最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

予防接種によるB型肝炎発症、潜伏期間が長いのだから救済期間20年を過ぎても助けてやれ

2021-05-31 10:30:09 | 日記
令和1(受)1287  損害賠償請求事件
令和3年4月26日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  福岡高等裁判所

 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しHBe抗原陽性慢性肝炎の発症,鎮静化の後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害につき,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

時事通信の報道です
集団予防接種が原因のB型肝炎を20年以上前に発症し、その後再発した患者2人が、国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が26日、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)であった。三浦裁判長は損害賠償請求権が20年で消滅する「除斥期間」を理由に患者側敗訴とした二審福岡高裁判決を破棄、除斥期間の起算点を再発時と判断し、賠償額算定のため審理を高裁に差し戻した。

産経新聞の報道です。
 第2小法廷は、原告2人の再発時の症状は、最初の発症時よりも進行した特異な病態だと判断。各症状の損害は「質的に異なる」とし、除斥期間の起算点は再発時とすべきだと判断した。
 4裁判官全員一致の結論。三浦裁判官は補足意見で「迅速かつ全体的な解決を図るため、救済に当たる国の責務が適切に果たされることを期待する」と述べた。


朝日新聞の報道です。
一審・福岡地裁は除斥期間の起算点を再発時とし、原告の請求通り国に計2675万円の賠償を命じたが、高裁は医療水準の向上をふまえると「再発時の肝炎がより重いとはいえない」と判断。起算点は最初の発症時で請求権がないとした国の主張を認めたため、原告が上告していた。
 乳幼児期の予防接種の注射器使い回しでB型肝炎になった患者をめぐっては、最高裁が06年に国の責任を認め、11年に国と患者が合意して救済法が成立。慢性肝炎については、発症から提訴までが20年未満の人に1250万円、20年を過ぎた人には150万~300万円が払われることになった。


訴えの内容です。
乳幼児期に集団ツベルクリン反応検査又は集団予防接種を受けたことによりB型肝炎ウイルスに感染して成人後にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,鎮静化をみたものの,その後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものである。本件は,上告人らが,被上告人に対し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことにより精神的・経済的損害等を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。

事実認定です。
(2) 上告人らのB型肝炎の発症状況
ア 上告人Aは,昭和33年4月生まれで,昭和34年9月までに受けた集団予防接種等によってHBVに感染し,昭和62年12月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成19年12月頃,ALT値が再び高値を示し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した。
イ 上告人Bは,昭和27年9月生まれで,昭和34年9月までに受けた集団予防接種等によってHBVに感染し,平成3年1月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成16年3月頃以降,ALT値が再び高値を示し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した


予防接種を受けてから30年近く経過してから発症したようです。このB型肝炎は、この記述の前に説明がありますが、随分長い時間を過ぎてから症状が出るようです。あの当時というか昭和50年代まで、注射針を変えずにうち回しをよくやってました。今から考えると酷いもんです。

(3) 本件訴訟の提起上告人Aは平成20年7月30日に,上告人Bは平成24年2月29日に,本件訴訟を提起した。

たぶん何が原因で感染したのか分からなかったのでしょう。

原審は
上告人Aにつき昭和62年12月から,上告人Bにつき平成3年1月からそれぞれ除斥期間を計算するのが相当である。

要するに時効だから仕方ないでしょう、諦めなさいという趣旨です。

最高裁は
(1) 民法724条後段所定の除斥期間の起算点は,「不法行為の時」と規定されており,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし,身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病による損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成13年(オ)第1194号,第1196号,同年(受)第1172号,第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁,最高裁平成16年(受)第672号,第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁参照)。
(2)
上告人Aは,昭和62年12月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成19年12月頃,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものであり,
上告人Bは,平成3年1月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成16年3月頃以降,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものである。

以上によれば,上告人らがHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるというべきである。


潜伏期間が長い病気ですから、実際に被害をうけたかどうか分かるまで相当時間がかかります。そこは救ってやれよという判断でした。

裁判官全員一致の意見でしたが、裁判官三浦守の補足意見
集団予防接種等の際の注射器の連続使用により,多数の者にHBVの感染被害が生じたことについては,その感染被害の迅速かつ全体的な解決を図るため,特措法の定める枠組みに従って,特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(以下「給付金」という。)等を支給する措置が講じられている。
そして,特措法においては,特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じて給付金の額が定められているところ,慢性B型肝炎にり患した者については,当該慢性B型肝炎を発症した時から20年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者(6条1項7号及び8号)とそれを除く者(同項6号)とが区分されている。これは,慢性B型肝炎による損害についての除斥期間を前提とするものと理解される


○特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法
6条1項7号
七 慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、現に当該慢性B型肝炎にり患しているもの又は現に当該慢性B型肝炎にり患していないが、当該慢性B型肝炎の治療を受けたことのあるもの(これらの者のうち、第一号から第五号までに掲げる者を除く。) 三百万円
8号
八 慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者(第一号から第五号まで及び前号に掲げる者を除く。) 百五十万円
それを除く者(同項6号)
六 慢性B型肝炎にり患した者(前各号、次号及び第八号に掲げる者を除く。) 千二百五十万円

確かに区分されてますね。

HBe抗原陽性慢性肝炎の発症後のセロコンバージョンにより非活動性キャリアとなり,その後,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した場合,法廷意見が述べるとおり,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が除斥期間の起算点となるから,その時から20年を経過する前にその損害賠償請求に係る訴えの提起をした者は,特措法6条1項6号に掲げる者に当たることになろう。


裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

この案件に関しては、救済法もできましたし、事件としては一件落着です。健康被害は一生涯もののようですが。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿