあるが、
本来まさっていなければならない、効率の良さでも尾川に劣っている。尾川。

10回、内藤は厳しい局面、尾川をぎりぎりまで引き寄せて左狙いという風。
しかし尾川の方が良いペース、フォームも崩れていない。
内藤、右フックヒット。尾川ロープに押し込む。内藤なかなか回れない。
尾川ボディを攻める、内藤ブロックするが、反撃ならず。難しいが攻勢で尾川?

判定は三者とも96-94。私はドローか尾川、という感じでした。


終始、非常に内容の濃い攻防で、あっという間の10ラウンズでした。
採点については、自分の見方が絶対とは言えませんが、内藤の勝ちはない、あってもドローまでという印象。

前回のそれとはまた違った趣の展開でしたが、それは尾川堅一の闘いぶりの違いだった、といえます。
相手の出方を見もせず、とにかく手応え欲しい、倒したい、という風だったこれまでの試合ぶりとは違って、
持ち前のスピードと強打を振りかざすのでなく、それを「担保」に使って、試合を回していく、という風でした。

上記したとおり、強打でダメージを与えようとするばかりでなく、力まず当てて、ペースを掴んで、その上で攻める。
「体力の浪費」「低燃費」だった過去と違い、然るべきところに、適切にエネルギーを配した闘いぶりで、
故に終盤になってもフォームの乱れが最小限に抑えられていて、終始続いた緊迫の攻防を、堂々と闘い抜きました。

過去の試合ぶり、前回の試合、その後の防衛戦二試合と比べ、成長の跡がはっきりと見えました。
正直言って予想外で、感心させられました。
松下拳斗(玉越強平)戦の後半に、その兆しは僅かにあったかな、と今になって思いもしますが。


対する前王者、内藤律樹は、これまでと比べて落ちているということは全くなかったですが、
目に見えて成長、変化が見えた尾川の前に、僅差ながら敗れました。
要所で見せたジャブ、左カウンターの鋭さは健在で、インファイトに巻き込まれたという風でもなく、
悪い展開というでもなかったですが、それでも敗れた。

好ファイトでしたし、こちらも堂々たる試合ぶりだったとは思います。
しかし、それ故に、ことに重い一敗かな、とも感じます。
かつて日本上位の好カードを悉く勝ち抜き、日本のトップボクサーとしての理想像を体現した彼だからこそ、
それでもなお、今後への期待は消えてはいませんが...。


それにしても、この一試合はやはり、日本王座というひとつのカテゴリーにおいて、
上位の実力者同士が闘うこその価値を、改めて教えてくれた、そんな試合だったように思います。

先月、神戸と大阪で9つの「タイトルマッチ」を見ましたが、当然ながらその中で、
この試合のグレードに達したものは、ひとつたりとてありませんでした。
同じ次元で比較しうるのはたったひとつ、山本隆寛vsマーク・ジョン・ヤップ戦でしょうが、
技術レベルの話を加えると、やはり...となってしまいます。

ありきたりですが、やはり一流の「本物」は違うのだ、ということでしょう。
尾川堅一と内藤律樹、両者の闘いぶりに拍手します。
実に濃密な、良い試合を見せてもらいました。素晴らしかったです。



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この日の興行は、前座から壮絶な打ち合いや、アーリーKOが続出しました。

昨年の全日本新人王(スーパーフライ級)、強打の若手、梶颯は、えらく痩身のタイ人を初回KO。
なんというか、こんなの早く倒しても自慢にならん、けど長引かせたらもっと無意味、という
いかにもありがちな相手だったのが残念でした。マッチメイクが大変なんだろうなぁ、と推察はしますが。

これまた昨年の全日本新人王(ライトフライ級)、倉敷守安のユーリ阿久井政悟は、
一時世界ランクにも入っていた帝拳のサウスポー、大野兼資と対戦。
阿久井のセンスは素晴らしいが、同時にちょっと物足りない試合ぶりが記憶にあったので、
大丈夫かな、と思っていたら、いきなり鋭く強烈な右クロス一発で大野をダウン。
追撃も正確で、ワンサイドに打ち込む。
葛西裕一がタオル投げてリングに飛び込んできて、早々に試合が終わりました。

正直、これまたビックリの展開と結果でした。50キロ契約だったことも好影響だったのか、
阿久井は伸び伸びと動けていて、パンチの切れと正確さが存分に出た試合でした。
ひょっとしたら、今後は階級上げた方がいいのかもしれませんね。今後が楽しみになってきました。



他の試合も早く終わり、セミ終了がだいたい19時15分くらいだったか。
休憩が入り、当初15分とか言ってましたが、尾川、内藤両陣営ともさすがに予想外の事態だったか、
なかなか準備が出来ないようで、リング上では口ヒゲも凜々しい須藤リングアナが、場内にいる王者たちを紹介したり
(ロマゴンとか、井上兄弟とか、山中とか)、山中慎介カレンダーの宣伝をしたりと苦心惨憺、
色々やってはりましたが、ついにネタも尽き、半ば立ち往生。
しまいに歌でも歌い出すかな、と思っていたら、やっと両者入場の運びになりました。
リングアナというのも大変な仕事やなぁ、と、適当なことを今更ながらに思った次第でありました、ハイ。




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