非国民通信

ノーモア・コイズミ

愚か者先生

2008-11-02 22:02:03 | ニュース

「愚か者の誓い」中学教諭が生徒に強要…宿題忘れると7回(読売新聞)

 東京都足立区内の区立中学校で、2年の学年主任の女性教諭(52)が、忘れ物をした生徒に「愚か者の誓い」として「私が愚かでした。もう忘れません」などと繰り返し書かせていたことが31日、明らかになった。教諭は「忘れ物をしてほしくないという思いで指導したが、行き過ぎた」と話しているという。

 学校などによると、この教諭は宿題や提出物を忘れた生徒に、「私は、愚かにも(○○)を忘れました」という文章のかっこ内を埋めさせ、その下に「私が愚かでした。もう○○を忘れません」と7回書かせていた。さらに、何度も提出を忘れた場合は「○○未提出の愚か者」として名前を張り出していた。4年ほど前から行っていたという。

 区教委の事情聴取に教諭は「『ばか者』という言葉より『愚か者』の方がソフトだと思ったが、配慮が欠けていた」と反省しているという。区教委は「しかるべき対応をとりたい」としている。

 このニュースは一体何なのでしょうね、曰く「『ばか者』という言葉より『愚か者』の方がソフトだと思った~」そうですが、そういう問題ではないでしょうし。とりあえず私が気になるのは、この先生が日教組に加入しているかどうかです。自民党や大阪の偉い人に言わせれば、日教組の先生は悪い先生、悪い先生は日教組ということになっているわけですが、ここで取り沙汰されている先生は日教組に加入しているのでしょうか?

 「講釈師見てきたような嘘を言い」とも言いますが、その筋の人が日教組を批判するとき、しばしば持ち出されるのがその人の個人的体験です。自分の学生時代に日教組の先生がいて、組合活動ばかりで生徒を蔑ろに~と語るのが一つの定型です。でも私はこういう教職員の存在以前に、自分の担任教師が日教組に加入しているかどうかを把握している小中学生の存在の方が信じられないのですよね。その辺の小中学生に学力テストを施している暇があったなら、一度くらいは「日教組を知っていますか?」「あなたの先生は日教組に加入していますか?」とでも聞いてみたらいいのではないかと。

 それはさておき、教職員の行動が取り沙汰されることはしばしばあって、まぁ体罰など学生を抑えつける方向で問題を起こした場合は概ね擁護されるわけですが、それ以外にも猥褻行為などで新聞デビューを飾るケースもあるわけです。そのような教員の不祥事、嘆かわしいことではありながら、ある種の思惑を持つ人々にとっては好機でもあります。もし不祥事を起こした教員が日教組組合員であれば、日教組を攻撃したい人々にとっては格好の機会のはずですよね。しかし、日教組組合員の不祥事として報道されないのはどうしてでしょう? メディアに自制が効いている? それとも、その人が日教組に加入しているかどうかなど非組合員には判断しようがないから? あるいは、自分達が非難したくなるような不祥事を起こした教員は日教組に加入していない人ばかりだったから?

橋下徹における「組合嫌い」と「体罰好き」の相克(世界の片隅でニュースを読む)

 世間的には教職員組合=左翼=民主的=「子ども」中心と誤解されているが、元来左翼の教育論は「教師の指導性」と「子どもの平等」を何よりも重視する。子どもは学校教育を受けない状態では悪しき資本主義社会のイデオロギーの影響下にあり、それを正しく矯正するのが教師の役目というわけである。実際、私が大学で教職課程をとっていた時、講師で来ていた全教(日教組の連合加盟に伴い分裂した組合、共産党系の人が多い)所属の教師は、基礎的知識はすべての子どもに教え込まなければならないと力説していた。また、教職員組合で熱心に活動していた教師がしばしば生徒を懲罰として殴っていた例も見ている。ある意味「教師の指導性」重視の当然の帰結である。

 詳細はリンク先全文をお読みいただければと思いますが、一般的なイメージとは裏腹に(昔ながらの)左翼教員の方が権威主義的なところがあって、子供を体罰で矯正したがる傾向も指摘されているわけです。一応、建前として体罰は禁止ですから、これが問題として新聞紙上を賑わすこともあるものの、この時(主として右派であり、反日教組である)体罰肯定派は教師を擁護する側に回ります。しかし、こうした体罰教師が日教組組合員だとしたらどうなのでしょうか? その体罰教師が日教組であることは、反日教組の体罰肯定論者にとって、目を背けておきたい事実になるのかも知れません。

 ちょっと話がそれましたが、今回の「愚か者先生」は日教組に加入していたのでしょうか? 軽くブログ検索してみた感じでは、いかにも日頃は日教組を誹謗して止まないであろうタイプのブロガーがこぞってこの愚か者先生を擁護しているようですが、もしかしたら、とんでもなく矛盾しているかもよ、と。まぁその辺の人にしてみれば、ダブルスタンダードは当たり前、三重四重は当たり前なのかも知れませんが。

 ちなみに「憎いから叱るのではない、可愛いから叱るのだ」という言い訳がありますよね。こういう言葉を口にする人はほぼ例外なく「叱りたいから」叱っていると思います。今回の愚か者先生も同様、何とかして忘れ物をなくそうという意識よりも、思い通りに動かない子供への苛立ちから行動しているような気がします。こんな見せしめ的行為を繰り返したところでガキが素直になるはずもないのですが(子供を相手にするときは、ある程度の「諦め」も必要だと思いますね)、自分が蔑ろにされた分だけ「仕返し」をしないでは気が済まなかったのでしょう。まぁ先生も人間ですから、時にはこういう過ちもあるでしょうけれど、それが常態化しているようでは感心できません。

 

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10 コメント

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Unknown (GX)
2008-11-02 22:24:13
 もし日教組のお話が本当ならば、我々にとっての方が好ましくない組合となりますが、またもや「翼賛メディアを批判するネット右翼」のような事例になってしまいますね。
 というか、人間である以上、忘れごとはどうしてもやってしまうもので、このようにしたところでなくなるわけがないのですがね。私も何か忘れごとをするたびに「なんでも完璧に記憶しておけたらな。」と悔しい思いをしておりますが、人間である以上仕方がないと我慢しております。
 代わりといってはなんですが、宿題とかはやってきたい人だけやって、やってきた人は褒めるとかそういう方向でやってみれば、やる気を出す人は多いのではないでしょうか。
彼らの基準? (いるか缶)
2008-11-02 23:31:55
>体罰教師が日教組組合員だとしたら

「アカ教師の妄言に毅然と立ち向かった生徒にふるわれた体罰という名の粛正」とか言って折り合いつけそうな気がします。

しかし、先日の見た目で不合格の件といい、こんな話ばかりでは、要領がよくて、その場の空気のためなら善悪も自分の意志も厭わない子どもしか生き残れない気がします。今回のクラスも「家で勉強しないで教科書鞄に入れっぱ」な生徒が増えたでしょうし。
しかし、そのような子ども(や大人)が社会から要請されているのもまた事実でしょうね。
Unknown (mahounofuefuki)
2008-11-03 00:35:53
 拙文をご紹介くださり恐縮です。

 私の実体験では、非組合系で教育委員会とか官製の研究団体に近い教師ほど、とにかく子どもとのコミュニケーションを重視し、子どもにウケる授業技術を磨いていたもので、良く言えば子どもの意思を尊重している、悪く言えば子どもに迎合しているわけです。こういう教師は基本的に「指導者」というより「セールスマン」ですから、「お客様」である子どもに体罰なんて絶対やらないのに対し、左翼の教師には権威主義的な人が少なくない。私の高校時代、いつも職員室で「赤旗」を読んでいて、授業でもマルクスの話ばかりしていたような教師がいましたが、彼は一方で体罰の常習者で、課題提出の期限を破った生徒にビンタをくらわしているのを何度も目撃したことがあります(我々は陰で「粛清」と呼んでいましたw)。

 それでは「セールスマン」教師がいいのかと言うと、この種の教師は子ども「自主性」を重んじて「教える」ことを嫌うので(「教えない教師」とは矛盾に満ちていますが)、たとえば「できない」子を「それも個性だ」とか言って放置しがちで、学力格差が拡大する原因を作っている。体罰や過度の権威主義は論外だけど「教師の指導性」はやはり必要なわけです。「外野」の介入で剥奪された「教師の指導性」を回復しつつ、しかし権威主義・暴力主義に陥らない方向性を模索するのが望ましいと考えています。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-03 01:13:58
>GXさん

 朝日新聞叩きと同じで、自分の頭の中のイメージに基づいてバッシングに走る傾向はあるでしょうね。要は好きか嫌いかで動いているような…… それはさておき、無闇に起るよりも、褒めるなどしてその気にさせる、そうした工夫の方が忘れ物を減らすには有効だと思うわけですが、この先生はそうしない、やっぱり「叩きたい」気持ちの方が強かったのかも知れません。

>いるか缶さん

 日本政府の弾圧は良い弾圧、中国政府の弾圧は悪い弾圧、そんな考え方の人々なら、「普通の」教師の体罰は良い体罰、日教組組合員の体罰は不当な体罰と、そう来るかも知れませんね。ダブルスタンダードなど気にしないでしょうから。……ちなみに忘れ物を防ぐ最も確実な方法は「持ち帰らないこと」「取り出さないこと」ですよね。罰を恐れてそうする子供も増えていることでしょう。

>mahounofuefukiさん

 一世代前の左翼には目的のためには暴力も辞さないイメージがありますが、教職員組合が例外であると見なすことは出来ないでしょうね。善かれ悪しかれ思想的に「熱い」ところがあるほど、過激な手法に頼ることも考えられますし。結局、教育行政はセールスマン型を推しつつも、その結果を非難する、その原因を「指導者」路線の組合に転嫁しつつ、教員の指導力低下を声高に嘆いてみせる、こうした内部矛盾、一貫性のなさも深刻ですね。
本当に困ったお方ですねえ (おさふね)
2008-11-03 10:06:03
んなもん人間忘れるんだから仕方ないよね、という事がまるで判ってないんでしょうねえ。
私なんざ物忘れが酷すぎて日常生活にまで差し障るくらいで、俗に言うADHDとの診断が出ておるのですが、それはさておいて、「忘れ物をしない工夫」をさせるのが教師の努めであり、それをしなくてはいけないのに、それとは全く関係なく、最もやってはいけない「集団の前での辱め」をさせている訳ですから
Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-03 12:50:13
>おさふねさん

 北朝鮮問題でも拉致問題解決から制裁の継続に目的が移り変わったように、ここでは「忘れ物をなくすこと」から「忘れ物をした人を罰すること」に目的がすり替わっている気がしますね。問題解決よりも自分の精神的な満足を優先する、この愚か者先生もそういうタイプのような気がします。
Unknown (Gl17)
2008-11-03 13:16:33
仰るように「俺んとこの日教組教員はこんなに変だった!」体験談を得意げに披瀝する人多いですね。
たしかに担任教師でも何でも、その人がどの組合に入ってるとかまで普通把握してるもんか?、子供が?
そういうのは聞いてて気にせずおれません。

だいたいそういう特定の一件で組織の性格が決まるなら、非組合でヘンな奴が一人いれば結論「日教組はヘン、そうでなくてもヘン」です。
100%無意味になっちゃうやんと。
Unknown (非国民通信管理人)
2008-11-03 22:15:10
>Gl17さん

 多いですよねぇ、体験談を披露する人。ほぼ間違いなく、後から考え出したことだろうとは思うわけですが、なにせ他人の個人的体験ですから検証のしようもない、言いがかりをつけるにはうってつけの方法なのでしょう。とはいえ仰るように、個人的体験で何かを証明できるなら「うちの先生は日教組だけどまともだった」「うちの先生は日教組じゃなかったけど、変だった」とか、そういう言説も成り立つはず。しかるに論理の破綻など気にしない人も少なくないのでしょうかね。
まとまりのない文ですみません・・・。 (ニュースコープ)
2009-05-20 18:14:40
しかし、私も左派の端くれとして昨今の「右傾化」について考えてみるに、案外こういうところに日本の左派が支持を失い、ネット右翼の台頭を許してしまった原因の1つがあるのではないか?と感じますね。
今頃になって気付きましたが、体罰や権威主義、俗流若者論といったものは、思想の左右はあまり関係ないのでしょう。
誰とは言いませんが、「護憲」「反戦平和」「反差別」「反自民」などを唱えた同じ口で、「全く今の若者は甘やかされている」「人間はもっと厳しく生きるべき。楽をしてはいけない」などと言ってしまう左派文化人って、昔から結構少なくないんですよね…。
私自身、「甘やかされた若い世代」の1人として、一部左派のそういう言動に度々幻滅させられてきましたし。
Unknown (非国民通信管理人)
2009-05-20 23:46:04
>ニュースコープさん

 まぁ左派にもノスタルジー志向は強い、戦前の政治体制への評価を除けば「昔は良かった」派は強いでしょうし、禁欲志向、苦痛至上主義も似たようなものでしょうか。

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