経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

ガソリン補助金 またも延長 (上)

2024-03-28 07:56:31 | エネルギー
◇ 予算規模は防衛費並みに膨張 = 岸田首相は先週の参院予算委員会で、ガソリンに対する補助金について「国民経済や経済活動への影響を考慮して、検討して行くことが重要だ」と述べ、4月末で終了する予定の補助金政策を延長することに前向きな姿勢をみせた。この制度で、たしかにガソリンの小売り価格は1リットル=175円程度に抑えられている。しかし反対論も多いなかで、補助金はまたしても延長されることになりそうだ。

ガソリンに対する補助金制度は、22年1月に導入された。原油の輸入価格が上昇した場合、政府が元売り会社に補助金を支給することで小売り価格を抑制する仕組み。たとえば最近の小売り価格は、レギュラーの全国平均が1リットル=174.3円。もし補助金がなければ196.0円になっているはずだと試算されている。当初はごく短期で終える計画だったが、これまで6回も延長された。現在は4月末で終了の予定になっているが、これをまたまた延長する。

必要な経費は、想像以上に多い。この4月末までに支給される補助金の総額は、約4兆4000億円にのぼる。予算ベースでみると、累計は6兆4000億円。1年間の防衛費にほぼ匹敵する。これだけ巨額の税金を使うわけだが、その恩恵は黒字を出している企業や大金持ちの個人にも及ぶ。これが反対論の一つの根拠だ。

ガソリンの値段が上昇すれば、消費が抑えられるはず。しかし価格を抑えれば、その機能が働かない。したがって補助金政策は、脱炭素の方向と矛盾する。また価格が175円前後で統一されるため、小売り市場ではほとんど競争がなくなった。と言うより、ガソリンの小売り市場は消滅してしまった。このように副作用も大きく、反対論は根強い。

                   (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 上げ +364.70円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (下)

2023-10-27 07:24:19 | エネルギー
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒ぎが起こり、当時の福田赳夫首相はこの現象を‟狂乱物価”と命名している。

この経験から、日本は実に多くのことを学び取った。原油の輸入先の分散、輸入先国との良好な関係維持、省エネの推進、エネルギー輸入依存度の引下げ、備蓄の増強など・・・。このうち省エネの推進や備蓄の増強、それに原油から天然ガスへの切り替えなどは、そこそこ進捗した。しかし中東への依存度は当時の80.7%から、最近は95.2%へと悪化している。

なかでも重要なのは、エネルギー輸入依存度の引き下げだ。総発電量に占める輸入化石燃料の比率をみると、1972年度は94.0%だった。それが22年度には72.4%まで下がっている。しかし50年間で、これしか下げられなかったと言うべきだろう。もし50%にまで下げていたら、現在の貿易赤字は大幅に縮小。物価もこんなには上がらなかったはず。

エネルギー輸入依存度の引き下げは、国内自給率の引き上げによって達成される。つまり日本はこの50年間に、もっと原発を安全に稼働させ、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電量を増やしておくべきだった。これは歴代政府の失政だったと言えるだろう。産油国側は「減産による価格維持」を学んだが、日本政府は50年前の教訓を生かしきれなかった。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -668.14円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
 
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (上)

2023-10-26 07:19:40 | エネルギー
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は、計り知れないほど大きくなりそうだ。

原油価格が100ドルを超えれば、各国の物価はさらに押し上げられる。アメリカやEUの中央銀行は、金融引き締めを継続せざるをえなくなる。その結果、景気は悪化するだろう。中国も燃料高で、景気の回復はさらに遅れる。日本も貿易赤字がいっそう拡大、企業収益も圧迫される。景気が下降する一方で物価は上昇、庶民の生活は苦しくなるばかり。政府が補助金を積み増せば、財政は破たんに近付く。

現在の原油価格は、実に複雑な要因が重なって形成されている。まず供給面では、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどによる生産調整。さらにサウジアラビアとロシアは7月から、自主減産を追加。これを継続することで、相場を下支えしてきた。たとえば9月上旬に、プーチン大統領がサウジのムハンムド皇太子と電話会談しただけでも、価格は上昇した。その可能性は小さいが、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖したら、価格は130ドルにも暴騰するだろう。

需要面の要因も複雑だ。アメリカの原油在庫が行楽シーズンのガソリン消費増加で減少すると、価格は上昇。中国の景気回復が遅れて需要が伸びないと、価格は下落。冬の暖房シーズンが近づくと、価格は上がる。現在はアメリカで高価格のためにガソリンの消費が伸び悩み、それが原油価格を抑える要因となっている。こうした需給両面からの力に加えて投機資金が暗躍するから、先行きの予想はかなり難しい。

                       (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 上げ +207.57円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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「再生エネを30年までに3倍」 : G20宣言

2023-09-14 07:12:41 | エネルギー
◇ 日本は目標を大幅に上げられるのか = インドで開いたG20(主要20か国首脳会議)は10日、首脳宣言を採択して閉幕した。ウクライナ戦争を巡って激しく対立する各国が、一堂に会したこの会議。にもかかわらず首脳宣言をまとめられたのは、議長を務めたインドのモディ首相の功績だという評価が高い。首脳宣言ではロシアや中国への批判を避け、気候変動・食料・エネルギーなど人類が直面する大問題を列挙。各国の結束を訴えた。これなら反対する国は出ない。

問題の列挙にとどまったかと思いきや、ただ1か所だけ重要な政策目標を具体的に明示した点があった。それは気候変動に関する部分で「2030年までに再生エネルギー容量を、世界全体で3倍にする取り組みを追求する」という内容。世界の現状から判断すれば、実現は不可能に近い。きわめて野心的な目標の設定だと言える。

たとえば脱炭素に最も熱心なEU。ことし3月「30年の再生エネルギー比率を42.5%に引き上げる」ことを決めた。現状と比べて2倍以上の引き上げとなるが、それでも3倍からは程遠い。日本政府の計画は「19年度の発電量1853キロワット時を、30年度に3130キロワット時に増やす」という内容。これも3倍には、とても届かない。

モディ首相は、この首脳宣言について「すべての参加国が100パーセント合意した」と明言した。文字通り解釈すれば、会議に出席した岸田首相も同意したことになる。でも岸田首相は帰国後、こんな大事な合意点について何も触れていない。「世界中の国が不可能だと考えているから」「モディ議長が勝手に書いたものだから」と考えているのかしら。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -69.85円≫

        ≪14日の日経平均は? = 下げ≫ 
 
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またまた⇑ 原油の国際価格

2023-09-09 07:27:21 | エネルギー
◇ 燃料の輸入額は増えるばかり = 原油の国際価格が、またまた上昇し始めている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は5日、1バレル=88ドル台に上昇。およそ10か月ぶりの高値を付けた。この春80ドル台前半まで上昇したあと値を下げ、夏には70ドルを割り込んでいた。今回は円安の効果が重なって、輸入価格が大幅に上昇する。するとガソリン価格はすぐ上昇、しばらくして電気・ガス料金も引き上げられる。インフレの再燃が心配される状況となってきた。

値上がりの原因は、サウジアラビアとロシアが歩調を合わせて「自主減産を年末まで延長する」と発表したこと。この両国は原油価格を下支えするため、それぞれ日量100万バレルと30万バレルの減産を続けている。期限は9月までだったが、それを12月まで延長した。仮にアメリカや中国の景気が好転すれば、100ドルを超える可能性も十分に考えられる。そのうえ日本の場合は、円安の効果で輸入価格が上がる。円相場は6日、一時147円後半まで下落した。

政府はガソリン料金の高騰を抑えるため、石油元売り会社に対する補助金の支給を7日から再開した。電気・ガスに対する補助金も、再び実施するに違いない。「原油価格の高騰+円相場の下落⇒補助金の支出」という政策決定プロセスが、完全に出来上がってしまった。国民の側からみれば「いつか来た道」である。だが、そんな繰り返しをしているうちに、事態はどんどん悪化している。

財務省が発表した貿易統計によると、ことし1-6月期に輸入した鉱物性燃料は13兆9420億円に達した。ウクライナ戦争が始まる前の21年1-6月期は6兆9466億円だったから、ほぼ2倍に増加している。それだけ日本人の資産が流出しているわけである。この間、原油や天然ガスの価格は上昇した。円安も大幅に進行した。さらに日本の消費量も増えている。つまり日本のエネルギー海外依存体質は全く改善されていないどころか、むしろ大きく悪化した。。補助金内閣、最大の弱点である。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -384.24円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     
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