経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

GDP速報が提起した 問題点 (下)

2024-02-24 07:45:52 | 景気
◇ 企業を向いた財政・金融政策 = 新聞各紙が「「日本のGDPが4位に転落」を大々的に報じた15日、その同じ紙面で「株価が3万8100円台に」の大見出しが踊っていた。GDPは昨年の話、株高は現在のニュースだから矛盾はないと説明できるかもしれない。だが昨年も株価は上昇していた。株高の原因は企業の業績が好調だったため。業績の好調は、主として円安と値上げが原因だった。

一方、円安と値上げで物価が高騰。これで家計は節約志向に傾き、消費支出が伸び悩んだ。10-12月期のGDP成長率をマイナスに落とし込んだ最大の原因である。少なくとも日銀のマイナス金利政策は過度の円安を招き、輸出企業の利益を大幅に増大させた。しかし円安は物価高を加速し、家計には大きな負担を背負わせた。

また政府は物価高に対して、各種の補助金を連発した。しかし結果的に公共支出はマイナスとなって、GDPの縮小要因となっている。財政政策も金融政策も企業には恩恵を及ぼしたが、多くの家計には負担をもたらした。そして1人当たりGDPは、どんどん順位を下げている。いま政府は自らが作ったその欠陥を、企業による大幅賃上げで修復しようとしているわけだ。

今後の成長見通しは、どうだろう。専門家の推測をまとめてみると、1-3月期は能登半島地震やダイハツの不正検査問題などがあってマイナス成長が続く公算。4-6月期には大幅賃上げによって、プラス成長に戻りそうだという。だが問題は大幅な賃上げが中小・零細企業にまで及ぶかどうか。その一方で物価高が収まらなければ、消費は伸びないだろう。それなのに日銀は、輸入物価を上昇させるマイナス金利政策を止められない。不思議である。    
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GDP速報が提起した 問題点 (上)

2024-02-22 07:52:14 | 景気
◇ 貧しくなった日本人の生活 = 内閣府は先週、昨年10-12月期と23年のGDP速報を発表した。それによると、昨年10-12月期のGDP実質成長率は年率換算でマイナス0.4%。民間の事前予測はプラスだったが、個人消費と公共支出の落ち込みが大きくマイナス成長となった。これでマイナス成長は2四半期連続。アメリカなら「景気後退に陥った」と判定される。ところが企業の業績は絶好調、株価は史上最高値に最接近。いったい、なぜだろう。

GDPを構成する項目をみると、個人消費は年率換算で1.0%の減少。企業の設備投資は0.3%の減少、住宅投資は4.0%の減少、政府の公共支出は2.8%の減少だった。輸出は11.0%も伸びたが、内需の縮小を埋め切れなかった。個人消費の減少は、コロナ後の消費回復が一巡したうえに、物価高の影響で消費者が節約志向に傾いたためだと思われる。

物価高の影響で、23年の名目GDPは591兆4820億円。前年比では5.7%も増加した。ところが、これをドル換算すると4兆2106億ドルに。ドイツのGDPを2500億ドルほど下回った。新聞やテレビは「ドイツに抜かれ、世界4位に後退」と大きく報道している。しかし、これは円の対ドル相場が異常に安くなっていることが原因だ。だから円相場が少し上がれば、すぐに3位に戻る。なにも仰々しく騒ぐことはない。

それよりも重要なのは、1人当たりGDPが減少し続けていること。00年にはG7(主要7か国)でトップだったが、22年には最下位。それどころかOECD(経済協力開発機構)38か国中、なんと21位にまで落ち込んだ。円安の影響だけでは、とても説明できない。1人当たりGDPは、その国の国民の平均的な生活水準を表わすと言ってもいい。だから重大なのである。GDP速報が提起した問題は、まだある。

                          (続きは明日)       

        ≪22日の日経平均 = 上げ +836.52円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】
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政府 vs 民間 : 24年度経済見通し

2024-01-06 07:54:56 | 景気
◇ 実に重大な官民予測の相違 = 政府は昨年末の閣議で「24年度の経済見通し」を了承した。それによると実質GDPは568兆円となり、18年度の555兆円を抜いて過去最大になる。実質成長率はプラス1.3%で、23年度の見込みプラス1.1%を上回る見通し。賃上げと減税の効果によって個人消費が1.2%増加、企業の設備投資も3.3%増加する。一方、消費者物価は前年度比2.5%の上昇になると予測している。

日経センターは昨年末、民間エコノミスト38人が発表した24年度の経済見通しを集計した。それによると、実質成長率の平均予想値はプラス0.88%。消費者物価の上昇率は前年度比2.2%の上昇だった。毎年のことだが、政府の予測は民間より高く出る傾向がある。というのも成長率の予想を高めにしないと、税収の見積もりが増えず新年度予算を編成しにくくなってしまうからだ。だが、それにしても、今回は官民の相違が大きすぎる。

しかも、この相違はもっと重大な問題につながってくる。政府見通しによると、減税と賃上げの効果で、所得も3.8%増加する見込み。一方、物価は2.5%の上昇という見通しだから、所得の増加率が物価の上昇率を上回る。岸田首相が待望する「経済の好循環」が始まる予測になっているわけだ。しかし民間の予測では、そうならない。

最近は大幅賃上げを伝えるニュースも多い。しかし、主として大企業が中心の話だ。雇用の7割以上を支える中小企業の大多数は、そんなに大幅な賃上げは無理。したがって全体としての所得は、それほど増えない。その反面、人手不足で賃金が上がるとしても、その分は価格に転嫁される。だから物価はもっと高くなる可能性が大きい。すると「賃上げ>物価」の好循環は、実現しない。民間エコノミストの多くは、こう考えているのだろう。

        ≪5日の日経平均 = 上げ +89.13円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝0敗】     
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対照的だった ‟短観”と‟毎勤”

2023-12-19 07:57:11 | 景気
◇ 賃上げが物価高を超えるのは難しい = 日銀が発表した12月の短観(企業短期経済観測調査)は、明るく輝いてみえた。大企業・製造業の業況判断指数は3期連続の上昇でプラス12。大企業・非製造業はプラス30で、なんと32年ぶりの高さ。これまでマイナスに沈んでいた中小企業・製造業もプラス1となり、ようやく水面上に顔を出した。要するに、企業の景気は非常によろしい。

一方、厚生労働省が発表した10月の毎月勤労統計は、うす暗くよどんでみえた。1人当たりの実質賃金は、前年比で2.3%の減少。これでマイナスは19か月連続となった。現金給与総額は27万9172円で、前年比1.5%増加している。しかし物価が3%以上も上昇したため、実質でみるとマイナスになってしまう。要するに、家計は非常に苦しい。

企業の景気がよくなった原因は、いろいろ考えられる。たとえば企業努力による新製品の開発や新市場の開拓など。だが一般的にみて、円安や値上げの恩恵に浴している部分も少なくない。その半面、家計は円安と値上げによる物価上昇で、19か月間も実質的な収入を減らしている。要するに、円安と値上げは最終的にすべて家計が負担していると言ってもいい。

景気のいい企業がもっと賃上げをすれば、実質賃金がプラスになる。すると消費が増えて、企業の利益がさらに増える。これが岸田首相が言う‟経済の好循環”だ。しかし、その実現はかなり難しそう。人手不足で賃上げは進むかもしれないが、企業は人件費の増加分を値上げでカバーしようとする。だから物価も上がってしまう。家計の実質収入が恒常的にプラスになる可能性は、ないに等しいのではないか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +460.41円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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持続性に欠ける 6%経済成長

2023-08-16 07:39:30 | 景気
◇ 物価高で伸び悩む個人消費 = 内閣府は15日、ことし4-6月期のGDP速報を発表した。それによると、年率換算した実質成長率は6.0%で、事前の予測を大きく上回った。四半期の成長率が6%に達したのは、20年10-12月期以来のこと。ただ内容をみると、外需の貢献度が7.2%だったのに対して、内需はマイナス1.2%と振るわなかった。このため7-9月期以降もプラス成長を持続できるかどうか、疑問視する専門家も少なくない。

GDPの構成項目をみると、いずれも年率換算で個人消費は2.2%の減少。住宅投資は7.7%の増加、企業の設備投資は0.1%の増加、輸出は13.6%の増加、輸入は16.2%の減少だった。コロナの5類移行で経済の正常化が進んだのに消費が減少したのは、物価高の影響が大きい。また輸入が大幅に減少したのは、原油の国際価格が下がったため。このように燃料の輸入価格が減ると、成長率は上向く。このことは銘記しておく必要があるだろう。

ことし4-6月期の実質成長率はアメリカが2.4%、ユーロ圏が1.1%、中国が3.2%だった。したがって日本の6.0%成長は断トツに高い。だが今後もその優位を持続できるかというと、かなり覚束ない。というのも物価高で実質所得が伸びず、消費の委縮は続きそう。加えて原油の国際価格が上昇し始めたから、輸入の減少も期待できないからだ。

高い成長率を持続するためには、まず物価を下げて消費の回復を計ること。次いで輸入燃料を減らうようなエネルギー政策を推進することが肝要だ。しかし政府・日銀は、それと反対の方向に動いている。補助金をいくら出しても、物価上昇の原因には触れない。ゼロ金利政策に固執して円安を放置、輸入価格を引き上げている。だから企業も安心して設備投資を増やせない。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +178.98円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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