経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

バラマキ政策の 限界

2023-09-30 07:31:57 | 政治
◇ それでも内閣の支持率は上がらなくなった = 岸田内閣は10月末までに、新しい経済対策を作成することになった。総選挙に備えて、なんとか国民の支持率を上げようという意図が見え隠れしている。だが、この対策で内閣の支持率をどのくらい上げられるだろうか。おそらくは岸田首相が期待するほど、上がらないのではないか。その理由は国民がこの種のバラマキに慣れてしまい、あまり評価しなくなった。経済学でいう収穫逓減の法則が働き始めているためだ。

岸田首相は対策の大枠として、5つの柱を掲げた。そのトップが物価高対策。ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑えるため、政府が補助金を支給する。当面の痛みを和らげることは出来るが、コトの本質はなにも改善しない。だからバラマキと評される。しかし消費者にとっては有難いことだから、内閣の支持率は上がる。だが何回もバラマキを実施したため、消費者は慣れてしまい、「もっと物価が下がってもいいのでは」とさえ思うようになってきている。

またガソリンを使わない人、補助金が出ないプロパンガスの利用者などからは、不公平だという不満も高まってくる。しかし財源の問題もあって、政府としてはこれ以上バラマキを広げられない。そこで今回は半導体や蓄電池などに対する投資減税なども、対策に追加した。これは歓迎すべきことだが、その具体策はまだ不明。

かつての自民党は、こうした成長投資を重視してきた。世帯への現金給付や補助金といった政策は、どちらかと言うと野党の専売特許。それが最近は自民党の常套手段に。このため野党は主張すべき政策を失い、元気がない。内閣に対する支持率が落ちても、自民党への支持率があまり変わらない原因だと言ったら、言い過ぎだろうか。

        ≪29日の日経平均 = 下げ -14.90円≫

        【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     
  
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財源と実効性が 弱点 : 新経済対策

2023-09-29 07:46:32 | 景気
◇ 成長政策を挙げたのは進歩だが = 岸田首相は26日の閣議で「新たな経済対策を10月末までにまとめるよう」関係閣僚に指示した。対策では①物価高対策②持続的な賃上げと地方の成長③国内投資の促進④人口減少を乗り越える社会変革⑤国民の安心・安全の確保--の5本柱を軸とする方針。物価対策などのバラマキだけでなく、投資の促進など成長戦略にも力を入れる点は一つの進歩。だが脱炭素に向けた項目がないのは、どういう訳だろうか。

物価高対策は、ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑える補助金の支給。これまで計9兆3000億円の予算を組んだが、これをどこまで延長するのか。また賃上げ支援は、賃上げした企業への減税を考えているようだが、税金を払っていない企業をどうするのか。さらに人口減少を乗り越える変革に、少子化対策を含めるのか。含めるとしたら巨額の財源が必要になってくる。こうした問題点が数多い。

最大の問題は財源。具体策が固まっていないから算定できないが、過去の経験からすると少なくとも20兆円は必要だろう。政府は予備費の使い残しや税収増で、その半分ぐらいは埋めるつもり。あとはまた国債の増発に頼ることになる。いずれにしても、選挙を控えて物価対策などのバラマキは止められない。困ったことである。

国内投資の促進では、半導体や蓄電池あるいはバイオ関連を対象に、企業のコストを削減するための投資減税を考えているようだ。まずはこの部門に、いくらの財源が割り当てられるかに注目。それによって政府の真剣度が見えてくる。ただ半導体にしてもバイオにしても範囲は広い。どこに集中して支援するか。そこをはっきり決めないと、この分野でもバラマキが起こってしまう。要は実効性である。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -499.38円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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どうする? 中国製EVの安売り (下)

2023-09-28 07:28:19 | 自動車
◇ EUは中国政府の補助金を調査へ = EUは9月13日「中国のEVが不当に安い価格で販売されている可能性がある」という理由で、中国政府による補助金を調査する方針だと発表した。EUはかなりEV化が進んでいるが、なかで中国製のEVは全体の8%を占めている。調査の結果「不当に安い価格」と認定されれば、EUは中国製EVに対する輸入関税を引き上げることになりそうだ。もちろん、中国政府は強く抗議している。

いま世界最大のEVメーカーはアメリカのテスラ、次は中国のBYDである。しかし国という単位からみると、中国が圧倒的に世界一だ。たとえば22年のEV販売台数は中国が453万台だったのに対して、EUが156万台、アメリカは80万台、日本は5万4000台に過ぎない。そして中国のEV化ガ急伸した大きな理由が、政府による製造・販売両面での減税・補助金だったことは周知の事実と言えるだろう。

EUはやっと、この点を問題視し始めたわけだ。ところがEVに対する手厚い支援は、アメリカ政府も実施している。しかも減税や補助金の対象は、部品などを北米で調達し、アメリカ国内で組み立てたEVに限るという厳しさ。中国の産業保護と比べても、どっちもどっちという感じ。もっともアメリカの場合は、海外メーカーでもこの条件を満たせば支援を受けられるが。

日本も立場としては、EUと同じ。だがコトを荒立てれば、日中関係がさらに悪化してしまう。したがって当面、政府は黙認することになるだろう。しかし仮にBYDが得意の安売り戦術で急速に販売を伸ばしたとき、どう対処するのか。政府は難しい判断を迫られることになりそうだ。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +56.85円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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どうする? 中国製EVの安売り (上)

2023-09-27 07:22:57 | 自動車
◇ 中国BYDが日本市場に本格参入 = 中国のEV(電気自動車)メーカーBYD(比亜廸)は先週20日、コンパクトEVのドルフィンを日本で発売し始めた。試乗した専門家によると、急発進の防止装置もついており品質はいいという。その大きな特徴は、フル充電した場合の航続距離が400㌔㍍と長いこと。また価格が363万円からと安いことだ。日本政府や東京都の補助金を使えば230万円台で購入できることになる。

BYDは深圳市に本拠を構える中国のEV専業メーカー。アメリカのテスラに続く世界第2位の販売台数を誇っている。日本へはことし1月に上陸、スポーツ車を売っていた。それが今回は小型普通車で参入。日本市場の本格的な開拓を目指す。専売店も増やし、24年3月までに1100台を販売する方針だという。迎え撃つのは日本の各メーカーだが、どうも準備万端とはいっていない。

先進国のなかでも、日本のEV普及率は際立って低い。乗用車に占める割合は、まだ1.7%程度。日本のメーカーはガソリンと電気を併用するハイブリッド車の生産体制を確立したため、EV生産への移行が遅れてしまった。このため外国メーカーがどっと参入、たとえばことし1-7月では計1万0561台を販売。前年比90%の増加となった。モデル数をみても海外メーカーは計95に及ぶが、日本車はまだ10モデルに過ぎない。

これらの車種は、高級車と軽自動車に分かれていた。テスラやベンツやトヨタなどは500万円以上の高級車、日産などは200万円台の軽自動車。この間隙を突いて、BYDは小型の普通車を投入してきたわけだ。その戦略が功を奏するかどうかは不明。日本にはなじみの薄いメーカーだから、浸透は難しい。いや、安いからけっこう売れるなど、専門家の意見も割れている。そして見落とせないのは、この参入が大きな政治問題に発展する可能性を秘めていることだろう。

                      (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -363.57円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
  
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植田総裁は 説明が下手すぎる

2023-09-26 07:18:55 | 日銀
◇ 国民には何も伝わらない = 日銀は先週20日に開いた政策決定会合で、ゼロ金利政策を中心とする金融緩和政策の継続を決定した。植田総裁は会合後の記者会見で、その理由を「企業の賃金・価格設定行動の一部に従来より積極的な動きが見られ始めているが、物価安定の目標の実現を見通せる状況には至っていない。だから粘り強く金融緩和を続けて行く」と説明した。だが、この説明を聞いて「なるほど、よく判った」と感じた人が何人いただろうか。

また「マイナス金利解除の条件は?」の質問には「物価目標の実現が見通せる状況になった場合には解除も視野に入るが、それがどういう変数とどうひもづいて短期金利がどのくらい動かなといけないのか。まだ決め打ちできる段階ではない」と、理解不能な答え。さらに「マイナス金利解除とYCC(イールドカーブ・コントロール)修正はどちらが先か?」については、あっさり「さまざまなオプションがある」と、はぐらかせた。

びっくりしたのは、為替市場の動向を聞かれたときの答え。「われわれの物価見通しにも影響を及ぼすものであるという観点から、常に注視している」と、まるで傍観者のような姿勢。日銀のゼロ金利政策と為替相場は、全く関係がないような口ぶりだった。いま円の対ドル相場が148円台に下落したことから輸入物価が再び高騰、庶民はガソリンや電気・ガス代の値上がりに苦しんでいることなど、気にかけていないようにも見受けられた。

日銀は「賃上げ率が物価上昇率を上回るような状態で、物価が2%程度の上昇に落ち着くこと」を目標にしている。だが、その達成は「まだ見込めない」という。そして足元では物価が3%以上も上昇、企業も個人も苦しんでいる。いまは物価の引き下げに全力を集中すべきなのではないか。物価が下がれば「賃上げ>物価」の状態も達成できる。そもそも中央銀行は物価を引き下げて、通貨価値の安定を図ることが最大の使命のはず。植田さんに、ここのところを聞いてみたい。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +276.21円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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