経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

株高で増えた 個人の金融資産

2023-07-14 07:22:03 | おカネ
◇ 2043兆円という恐るべき金額 = 日銀が発表したことし1-3月期の資金循環統計によると、個人が保有する金融資産は3月末時点で合計2043兆円だった。前年比1.1%の増加で、過去最高の金額。内訳は現金・預金が1107兆円で1.7%の増加。株式が226兆円で2.7%の増加、投資信託は90兆円で0.6%の減少だった。相変わらず現金・預金に対する志向が強いが、そうしたなかで株式の価値増大が目立っている。

ところが22年度の株価は、それほど好調ではなかった。たとえば日経平均は、年度を通じて0.8%の上昇にとどまっている。またダウ平均は4.5%下落している。平均株価がこんな調子なのに、なぜ個人の保有する株価が2.7%も増加したのだろう。もっとも資金循環統計は、個人=法人=政府間のカネの流れをマクロ的に掴んだもの。だから誤差が出るのかもしれないと考えていた。

東京・名古屋・福岡・札幌の4取引所が6日、22年度の個人株主数を発表した。それによると、株主数は6982万人で過去最大に。前年より521万人増加した。そして3月末の保有残高は131兆2553億円、前年を10兆0530億円上回ったという。ここで注意すべき点は、各取引所の間で名寄せが出来ていないこと。だから株主数は延べ人数で大きく出る。しかし保有残高やその伸び率には、影響がないはずだ。

資金循環統計には、非上場の株式や外国株式への投資も含まれる。証券取引所の発表には、海外投資の一部がカウントされないのかもしれない。だが、それにしても誤差が大きすぎる。経済統計にはよくあることだと言ってしまえばそれまでだが、なんとも落ち着かない。株高が個人の金融資産をかさ上げしたことは、確かなのだが。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +475.40円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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おカネが 減り始めた! / アメリカ (下)

2023-02-22 07:51:54 | おカネ
◇ 日本経済への影響は未知数 = FRBは昨年3月、インフレ抑制のための金融引き締め政策に踏み切り、政策金利を引き上げ始めた。さらに5月からは量的引き締めを開始、毎月950億ドルの国債と住宅ローン担保証券を市場に売り戻している。その結果、これまでの推移をみると、通貨の流通量は毎月800億ドルほどのペースで減り続けている。

いまニューヨーク市場では、FRBの利上げテンポが今後どうなるかに最大の関心が寄せられている。大方の見方は「ことし前半に0.25%の利上げが2回、あとは年末まで多くても1回の利上げ」というもの。しかし利上げのテンポは緩んでも、量的引き締めについての情報は乏しい。市場としては、量的引き締めに関するFRBの方針にも注目せざるをえなくなった。

通貨流通量の収縮は、ヨーロッパでも始まっている。ユーロ圏のM2は昨年12月、前月比で0.4%減少。ECB(ヨーロッパ中央銀行)による金融引き締めの影響が、明白に出始めた。またOECD(経済協力開発機構)の集計でも、加盟国のM1(現金・預金など)が昨年11月から減少し始めたという。

こうした世界的な通貨流通量の減少が日本経済に及ぼす影響は、予測が困難だ。たとえば円相場に与える影響だけをみても、アメリカの物価上昇が鈍化すればドル高につながると考えられる。だが、その一方で低金利の資金調達が可能なのは日本だけに。すると円に対する需要が高まって円相場は上がるとも想定できる。このように予測は困難だが、いずれにしても大きな影響を受けることは避けられないだろう。

        ≪22日の日経平均 = 下げ -368.78円≫

        
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おカネが 減り始めた! / アメリカ (上)

2023-02-21 08:31:10 | おカネ
◇ 量的引き締め政策の効果が現われる = アメリカでは、通貨流通量の減少に大きな関心が寄せられている。FRBの量的金融引き締め政策によって市中のおカネが吸い上げられ、しだいに流通量が減ってきた。これが物価や株価などにどう響くか。政策金利の引き上げは、いわば顔面パンチ。これに対して量的引き締めはボディ・ブロウ、じわじわと効いてくる。

FRBの発表によると、昨年12月の通貨流通量M2は21兆2074億ドルだった。M2というのは、現金や普通預金、それに個人向けMMFなどを合計した通貨の流通量。要するに、個人や企業がすぐに使えるおカネの総量だ。FRBが量的引き締めを開始した昨年5月が21兆7397億ドルでピーク。そこから5323億ドル、率にして2.5%減少した。

通貨の流通量が減ると、おカネの価値が上がるから、物価には引き下げの力が働く。だが同時に株式や暗号資産、不動産や商品なども下がりやすくなる。これらの市場価格は、金融緩和政策とコロナ対策による現金給付でバブル症状を呈していた。それが逆方向に巻き戻されることになるからだ。

流通量はピーク比で、まだ2.5%しか減少していない。だから、これまではその影響をあまり感じなかった。しかし最近は暗号資産が売られ、高級な装飾品や時計の売れ行きが落ちてきている。これは「おカネの流通量が減った結果だ」という指摘も。この調子で通貨の流通量が減って行くと、どうなるか。FRBの利上げにばかり気を取られてきた市場も、ようやく量的引き締めの影響を重視するようになってきた。

                         (続きは明日)

        ≪20日の日経平均 = 上げ +18.81円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫、
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NISA改正は 誰のため?

2022-12-29 07:41:00 | おカネ
◇ 成長政策がなければ意味がない = NISA(少額投資非課税制度)を、大幅に改正することが決まった。年間投資ワクを、積み立て型は40万円から120万円に、一般型は120万円から240万円に引き上げる。両者を使うと、年間360万円の投資が非課税となる。さらに、この制度を恒久化し、生涯の投資限度を1800万円とした。こうした大改正は、24年1月から実施される。

このNISA大改正は、岸田首相の強い意向によって実現した。6月末時点でNISAの口座数は約1700万、投資総額は28兆円。非課税ワクを大幅に拡大し、個人の資金を‟貯金から投資へ”強く誘導することを狙っている。だが実際には、すでにNISAのワクを使い切っている投資家が、手持ちの株式をNISAに移動させるケースが多くなりそうだ。これだと‟貯金から投資へ”にはならず、富裕層が非課税の恩恵を受けることになってしまう。

10月の毎月勤労統計をみると、パートタイム労働者は1635万人。全労働者に占める比率は31.64%にも達する。これらの人たちの平均的な月収は9万9556円だ。例外はあるかもしれないが、これではNISAを利用する余裕もないに違いない。したがって今回のNISAの大改正は、約3分の1の労働者には恩恵が及ばないことになる。

こうした人たちにもNISAの恩恵を受けられるようにするには、まず所得の増加が必要。そのためには成長政策が伴わなければならない。また‟貯金から投資へ”が進んだとしても、企業が設備投資や人件費を増やさなければ意味がない。このためにも成長政策が必要だ。NISAの改正は結構だが、いまの岸田内閣には肝心の成長政策が欠けている。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -107.37円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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‟死に金” 1400兆円を 動かせ!

2022-07-07 08:10:19 | おカネ
◇ 政府が最新鋭技術基金を立ち上げる = 日銀の集計によると、個人の金融資産は3月末時点で2005兆円だった。前年比2.4%の増加。このうち現金・預金は1088兆円と相変わらず多く、全体の54.3%を占めている。一方、金融機関を除く民間企業の金融資産は1253兆円。このうち現金・預金は323兆円だった。個人と企業を合わせた現金・預金は1411兆円にも達するが、そのほとんどが日本経済にとっては何の役割も果たしていない。

いま仮に1000万円を定期預金しても、年間100円の利子しか貰えない。だから個人や企業の現金保有が多くなる。だが、このおカネは何の働きもしておらず、全くの‟死に金”。銀行も貸出金利が低いから、貸しても儲からない。だから積極的に貸出先を探さず、国債や海外の証券に投資してしまう。日本経済のためには、ほとんど役立っていない。

こんな‟死に金”の1400兆円が半分でも動き出せば、日本経済は再び世界経済の先頭に立てるだろう。政府はこの点に注目し、努力を傾注すべきではないのか。それにはまず大量の‟死に金”が発生している原因を追究し、それを生きた経済に放出するための施策を構築する。早急にやってもらいたい。

思い付きの一例を挙げる。GPIF(年金積立金管理運営独立行政法人)や政策投資銀行など、それに民間企業も参加して、最新鋭技術開発基金を設立。年利2%の債券を発行する。総額は100兆円。政府が元本を保証する。債券を購入できるのは、個人と中小企業だけ。たとえば各種電池の技術開発と新製品の製造に特化する。こうすれば‟死に金”の多くが生き返り、日本経済の将来に大きく貢献できるのではないか。すぐ実行すべし。

        ≪6日の日経平均 = 下げ -315.82円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ
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