経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

巨大な新年度予算が成立

2023-03-31 07:20:15 | 予算
◇ 財政状態は悪化するばかり = 一般会計の総額が114兆3812億円。この巨大な23年度予算案が28日、国会を通過し成立した。22年度の当初予算と比べて6兆7849億円の増加。11年連続で過去最大を更新した。税や税外収入ではとても賄い切れず、今回もまた国債を35兆6000億円発行して資金を調達することになった。この結果、日本の財政状態はいっそう悪化する。

少子高齢化の進行で自然に増加する社会保障費は36兆8000億円。また国債費も25兆2000億円に増加した。新規の政策としては、国際緊張の高まりを映して防衛費が6兆7000億円へと急増。少子化対策と物価対策にも多額の予算が計上された。たとえば少子化対策には3兆1412億円、物価対策には2兆2226億円(財源は22年度予算の予備費)の経費を見込んでいる。

コロナの沈静化で、主要国の社会・経済活動はほぼ正常化した。これに伴い各国はコロナ対策を打ち切ることにより、財政赤字の縮小に動き出している。アメリカやイギリスなど、すでに赤字の縮小を公約した国も多い。ところが日本はまだコロナ対策を引きずっており、そこに物価対策が上乗せされた。だから財政状態は改善しない。

国債の発行残高は1000兆円を突破した。しかし日銀がその52%を買い取っているから、国債は品薄になり価格は下がらない。このため財政節度が失われ、財政再建の意欲も盛り上がらない。専門家のなかには「タガが外れた」と嘆く人もいる。いったい日銀は、どこまで国債を買い進めるつもりなのか。こんな状態を、いつまで続けられるのか。心配だ。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -100.85円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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見せかけの インフレ鈍化

2023-03-30 07:59:03 | 物価
◇ 補助金は持続不可能性 = 総務省が発表した2月の消費者物価は、生鮮食品を除いた総合指数で前年比3.1%の上昇だった。この上昇率は1月の4.2%から大きく縮小しており、インフレの鈍化を歓迎する論評も少なくない。ただ、これは政府が2月徴収分から実施した電気・都市ガス代の補助金による効果。むしろ生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は3.5%の上昇で、1月の3.2%より上げ幅を拡大している。

政府の補助金は電気と都市ガス事業者に支給され、その分だけ料金が下げられる仕組み。標準世帯で毎月3700円の引き下げが見込める計算。期間は2月徴収分から10月徴収分まで。予算総額は約6兆円。政府はほかにもがガソリンや小麦にも補助金を出して、価格を下げている。いまや補助金満開の感すらあるが、その財源は税金と国債だ。

この物価高の世の中で、少しでも電気やガス代が安くなることは喜ばしい。しかし大問題なのは、政府が補助金にばかり頼っていて、物価高を抑えるための構造的な改革を怠っていることだ。たとえば原子力や再生可能エネルギーによる発電を増やして、原油や石炭の輸入を少しでも減らそうと努力しないのはなぜだろう。補助金は永久に出し続けることは出来ない。

消費者物価が発表されたのと同じ日、経済産業省は再生エネルギーの賦課金を3円45銭から1円49銭に引き下げると発表した。これは再生エネルギーの普及を図るため、電気料金に賦課金を上乗せ徴収している制度。これを引き下げることで、家庭の電気代は月820円安くなるという。だが、それだけ再生エネルギーの普及は阻害される。ここでも目先のことしか見ない政府の姿勢が、はっきりと表れた。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +365.53円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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FRBも 二刀流! (下)

2023-03-29 08:04:14 | アメリカ
◇ 景気後退の可能性が強まる = 政策金利が5%にまで上昇したことで、景気に対する抑制効果はかなり大きくなったと考えられる。さらに金融不安が解消されず、金融機関の貸し出し態度も厳しくなるに違いない。その結果、アメリカ経済が景気後退に陥る可能性は、いちだんと大きくなった。たとえばバンク・オブ・アメリカが機関投資家を対象に実施した調査では「スタグフレーションに突入する」とみる回答が88%にものぼった。

金融不安も、なかなか解消しない。FRBによると、金融機関全体の債券含み損は6200億ドル(約80兆円)に達した。また中小銀行からの預金流出額は15日までの1週間で1200億ドル(約15兆円)に及んでいる。この流出額はリーマン・ショック時の2倍というから大変だ。これらの中小銀行はFRBから多額の融資を受けて預金の支払いに応じているが、引き出された預金の多くは大銀行や金などの安全資産に移し替えられている。つまり消費や設備投資には、ほとんど回っていない。

ヨーロッパに飛び火した金融不安も、まだくすぶっている。クレディ・スイス銀行の問題はUBS銀行による買収で決着したが、総額160億スイス・フラン(約2兆3000億円)の劣後債は紙くずになってしまった。このためヨーロッパ中の銀行が発行した劣後債が売られ、平均利回りは10%近くに上昇。さらに銀行株は一斉に大幅下落した。この先6月には多くの劣後債が償還期限を迎えるため、‟6月危機”も心配さrれている。

景気後退と金融不安の同時進行。資金は一斉に安全資産へ避難し始めた。信用度の高い債券や金、株式でも景気敏感銘柄は敬遠されハイテク株が買われる。また安全資産の1つが日本の国債。国債の価格が上昇、金利は下落した。円の需要が増えて、円相場は上昇気味となっている。世界経済はしばらくの間、混迷の海を泳がなければならない。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +41.38円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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FRBも 二刀流! (上)

2023-03-28 07:48:39 | アメリカ
◇ 利上げの一方で量的緩和 = FRBは先週22日、政策金利の0.25%引き上げを決定。これで政策金利は5.0%、15年半ぶりの高さに上昇した。金融不安よりもインフレ抑制を優先する姿勢を鮮明にしたことになる。声明文では前回の「継続的な引き上げが適切」という一文が削除されたことから株価は上昇したが、あとの記者会見でパウエル議長が「年内の利下げはない」と言明したため、結局は530ドルの大幅な値下がりに終わった。

ところが23-24日、株価は反発した。FRBが23年末の見通しで「政策金利は5.1%程度」という数値を維持したことが改めて評価された。これなら年内の利上げはあと1回、引き締めの終了は近いと想定できるからだ。さらに市場は、FRBが金融機関に対して実施する貸し出しについても注目した。この貸し出しワクは従来からのものと、設立されたばかりの緊急融資ワクの2つがある。

緊急融資ワクは金融不安に対処するため、シリコン・バレー銀行が破たんした直後に新設。経営が苦しくなった金融機関に破格の条件で融資する制度。FRBによると、融資残高は22日時点で536億ドル(約7兆円)にのぼった。また従来からの貸し出しワクでは、1102億ドル(約14兆3000億円)が融資されている。

もちろん、これらの融資は金融機関の倒産を防ぐためのものであって、景気対策とは関係がない。しかしFRBから資金が市中の金融機関に流れるという点では、量的金融緩和と全く変わらない。FRBは昨年6月から市場で国債などを売却する量的引き締めを実施してきたが、その半分に近い資金を放出した形。いわばFRBは、利上げと量的緩和の二刀流を使い始めたことになる。ここから、どんな影響が生じるのだろうか。

                      (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 上げ +91.62円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2023-03-27 07:24:48 | 株価
◇ FRBに敬意を表したNY市場 = ダウ平均は先週376ドルの値上がり。FRBが政策金利の0.25%引き上げを決めた22日だけは530ドルと大きく下げたが、あとは上昇。FRBに敬意を表した形となった。前半は政策金利の据え置きを期待、後半は利上げの終了が近づいたという読みから買われている。ただ金融不安は終息していないという見方も根強く、債券市場にも資金が流入して金利が大きく下落した。

日経平均は先週51円の値上がり。22日は金融不安が一段落したという安心感から大幅に上げたが、あとは下落。ニューヨークとは全く反対の動きとなった。金融不安の持続を警戒する海外投資家は売りに回ったが、国内投資家の押し目買い意欲は衰えていない。金融不安に対する警戒感も、海外投資家ほど強くはないようだ。

アメリカでは経営破たんに陥った中堅銀行に対する緊急対策が奏功、国内投資家はこれを評価している。しかしクレディ・スイス銀行の破たんは、ヨーロッパ各国の金融機関にまだ影響が及びそう。海外投資家はこちらを重視しているようだ。したがって、今週はヨーロッパの金融市場に注目が集まるだろう。また東京市場では、円高の進み具合に注意が必要だ。

今週は27日に、2月の企業向けサービス価格。31日に、2月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数。アメリカでは28日に、1月のFHFA住宅価格指数、3月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、2月の中古住宅販売。30日に、10-12月期のGDP確報値。また中国が31日に、3月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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