経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

原発が左右する 電気料金

2023-08-04 07:09:11 | 電気料金
◇ 東京は大阪より5割も高い矛盾 = 高浜原発(福井県)1号機が7月28日、再稼働を始めた。東日本大震災のあと再稼働した原発は、これで11基に。同じ高浜原発の2号機も、9月には再稼働する予定。もしそうなれば、関西電力が所有する7基の原発がすべて稼働することになる。このため関西電力は、ことし値上げの申請をしなかった。にもかかわらず同社は、ことし4-6月期に1931億円の黒字を計上した。火力発電に比べてコストが安い原発のおかげである。

原子力規制委員会はことし5月、柏崎刈羽原発(新潟県)に対する運転禁止命令を解除しないと決めた。テロ対策がいぜん不十分だと判断したためで、早期の再稼働は困難になったとみられている。東京電力は大事故を起こした福島原発を除けば、所有する原発はこの柏崎刈羽原発の7基。それが1基も動いていない。ほとんどの発電を火力に頼っているが、輸入燃料が高騰したため値上げを申請した。

この値上げが認められたため、東京電力の標準家庭向け電気料金は月9510円に。料金を据え置いた関西電力の7056円に比べると、約35%高くなった。ただこの計算には政府による負担軽減策が含まれているので、その分を考慮すると約5割高くなる。輸入燃料価格の上昇や原発の稼働状況からみると、この差はさらに広がるかもしれない。東京電力管内の家庭にとっては、頭の痛い話である。

この問題の責任は、どこにあるのだろう。テロ対策が、きちんとできない東京電力? 厳しすぎる規制委員会? 両者のギスギスした関係を修復できない経済産業省? それとも無関心な政治家? 岸田さんが一声かければ、すぐに解決しそうにも思えるのだが。やっぱり、東京圏に住む庶民は「運が悪い」とあきらめるしかないのだろうか。

        ≪3日の日経平均 = 下げ -548.41円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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シナリオ通り? 電力7社の値上げ

2023-05-27 07:16:12 | 電気料金
◇ 東京は14%、北陸は42%の引き上げに = 経済産業省は先週19日、大手電力7社の家庭向け電気料金引き上げを認可した。最も小幅な値上げは東京電力の2078円(14%)、最大は沖縄電力の5323円(38%)。いずれも6月使用分から適用される。ただし政府の補助金によって、6-8月分は2800円程度、9月は1400円程度が割引となる。10月以降の補助金については、いまのところ未定。中部・関西・九州の3社は、値上げを申請しなかった。

輸入燃料の高騰などを理由に、電力7社は最初もっと大幅な値上げを申請した。しかし岸田首相の意向もあって、経産省は専門部会による査定を実施、値上げ幅を圧縮した。たとえば東京電力の場合、当初の値上げ率は28%だったが14%に縮小された。経産省は専門部会で「中立的・客観的・専門的な観点から、厳格かつ丁寧に審査した」と強調している。これは電力業界で、顧客情報の不正閲覧やカルテル問題が発覚したことを意識したからだろう。

だが、それにしても値上げ幅を半分に削ったのは異常だ。電力7社は最初、ダメ元で大幅な値上げを申請したのだろうか。あるいは経産省側が査定で削ることを前提に、大幅な値上が案を申請させたのか。実際にそんなことはなかったかもしれないが、こんな憶測まで生まれそうな経産省の動きだった。

大手電力10社の3月期決算では、関西と中部を除く8社が赤字に転落した。24年3月期の予想では、この両社と九州電力の3社だけが黒字を見込んでいる。だから3社は値上げを申請しなかった。ほかの7社と、どこが違うのか。いろいろ相違はあるが、最大の違いは火力に対する依存度だろう。値上げに追われているだけでは、進歩がない。値上げした7社は、もっと根本的な体質改善を計るべきだろう。

         ≪26日の日経平均 = 上げ +115.18円≫

         【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】     
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複雑怪奇な 電気料金の値上げ (下)

2022-12-14 07:49:06 | 電気料金
◇ なぜか申請を遅らせている残り5社 = 中国・中部・九州の3電力会社は企業向けの電力供給でカルテルを結び、公正取引委員会から総額1000億円の課徴金を言い渡されたばかり。このうち推定700億円の課徴金を収めることになった中国電力も、値上げを申請している。ところが松野官房長官は「課徴金は燃料費とは関係がないから、値上げの審査には影響しない」と言明。しかし結果として、課徴金は値上げ分から支払われるのではないか。どうもおかしい気がする。

北海道・東京・中部・関西・九州の5社も4月から値上げする予定だが、まだ申請はしていない。必要な書類の作成が遅れているのか、それとも様子を窺っているのか。経産省の審議会はすでに東北電力など5社についての審査を始めているが、途中で後続5社の審査もするのだろうか。10社の経営状態を横並べにしてみないと、適切な値上げ幅を探りにくいのではないか。

加えて政府の補助金が、問題をいっそう複雑にしている。政府は来年1月から電力会社に補助金を出して、値上げ分の2割程度を補填する方針。したがって家庭の電気料金は、来年1-3月は2割ほど安くなる。しかし仮に4月から30%の値上げが実施されると、4月以降は10%高くなる。さらに政府の補助金は来年10月以降1割程度に引き下げられるので、その時点で電気料金はまた値上がりする。とにかく来年の電気料金は、ややこしい。

ウクライナ戦争の影響で燃料の輸入代金が高騰したのだから、電気料金が値上がりすることはやむを得ない。しかし、その過程はまとこに複雑怪奇だ。同時に心配なのは、こんな状態がいつまで続くかということ。長続きしたとき、持ち応えられるのかどうか。政府が長期的な対策を進めていないことが、最も‟怪奇”なのかもしれない。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +112.52円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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複雑怪奇な 電気料金の値上げ (上)

2022-12-13 07:08:36 | 電気料金
◇ 不確実性を積み上げて審査 = 大手電力5社が家庭向け電気料金の値上げを申請した。値上げを申請したのは、東北・北陸・中国・四国・沖縄の電力5社。申請した値上げ率は最大が北陸電力の42.7%、最小が四国電力の27.9%となっている。経済産業省は専門部会を開いて審査、来年4月には値上げが実現する。ただ、この電力値上げ問題は多くの面で複雑、ある意味では怪奇な側面も少なくない。

まず複雑なのが、家庭向け電気料金の内訳。①使用しなくてもかかる基本料金②使用量に連動する電力量料金③燃料代に連動する燃料費調整額④再生エネルギー賦課金の4項目から成り立っている。今回、電力5社は燃料調整額の大幅引き上げのほか、基本料金、電力量料金についても値上げを申請した。

値上げの理由は、主として燃料費の高騰。ウクライナ戦争と円安の影響で、輸入する原油・石炭・天然ガスなどが暴騰、火力発電のコストが急激に上昇した。このため大手電力10社の経営は悪化、たとえば4-9月期の最終損益は合計5500億円の赤字となっている。したがって値上げはやむを得ないが、どの程度の値上げが適切かを、専門部会が審査することになる。

専門部会が最も重視するのは、燃料の輸入価格がどうなるかだろう。だが世界不況が到来するかもしれないという警戒感から、原油や石炭はここへきて値下がりした。しかし天然ガスはロシア産の供給不安で、価格は下がらない。またアメリカの景気後退不安でドルが下がり、円は目立って上昇した。ただ、いずれも不安定で、来年どうなるかは誰にも判らない。そんな不確実な推測を基に、電気料金の値上げ幅が決まる。なにやら気味が悪い。

                        (続きは明日)

        ≪12日の日経平均= 下げ -58.68円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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電気料金は まだ上がる!

2021-12-23 08:17:09 | 電気料金
◇ ロシア・中国も燃料高の陰の犯人 = 大手電力各社は「来年2月も電気料金を値上げする」と発表した。東京電力の場合、標準家庭で月額7961円、前月より330円高くなる。関西電力は215円の値上げで月額7418円に。これで値上げは6か月連続。ことし1月の料金と比べてみると、東京電力では1644円の値上がりとなった。電気料金は家計支出の約4%を占めており、家計はそれだけ圧迫される。

電気料金の値上げは、火力発電の燃料となる原油とLNG(液化天然ガス)の仕入れ価格が急騰したため。特にLNGの高騰ぶりは異常だ。ヨーロッパでの取引価格は、なんと前年比10倍となっている。これはウクライナ情勢が緊迫し、ロシア産LNGのヨーロッパ向け供給に支障が出始めたことが原因。この支障がロシア政府による意図的なものかどうか、警戒心も強まっているようだ。また中国が石炭不足を補うため、LNGの輸入を急増させたことも一因となっている。

電力各社は冬場の需給ひっ迫を警戒、対策を急いでいる。脱炭素の動きには逆行するが、老朽化し停止していた火力発電所を再稼働させたり、原発の定期検査を延期したり。それでも来年1-2月が厳冬になると、電力の供給不足が生じかねないという。こうした状況のなかで、新電力は6社が経営難に陥った。

電気料金の高騰は家計や企業の支出を増大させ、その分だけ消費や投資を抑制させる。したがって景気にとっても、大きなマイナス要因となる。言い換えれば、これまで燃料の輸入依存度をちっとも減らしてこなかったことの代償だ。この点では、再生可能エネルギーの育成に失敗し、原発政策を疎かにしてきた政府の責任でもあるわけだ。

        ≪22日の日経平均 = 上げ +44.62円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
        
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