経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

危うし? 日本の国際収支

2023-05-18 07:23:16 | 貿易
◇ 昨年度は黒字額がガタ減り = 企業のなかには本業で大赤字を出しながら、海外の投資事業で大きく儲けているところもある。その合計額が黒字ならば、その企業は市場から認知され株価も上がりやすい。M&A(合併・買収)や債券・株式投資に成功している企業だ。だが仮にそんな企業の投資収入が増え続けても、本業の赤字がもっと増えて全体の黒字が減り始めたら、どうだろう。市場は先行きを心配し、株価は下がるに違いない。

いま日本という国が、そういう状態に陥っている。財務省の発表によると、22年度の経常収支は9兆2256億円の黒字だった。だが、この黒字額は前年度に比べると、54%も減っている。内訳をみると、外国との投資取引を集計した第1次所得収支は35兆5591億円の黒字。前年度比では23%も増加した。その大半は、海外子会社などからの配当収入。この部門での利益は、いぜん大幅に伸びている。

ところが本業とも言える貿易収支は、大幅に悪化した。輸出は16%増えたが、輸入は35%も増加した。その結果、貿易収支は18兆0602億円の大赤字。前年度に比べると、16兆5170億円も増大している。原因は言うまでもなく、エネルギーや資源の高騰と円安の影響。その結果、貿易赤字は過去最大。経常収支の黒字を半分以上も減らしてしまった。

日本の対外投資額は、世界でも最大。したがって、今後も投資部門での収入は増え続けるだろう。しかし貿易収支がこれほどの大赤字を出すと、大きな問題が生じる。まず日本人の購買力が海外へ流出するから、国内の消費が抑制されてしまう。また海外での儲けは海外で再投資されやすいから、国内での賃上げには回されない。経常収支が黒字だと言っても、好ましい状態でないことは確かである。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +250.60円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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貿易大赤字が 教えること (下)

2023-04-28 08:06:36 | 貿易
◇ 「自民党が野党になった」ことが一因? = EIA(米エネルギー情報局)の発表によると、アメリカでは多くの州が補助金や免税措置をとって再生可能エネルギーの普及に努力している。この結果、たとえばテキサス州では風力、カリフォルニア州では太陽光による発電比率が急増した。全米でみると、再生エネルギー発電の比率が20%を超え、石炭火力を抜いて天然ガスに次ぐ2位となっている。

EUでも22年中に、風力と太陽光を中核とする再生エネルギー発電が6200万㌔㍗分増加した。この結果、再生エネルギー発電の比率は22%に上昇、天然ガスの20%を上回った。ウクライナ戦争前に比べて、太陽光発電は24%も増加している。さらに23年も補助金の効果で、再生エネルギー発電は大幅に増える見込み。化石燃料による発電の比率は20%を下回ると推計されている。

日本は、どうだろう。資源エネルギー庁の集計によると、21年度のエネルギー自給率は13.4%。つまり9割近くを輸入に頼っているのだから、国際価格が高騰すれば貿易収支は大赤字になるのは当然だ。したがって自給率を高めることが必要だが、それが遅々として進まない。たとえば発電に占める再生エネルギーの割合は、21年度で20.3%。前年より0.5ポイントしか上昇しなかった。しかも火力による発電比率は72.9%で、世界でもズバ抜けて高い。

その一因は「自民党が野党化したことによる」と言ったら、飛躍し過ぎだろうか。電気・ガス・ガソリン価格の高騰に対して、自民党は補助金を出して価格を抑える政策を継続した。かつては野党が主張したような対策である。この結果、自給率を上げるような政策には予算が回らなくなった。だから貿易の大赤字が続く。そして野党は、選挙で勝てなくなった。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +41.21円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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貿易大赤字が 教えること (上)

2023-04-27 07:20:12 | 貿易
◇ 燃料輸入の急増が景気の足を引っ張る = 22年度の貿易収支は、驚くほどの大赤字だった。財務省の発表によると、輸出は前年度比15.5%増の99兆2265億円。輸入は32.2%増の120兆9550億円。輸出も健闘したが輸入が伸びすぎたために、記録的な大赤字となってしまった。これまでは13年度の13兆7500億円が最大の赤字額、それを一挙に飛び越したことになる。

輸入が大幅に増加した最大の原因は、燃料輸入の激増。原油・粗油は13兆6932億円で前年比70.8%の増加、LNG(液化天然ガス)は8兆8923億円で77.6%の増加、石炭にいたっては8兆5806億円で2.4倍の増加となっている。燃料全体では実に35兆1924億円、前年比では77.0%の増加だった。言うまでもなく燃料の国際価格が急騰したうえに、円安の効果が加わったことによる。

ここで話を分かりやすくするため、実際にはありえない状況を考えてみよう。仮りに日本が燃料を100パーセント自給し輸入はゼロだったとしたら、どうだろう。当然、輸入代金の35兆円は支払わないから、国内に残る。もし、その大半が消費や設備投資に回されたら、景気はよくなり成長率も上昇したに違いない。逆に巨額の輸入代金を支払ったために、景気は足を引っ張られたと言ってもいい。

もちろん、日本が燃料を100パーセント自給することはありえない。しかし仮に自給率を1割上げて輸入を1割減らせば、3兆5000億円ものおカネが国内に留まるわけだ。こういう考え方から、アメリカやヨーロッパ諸国はみなエネルギーの自給率を上げている。ところが日本は努力が足りず、自給率が上がらない。貿易の大赤字は、その結果なのである。

                         (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -203.60円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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国難だ! ‟異次元”の 貿易大赤字

2023-02-18 07:38:44 | 貿易
◇ 消費税収がそっくり海外へ流出 = 日本の貿易収支が、文字通り‟異次元”の大赤字を続けている。財務省が発表した1月の貿易統計によると、輸出は前年比3.5%増加の6兆5512億円。輸入は17.8%増加の10兆0478億円。この結果、貿易収支は3兆4966億円の大赤字となった。この赤字幅は単月としては過去最大。貿易赤字は18か月連続している。

輸出は中国向けが減少して、伸び悩んだ。だが大赤字の元凶は、やっぱり輸入の急増。特にエネルギー輸入の爆発的な増加が、最大の原因となっている。石炭は前年比93.3%、LNG(液化天然ガス)は57.0%、原粗油は35.3%も増大した。これらを合わせた鉱物性燃料は48.8%の増加となっている。これには円安の影響も加わった。

ウクライナ戦争に起因する国際エネルギー価格の急騰、それに円安という環境は、まだ当分は続きそうだ。昨年の貿易収支は19兆9713億円の赤字だったが、ことしは赤字額がもっと拡大するかもしれない。いま国会では23年度予算を審議しているが、その税収見積もりをみると、所得税が21兆0480億円、消費税が23兆3840億円だ。その税収に匹敵する金額が、エネルギーの輸入代金として海外に流出していることになる。

これでは景気はよくならず、国民の暮らしは圧迫されるばかり。もちろん、エネルギーの輸入をなくすことは出来ないが、少しでも減らす努力はすべきだろう。にもかかわらず、政府・与党にそんな意識は感じられない。野党も国会では、重箱の隅を突つくような質問に明け暮れている。貿易の大赤字は、国難だという認識を持ってもらいたい。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -183.31円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     
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景気低迷の元凶は 貿易の大赤字 (下)

2023-01-27 08:05:39 | 貿易
◇ ‟バラ播き”では何も改善しない = 22年の貿易赤字は、ほぼ20兆円。ちなみに21年は1兆8000億円弱の赤字だった。したがって仮に22年も21年並みの赤字で済んだとすれば、18兆円ものおカネが国内にとどまった計算になる。その大半が設備投資や人件費、あるいは消費に回れば、それだけ景気は押し上げられたはずだ。しかし現実には18兆円ものおカネが、余計に流出してしまった。いまさら泣き言を言ってみても始まらない。

問題は22年の貿易環境が長期化し、巨額の貿易赤字が定着する可能性があること。専門家の多くは「少なくとも23年は大赤字」と予測している。こんな大赤字が何年も続けば、日本人の購買力が海外に吸い取られて、日本経済は衰弱してしまう。だから少しでも赤字を減らす工夫と努力が大切だ。しかし政府は電気・ガス料金やガソリン代の補助に明け暮れ、根本的な対策をとっていない。

エネルギー・資源・食料の輸入を出来るだけ減らすには、自給率を上げるしかない。再生可能エネルギーや原子力の利用、海底資源の開発、食料の増産。こうしたことに、政府は真剣に努力しているのだろうか。また円安が輸入物価を押し上げ、輸入代金を増大させている。円の対ドル相場が100円に上昇すれば、輸入物価は3割ほども安くなる。

だが政府には、日本のエネルギー構造を根本的に改革しようという意識がない。日銀も円高にしようとは考えない。いまは政府と日銀が一緒になって、貿易の大赤字に貢献しているようにみえる。たとえば政府による節電の呼びかけ。いまは「電力不足に備えるため」だが、これも「エネルギーの輸入をできるだけ減らすため」に変えるべきだ。とにかく‟その場しのぎ”の対応ではなく、構造を改善する努力が何よりも肝要だ。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -32.26円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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