経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

リラの花散るころ : 新興国に試練 (上)

2018-05-31 07:21:26 | 新興国
◇ 当面の標的にされたトルコ・リラ = アメリカの高金利に吸い寄せられて、新興国からの資金流出が加速している。多くの新興国が為替介入や利上げに踏み切り、自国通貨の防衛に必死。すでにアルゼンチンはお手上げの状態となり、IMF(国際通貨基金)に支援を要請した。続いて苦境に立たされたのがトルコ。通貨のリラは年初に比べて23%も下落、過去最安値に沈み込んだ。6月24日には大統領選と国会議員選挙を予定しているが、情勢が好転する見通しはない。

ほかにもブラジル、フィリピン、インドネシア、ロシア、メキシコ、南アフリカ、香港などの通貨が売り込まれている。これらの国や地域に共通しているのは、財政赤字や物価高を伴う国内経済の不振、あるいは政治的な不安定だ。最も国内経済の不振に悩んでいたアルゼンチンは政策金利を年40%にまで引き上げたが、通貨ペソの下落を止めることが出来なかった。いまIMFが支援策を検討している。

トルコも巨額の経常赤字と政治リスクを抱えている。強権政治で知られるエルドアン大統領は非常事態を宣言、選挙を強行することになった。しかし大統領に再選されたとしても明るい展望は見えず、むしろ事態はさらに悪化する可能性も大きいとみられている。こうした状況下で、高金利につられてトルコに投資していた日本のファンドも続々と資金を引き揚げているという。

新興国からの資金流出は、アメリカの長期金利が3%に達した4月下旬から始まった。IIJ(国際金融協会)の集計によると、4月下旬だけで流出額は55億ドルにのぼった。5月に入って、その勢いが加速したことは間違いない。一方、4月下旬から5月中旬までの間に、アメリカをはじめ日本、ドイツ、フランスなどの先進国には、計180億ドルの資金が還流している。

                              (続きは明日)

       ≪30日の日経平均 = 下げ -339.91円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ

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外国人に触れない 労働力調査

2018-05-30 07:28:33 | 人手不足
◇ 重要な視点が欠落している = 総務省は29日、4月の労働力調査を発表した。それによると、就業者数は6671万人で前年より171万人増えている。前年比での増加は、これで64か月連続。失業者数は17万人減って180万人となった。失業者の減少は95か月の連続。人手不足の影響で、雇用関連の統計は驚くほどの好調さを維持している。だが、この絶好調はいつまで続くのだろうか。

日本の人口は減り続けている。4月時点の15歳以上人口は1億1098万人。前年より6万人減少した。この人口減少が、人手不足の根源となっている。にもかかわらず、就業者数は増え続ける。女性と高齢者が、働き始めたことが大きい。4月の統計をみても、男性は47万人の増加だったのに対し、女性は124万人も増えている。65歳以上の増加も74万人に達した。

しかし女性と高齢者の就業者が、無限に増えることはありえない。人口問題の専門家は「この傾向は限度に近づいており、2-3年後には増加が止まる」と予測している。とすれば、あとは外国人の労働力に頼るしかない。その外国人労働者は、すでに26万人が農業・建設・介護の分野で働いている。今後は急増するだろう。

ところが労働力調査では、外国人の状態が全く判らない。全国10万人を対象にした調査で、外交官や軍人を除く外国人は対象に入っているはずだ。しかし調査票には「外国人かどうか」を聞く項目がない。だから外国人が就業者のなかに何人おり、何人増えたのかは結果として出てこない。要するに、外国人労働者があまり問題にならなかった当時の調査法を変えていないわけだ。早急に改善する必要があるだろう。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -122.66円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ

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自動車の25%関税は 言い出し値?

2018-05-29 07:40:27 | トランプ
◇ トランプ流交渉術に慌てないこと = AさんはTさんから100万円を借りていた。ところが返済期限が来ていないのに「返せ」と言われて大弱り。返さなければ「今後Aさんの会社へは発注しない」と脅かされて、泣く泣く「50万円で勘弁してください」と頼み込む。すると「仕方がない。今回は大目に見てやろう」と、なんだか情けを施された具合になってしまった。トランプ大統領の外交を見ていると、こんな話を連想してしまう。

たとえば、鉄鋼やアルミに高い輸入関税をかけた。ところが2国間の貿易交渉でアメリカ側の言い分を呑めば、関税は猶予するという戦法。初めに高い言い出し値を提示、これを外交交渉のカードに使用する。これがトランプ流の交渉術だ。先週23日、トランプ大統領はまたまた同じカードを切った。安全保障上の理油から、輸入する自動車に高い関税をかけることを検討すると発表したのである。

その狙いは多岐にわたる。まずは中間選挙を控えて、自動車産業が集中するミシガン州など北西部の票集め。次にNAFTA(米州自由貿易協定)で再交渉中のカナダとメキシコに対する脅し。さらに近く開始する日本との2国間交渉への新たなカード。加えて日本やドイツなどの海外メーカーに、アメリカ国内での生産を拡大させる効果・・・。

注目すべき点は、発表で「これから検討する」と言っていること。また25%という税率はマスコミが報じているだけで、トランプ大統領は触れていないこと。さすがに「25%の関税を決定した」とは言いにくかったのに違いない。もう1つ気になるのは、中国がアメリカの要請を受け入れて、7月から自動車の輸入関税を15%に下げると発表したばかり。その中国がアメリカの関税引き上げに何も文句を言っていない。事前に暗黙の了解でもあったのだろうか。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +30.30円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ

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今週のポイント

2018-05-28 07:46:28 | 株価
◇ ショックの大きさに差 = トランプ旋風が、また株式市場を襲った。先週23日には、輸入自動車に25%の関税をかけることを検討すると発表。あくる24日には、米朝首脳会談の中止を公表した。いずれも株式市場にはショックを与えたが、ニューヨーク市場は軽く受け流した形。東京市場は深刻に受け止めている。この結果、ダウ平均は先週38ドルの値上がり。日経平均は480円の下落となった。

輸入自動車に対する高関税は、ウォール街では中間選挙対策だと受け止められた。また米朝首脳会談の中止も、トランプ流の駆け引きの一環だという見方が強い。だが日本の場合は、もし自動車に25%もの関税がかけられたら、自動車産業への打撃は大きい。また首脳会談の中止も、朝鮮半島でのリスクが高まれば地政学的にアメリカよりもずっと影響が大きい。こうした感覚の差が、株価の動きに反映された。

こうした政治的な出来事とは別に、日米の市場で金利高の悪影響が意識され始めたことは確かなようだ。特に6月に入ると、12-13日にFRBの政策決定会合が開かれる。ここで利上げが決定されることは間違いない。その影響でアメリカの住宅と自動車の売れ行きに、変化を生じるかどうか。また新興国からの資金引き揚げが、世界経済に混乱を惹き起こさないかどうか。

今週は28日に、4月の企業サービス価格。29日に、4月の労働力調査。30日に、4月の商業動態統計と5月の消費動向調査。31日に、4月の鉱工業生産と住宅着工戸数。1日に、1-3月期の法人企業統計と5月の新車販売。アメリカでは29日に、5月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。30日に、1-3月期のGDP改定値。1日に、5月の雇用統計とISM製造業景況指数。また中国が31日に、5月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-05-27 07:21:38 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪34≫ 純金の家 = ずっと考えてきたけれども、まだ解らないことがいくつかある。その1つは、人々が望んだモノをロボットたちはすべて造れるのかという疑問だ。どんな材料でも入手できるのだろうか。食料品や家具などは、たしかに工場で生産されていた。しかし、たとえば純金の家が欲しいと言ったら・・・。

その晩、この疑問をマーヤにぶつけてみた。するとマーヤは首をかしげながら、こんな話をしてくれた。
「もう50年ぐらい前のことですが、ある人が純金の家を建てて欲しいと言ったそうです。たちまちロボットたちが純金の資材を運び込んで、金ピカの家が建ち上がりました。多くの人が見物に訪れましたが、その人は1年も経たないうちに純金の家を壊して引っ越してしまったんです。

冬になったら寒くて仕方がない。暖房を入れると、柱や壁までが熱くなってしまう。夏になったら暑くてどうしようもない。冷房を入れると、家中が凍り付く。こんな住みにくい家はない、というのが引っ越しの理由でした。話を聞いた人たちも、大笑いしたそうです。それから純金の家を注文する人は、ひとりもいません。面白い話ですが、本当にあったこと。純金の家でも造れることは確かですよ」

――へえ、ほんとかね。そんなに沢山の金をどこから手に入れるのだろう。この小さな島に、大きな金山があるとは思えないが。
「そこまでは私も知りません。どこに行けば判るのか、調べておきましょう」

その結果、この島の北側に“金属精錬所”があることが判明した。マーヤが壁に航空写真を映し出すと、海岸沿いにかなり大きなドーム状の建物が3つ並んでいる。いずれも東京ドームほどの大きさだ。ここからは例の完全自動車で1時間足らずの距離である。

数日後、ぼくとマーヤはその巨大な精錬所を訪れた。出迎えてくれたのは、リーストという名前のロボット。この精錬所の所長だという。驚いたことに、この精錬所は約100体のロボットが管理しており、人間は1人もいないのだと説明された。 

彼女の胸には≪51≫のプレート。実にキビキビしていて、見ていて気持ちがいい。
「食品工場などと違って、この工場では動くものが見えません。すべての作業が太い管のなかで、自動化されています。ですから工場の全体を見ていただくしかありません。そのため、このエレベーターで天井にまで昇ります。さあ、どうぞ」

                               (続きは来週日曜日) 

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