非国民通信

ノーモア・コイズミ

意識するのは良いことだと思うよ

2008-11-04 23:10:54 | ニュース

橋下知事、高校生に持論 「僕らは最悪の教育受けた」「国旗・国歌意識して」(産経新聞)

 国歌斉唱の後にあいさつに立った橋下知事は「高校生の諸君にメッセージを発したい」と切り出し、「僕らの世代は最悪の教育を受けてきた。何でも生徒の自由にした結果、生徒と教師が同じ目線で話すようになってきた。バカを言っちゃいけない」と持論を展開。

 さらに「国歌斉唱時は(歌声が小さかったので)残念だった。社会を意識するためには国旗や国歌を意識しなければならない」と呼びかけた。その上で「いろいろな意見はあるが、それは大人になって議論すればいい」と述べた。

 国旗・国歌への発言をめぐり、橋下知事は報道陣の取材に「(この問題は)教育委員会にきちんと議論してもらうべきだと思うが、今、国旗と国歌がある以上、きちんと(生徒には)認識してもらわないと。それは教育として本質的な部分だ」と説明した。

 近頃は妄言が多すぎてどれから取り扱ったらいいものか迷いますが、今夜は橋下のこの発言を取り上げます。曰く「僕らの世代は最悪の教育を受けてきた~」だとか。「僕ら」って具体的にはどこを指しているのでしょうね? 橋下が高校に入った頃、バブル経済に突入する直前ぐらいを指すのでしょうか? その時代の教育を受けて育った人がどういう政治家になったかを見れば、まぁ最悪と言えないこともないのでしょうけれど。

 もし仮に橋下世代の教育が「最悪」であるなら、今の高校生世代は少なくとも最悪ではない、いくぶん上向いた世代ということになるはずですが、その辺のあやふやさは橋下氏には気にならないのでしょうか? そもそも60年代生まれの知事が90年代生まれの高校生に向かって「僕らの世代」と語りかけたわけですが、親と子ほどに年の離れた別の世代に向かって「僕らの世代」とは奇妙な表現です。「僕ら大阪府民は」と呼びかけるなら当たり前の表現ですが、今回の発言はそうではなありません。自分が向き合う相手に対して「僕ら」と語りかけつつも、そこには「僕」一人しか存在しない、明確な断絶があります。

 それはさておきこちらであぐりこら氏も指摘するように、国旗及び国歌が公式に定められたのは1999年です。それ以前まで国旗/国歌は「何となく」扱われてきたものであり、言わば慣習のようなものでした。それが普及しているから、馴染んでいるからという理由で国旗/国歌として通用してきたものであり、上から押しつけるものではなく「元からそこにあるもの」としての国旗/国歌だったわけです。ゆえにわざわざ教える必要があるものとも見なされては来なかったのであり、否定的な意味で取り沙汰されることも滅多にありませんでした。

 ところが、「強制されるもの」になると話は変わってくるわけで、そこには「強制に従うかどうか」という新たな判断が求められることになります。対象が何であろうと、「上から強制されたものを受け容れるか」「強制である以上、それに抗議するか」、この点が新たな問題として浮上することになったのです。もちろん日の丸、君が代を戦前の清算されざる遺物として受け容れがたく感じる人は以前からいたかも知れませんが、それはあくまで少数派に過ぎず、ただ惰性で受け継がれてきた国旗/国歌への反発は弱かったわけです。しかるに「強制」を伴うようになったことで新たな意味を持つようになった、それが今ではないでしょうか。国旗/国歌が意識されるようになった結果、意識されるよう強いた結果がこうなのです。

 かつて障子を突き破る傍ら「君が代って歌は嫌いなんだ、個人的には。歌詞だってあれは一種の滅私奉公みたいな内容だ。新しい国歌を作ったらいいじゃないか。好きな方、歌いやいいんだよ。」と公言した人もいました。彼は国歌が嫌いだそうです。しかし、彼は都民の血税を使って人を派遣し、国歌が歌われているかどうかを監視しています。彼は国歌を嫌っていますが、「強制」に従うかどうか、ここは厳しく問いたいようです。では橋下は?

 ちなみに「生徒と教師が同じ目線で話すようになってきた。バカを言っちゃいけない」「いろいろな意見はあるが、それは大人になって議論すればいい」だそうです。要するに、お前ら(生徒)が俺と同じ目線に立つことなど許されないのだ、大人になってからモノを言え(=子供である今は黙って従え)と、そういう宣言ですね。でもどうなのでしょうか、若い人ほど自民党支持率が高いように、大阪でも若い人ほど橋下の支持率が高いなら、この高校生の中にも橋下支持は強いのかも知れません。しかるに橋下を支持できる人って、生徒である自分の立場ではなく、管理する側、支配する側の立場=目線で物事を考えがちな人が多いような気がします。労働者ではなく経営者の目線で考える人が多いからこそ、財界よりの政党が政権の座にいられる、住民ではなく為政者の目線で考える人が多いからこそ、府民の生活より自治体財政を優先する政治家が当選する、そういうものでしょう? いつもながらではありますが、橋下発言は至る所で矛盾が満ちあふれています。

 

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10 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2008-11-05 00:05:15
何と申しますか…権威主義と幼稚性がごった煮になった印象を受けますね。あるいは体育会系体質の欠点のみを受け継いでいるか。「だってボクは偉いんだから」と今にも言いそうで、若い人間が言うのもなんですが「大人になりなさいよ」、と。

あと、「強制されるから反発を買う」ということにそろそろ気付いたほうがいいのではないかな、とも思うのですが。それとも「従わせる」快感は目的達成そのものよりも麻薬的で甘美なのでしょうか。

最後に今更ですが、何で彼は受けてるんでしょうね…?
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自己責任と支配感 (さら)
2008-11-05 00:18:31
先日、高校生との対談で助成金削減に関する要望を訴えた事に対し、盛んに自己責任(そもそも財政問題から削減に至ったのに、未成年の高校生になんの責任があるのかも分からないのですが)を盾に突き放し、挙句は日本から出て行けという排除思想満点の知事ですが、特定思想(行動態様)の押し付けに関しては180度方向転換して思考停止の絶対服従を求めているようですね。

そもそも自由な時代に自由な教育を受けて、君が代を歌えなかった?事を盛んに恨んでいるようですが、周りがどうだろうと自由な生徒たる橋下はKYだろうと何だろうと自由に歌えばよかった訳ですし、歌わなかった結果は橋下の自己責任だと思うのですが、こういうときは日教組の責任なんでしょう。

この歌詞とメロディーが国歌ですよ~、このデザインが国旗ですよ~という事を定めただけで、扱いについて何の規制も無いわけですが、権力的地位と特定思想のバイアスが両立すると途端に強制力をもって目に付く全ての者に自分の思っている行動をさせようとするわけです。(といっても行動規範で自衛隊での国旗の扱いなんかを基準にするならば、学校などでの適当な国旗の扱い方などは不敬極まりなかったりするんですけどね)これで教育行政が委員会を介さない知事部局の直轄行政分野になったらどうなる事かですよ。

今回も意識しろとは言っているものの、結局大きい声で歌っていない事に不満を表しているのであり、意識した結果が歌わない行為であっても、おそらく支配する側とされる側が同じ目線でなんてとんでも無く、ものを言う事を許される大人になる前に不届きにも行動した事を非難するに留まるんでしょう。

知事の言動に中身が無かったり矛盾だらけというのは、昨日今日始まった事ではないわけですが、その強権的な志向がどうにも気持ち悪くて仕方がありません。敵に対するバッシングを支持基盤にしているわけですから、政策そのものは全く無いに等しい状態です。あれほど出せと強弁していた学力テスト結果も、出たら本人も支持者も満足して放置ですから。出たんだから他人には執拗に求めているビジョンなり何なりをさっさと表明すればいいのに、あとは野となれ山となれ状態ですし。

橋下支持者の好きな言葉に「プロ市民」というのがあって、敵意識を共有したとき誰に対しても深読みしまくりで使っているようですが、支配する側に薄っぺらい共感を持って、進んで支配される体制に力を貸す市民は「プロ奴隷」なのかもしれません。

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Unknown (Bill McCreary)
2008-11-05 00:58:20
>国歌斉唱時は(歌声が小さかったので)残念だった。

そんなことあんたから言われたくねえというレベルの反応しか私にはできませんが、けっきょくこんな低次元の説教を高校生にしているようじゃどうにもなりませんね。馬鹿な男です。それにしても、私は大阪府民ではないので一票の行使すらできませんが、さすがに橋下のひどさを少しは認識してほしいものです。

それにしても、この記事を配信した産経新聞は、やっぱりこの発言を支持しているのでしょうね。そういえば、今年の春、君が代の件について大袈裟に騒いで(しかも、例の大江・岩波訴訟の判決の日にぶつけて-ちょうどこのとき日本中の右翼が大阪に集まっていました)自治体や学校を脅すという悪質な記事をのせていますね。http://d.hatena.ne.jp/pr3/20080405/1207401534#c

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Unknown (いるか缶)
2008-11-05 01:05:22
>お前ら(生徒)が俺と同じ目線に立つことなど許されないのだ、大人になってからモノを言え(=子供である今は黙って従え)

でも、大人になったらちゃんとモノ言えるのかというと大抵そんなことはないんですよね。大阪府の職員がいい例でしょうか。
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こんな考え方、支持したって自分が利用されてしまうだけなのに。 (GX)
2008-11-05 15:50:25
 話から察するに、知事は「教育を受けた側」ですよね。支配者側が言うならまだしも、支配される側が「自由にした結果・・・」と語るのを私は滑稽に見えます。まともな民主主義国家なら、こんなこと言うトップは普通、国民から猛反発されますよ。しかし、「する側に都合のいいことをされる側が喜んで受け入れてる」という滑稽な文化のある日本では納得の発言です。

 こんなこと言われたら、私なら「なにー!ふざけんじゃねー!」と思うのですがね。というか、高校生当時から言われるたびに思ってました。ところが、この発言をなぜか支配される側は嬉々として受け入れるんですよね・・・。まあ、思っても口に出さないので、私も実質同じかもしれませんが・・・。(苦笑)その点、助成金を減らされることに抗議した高校生の皆さんは私より立派だと思いますが、毎度毎度どこから湧いてくるのか、知事の支持者たちがこの高校生たちを「左翼」だの「馬鹿なゆとり」だの「共産党の入れ知恵があった」だの頭が悪い(少なくとも私にはそうとしか見えない。)ののしりをしますから、「上に声を上げる」というのはとても困難であるとわかります。

 知事の独裁者的発想の危うさも問題ですが、それを当たり前として受け入れる社会にもまた危うさを感じます。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-05 23:19:12
>ノエルザブレイヴさん

 その昔、聖書の中で神と悪魔が殺した数に触れたことがあります。基本的に人を罰し、殺すのは神の役目なんですよね。人を痛めつけることが「正義の裁き」だと思えるようになると、そこに信仰のようなものが生まれるのかも知れません。橋下人気ってのは、そういう側面もあるのではないかと思います。
http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/c0aa131da8d9e2712d83e5f5daac035f

>さらさん

 君が代が嫌いと言いつつそれを強要する誰かさんと同じですよね。「強制」そのものに目的がある。たぶん橋下の学生時代に「自由に」国歌が歌われただけでは足りず、あくまで「上からの命令に従わせる」ことを伴わないと満足できなかったのでしょうか。学力テストの公開だって、要は「自分の言うことに従わせる」ことが目的になっていましたし。

>Bill McCrearyさん

 何かと一貫性に乏しい産経新聞ではありますが、概ね産経新聞の世界観にそぐうでしょうねぇ。国家の強制は元より、生徒は従うべきものとして生徒自身の意思を否定する辺り、門真市の一件では生徒の自主性などハナから頭になかった産経新聞のモノの見方にはピッタリですし。

>いるか缶さん

 大人になったらなったで、また単語を入れ替えるだけで内容は同じことを言うでしょうね。「政治家になってからモノを言え」とか……もう言ってましたか。

>GXさん

 独裁者が住民を軍事力などの力によって押さえ込み、それで権力を維持しているのならわかるのですが、日本は有権者の支持によって独裁者を支えているとすら言えますよね。さすがに橋下から面と向かって標的にされると、件の高校生のように反対する側に回るようですが、端から見ている人からの支持は依然として高い、一体何を考えているのかと……
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Unknown (リル)
2008-11-06 00:52:03
 橋下知事と同世代で大阪の府立高校出身の最悪の教育を受けたシンガーソングライターの歌詞からパクったようなプロジェクトを恥ずかしげもなく発表してますね。大阪オンリーワン商店街創出事業におおさか職業教育ナンバー1戦略。君が代よりこっちの歌の方が強制することなく大きな声で歌えるのでは。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-06 23:52:05
>リルさん

 まぁ橋下にとって「強制」そのものが重要だとするなら、君が代である必然性はないのですが、府民や学生が自発的に歌えるような歌では面白くない、そういう可能性もあるのではないかと。
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例によって過去の自説と矛盾 (あぐりこら)
2008-11-08 00:38:54
Wikipedia によるとクソ知事閣下は著書の中で『明確なルールのみが行動の基準であって、明確なルールによる規制がない限りは何をやってもかまわない』と述べているそうです。

閣下が高校生のころにはそもそも国旗や国歌を定めた「明確なルール」すらなかったし、現在も国旗国歌を強制する「明確なルールによる規制」なんてありませんが?

こうまで徹底して後先考えず口から出任せだけで喋る人間というのも驚異ですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-08 14:15:19
>あぐりこらさん

 まぁ修正主義者は自国の歴史だけではなく、自身の過去の発言をも修正してしまうのかも知れません。あるいは「俺がルールブックだ」の発想なのかも知れませんが。
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