経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

EV戦線 異状あり

2024-04-20 07:28:43 | 自動車
◇ 日本メーカーに再浮上のチャンス = EV戦線のトップを走っていたアメリカのテスラが不調に陥った。業績の不振から、世界で従業員の10%以上を削減する方針を発表、大きな反響を呼んでいる。1-3月期の世界販売台数は38万6810台、前年より9%減少した。お膝元のアメリカでは充電網の整備が遅れているところへ、金利が上昇して需要が減退。中国ではBYD(比亜迪)などの値下げ戦略に対抗できなかった。

BYDは中国のEVトップ・メーカー。1-3月期の販売台数は、輸出も含めて30万0114台。前年比は13%の増加だった。まだ販売台数でテスラに及ばないが、少なくとも中国市場では優位に立った。しかし、そのBYDも昨年1-3月には販売を84.8%も増やしており、ことしは勢いが弱まっている。これは世界的に金利が上昇、さらにアメリカやEUで補助金が打ち切られたことによると考えられている。

代わりに勢いを強めているのが、ガソリンと電気を併用するHV(ハイブリッド車)だ。調査会社マークラインズによると、23年の中国・アメリカ・ドイツ・フランス・イタリア・イギリス・日本のEV総販売台数は776万台。前年より22%増加した。一方、HVは合計954万台で前年比36%も伸びている。燃料の補給に心配がなく、価格も比較的安いことから、人気が再燃したようだ。

HVの製造技術は、日本メーカーが完成した。このためトヨタをはじめとする日本メーカーはHVに焦点を合わせ、EVの開発を疎かにした時期があった。結果的にEV戦争では周回遅れになったと言える。それがいま突如として、HVに日が当たってきた。日本はこのチャンスを活かすと同時に、EVが復権するときに備えて車載用電池の開発に全力を挙げることが賢明だと思う。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -1011.35円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     
   
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅳ)

2024-01-26 07:28:25 | 自動車
◇ 車載電池が最後の決戦場 = 日本自動車工業会の集計によると、23年の新車販売台数は477万9080台。前年比14%の増加だった。このうちEVは8万8535台、前年比50%も伸びた。しかし全販売台数に占める割合はまだ2.22%に過ぎず、海外に比べると極端に低い。EVに関する限り、日本は後進国だ。トヨタの販売台数が昨年も世界一になるなど、日本のメーカーは不祥事を起こしたダイハツを除けば、好調を維持している。だが今後も伸び率が高いとみられるEVでは、明らかに周回遅れ。この点がどうしても気になってしまう。

言うまでもなく、自動車は日本の基幹産業。部品などの周辺企業を含めれば、製造業のおよそ2割。550万人の雇用を造り出している。近年では、ハイブリッド車(ガソリンと電気の供用)の技術で世界を圧倒してきた。日本メーカーがこの優位性に安心し、EV開発に全力を挙げなかったことは否定できない。同時に日本では、アメリカのテスラや中国のBYDのように、自動車以外の産業からEVメーカーが誕生することもなかった。

いま日本メーカーは、後れを取り戻そうと必死になっている。だが海外市場では、すでにEVも供給過剰状態に。激しい値下げ競争さえ起こっている。そこへ参入するのは容易なことではない。しかし日本の自動車産業が、起死回生の大きなチャンスをつかむ可能性もないではない。それはEVに搭載する全個体電池の究極的な開発だ。

EVの性能は、搭載する電池が左右する。これまではリチウムイオン電池が主流だったが、これからは全固定電池の時代に入る。全固定電池は安全で長持ちし、しかも軽い。だからいま各国は、その製造コストの引き下げに躍起となっている。幸いなことに、この分野での日本の技術水準はきわめて高い。だから官民学が力を合わせて、全固定電池の性能向上と価格の引き下げに全力を挙げるべきである。政府はもっと補助金を出していい。ただ、その目標は優秀な電池を積んだ日本車の販売増加というより、日本製電池を世界各国に供給することを目指すべきだろう。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +9.99円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅲ)

2024-01-25 07:27:14 | 自動車
◇ 中国製EVに警戒強める欧米諸国 = 欧州自動車工業会の集計によると、ユーロ圏18か国の23年の新車販売台数は1284万台。前年比14%の増加だった。このうちEVは201万台、28%も増加している。脱炭素に厳しいEUだけに、EVの普及は順調。新車販売全体に占める比率はドイツが18%、イギリスとフランスは17%に上昇した。ここでも中国製EVの伸びが突出、価格の安さが強力な武器となっている。

ところが、この価格の安さは中国政府の手厚い補助金によるところが大きい。欧州委員会はこれを問題視、不当な補助金かどうかを調査することになった。ことし中に結論を出すが、もし不当と判定されれば、相殺関税がかけられることになる。EU側は、中国製EVが火力による発電で製造されていることも問題視する模様。中国メーカーは現地生産を増やして乗り切ろうとしているが、見通しはまだ藪の中だ。

アメリカは、中国製EVを完全に締め出している。マークラインズ社の集計によると、23年の新車販売台数は1550万台。前年比12%の増加だった。このうちEVは322万7000台、前年比8.1%の増加だった。新車販売に占める比率は8%で、ヨーロッパ諸国の半分にも満たない。EVの6割はテスラだが、最近は人件費の上昇で大幅な減益。GMやフォードも投資計画の縮小を発表した。

政府の政策はきわめて保守的。原則として北米産の部品を使い、北米で組み立てた車にしか補助金を出さない。特に中国製の部品には厳しく、中国製電池を搭載した車はアウト。この結果、最大7500ドル(106万円)の補助金を受けられるのは、現在8車種に限られてしまった。一般にEVに対する関心は薄く、関心のある人はもう購入してしまったという分析さえ飛び出している。

                   (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 下げ -291.09円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
  
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅱ)

2024-01-24 07:42:02 | 自動車
◇ 中国政府は「EVの世界制覇」を画策 = 中国自動車工業協会の発表によると、23年の新車販売台数は3009万4000台。前年比12%の増加だった。そのうちEVは668万5000台、前年比では24.6%も伸びている。ただ国内ではEVメーカーが乱立、競争が激しい。また不動産不況で景気は悪い。このため多くのEVメーカーが、本格的に海外市場の開拓に乗り出している。その一例がタイ。広州汽車集団など10社が、一挙に進出した。

この結果、タイの自動車販売に占めるEVの比率が急上昇。昨年11月で14.3%と、前年の5.9倍に増大している。タイは日本車の牙城。トヨタが販売台数全体の35%を抑えて第1位だが、EVについては中国車が9割を占める。日系メーカー全体でみると、昨年10月の販売シェアは75%だったが、前年比では8ポイント低下した。またEVのシェアは1%にも満たない。中国メーカーはこのタイを拠点に、東南アジア各国へ進出する計画だ。

中国製のEVは自動運転や人工知能の点では、まだテスラの水準に及ばない。しかしデザインの斬新性や機能性については、高い評価を得ている。そして何よりも強みなのが、価格の圧倒的な安さだ。たとえば同程度の機種で比べると、BYDはテスラの半分以下である。BYDはもともと電機メーカーだったから、車載電池は自社製。だから部品のうち最も高い電池を安く入手できる。これが大きい。

もう1つは、政府による手厚い支援。低利融資・資本注入・購入者への補助金・政府の買い付け・・・。その金額は不明だが、EV販売額の3分の1になるという試算もある。中国政府はガソリン車時代にも自動車産業の振興を図ったが、欧米や日本の製品には敵わなかった。そこへEV時代の到来。こんどこそは「EVで世界を制覇しよう」と目論んでいるわけ。今月11日にも「新車販売に占めるEVの割合を、27年までに45%へ引き上げる」と発表した。

                      (続きは明日)

        ≪23日の日経平均 = 下げ -29.38円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅰ)

2024-01-23 06:43:42 | 自動車
◇ 輸出台数では中国に抜かれる = 中国自動車工業協会が発表した23年の自動車生産台数は3011万台、前年比11.6%の増加。販売台数は3009万台、12.0%の増加だった。中国はいま不動産不況で悩んでいるが、自動車産業だけは順調に発展している。また輸出台数も491万台、前年比57.9%と大きく伸びた。中国の自動車輸出は20年時点で100万台にすぎなかったが、この3年間で5倍近くに増大したわけである。

日本自動車工業会が発表した23年の自動車販売台数は477万9080台で、前年比14%の増加だった。前年は半導体不足で供給不足だったことの反動が大きい。このうちEVは8万8535台で、前年比50%の増加。うち輸入車は2万2848台だった。一方、輸出は399万台だったから、中国に及ばない。日本は17年以来ずっと輸出台数で世界一を続けてきたが、昨年は中国に首位の座を譲ったことになる。

中国の自動車輸出先は、ロシアとメキシコ、それにヨーロッパと東南アジアに集中している。ロシアはウクライナ戦争の影響で欧米各国が現地生産を取りやめた後を埋める形。メキシコはアメリカ市場をにらんだ進出である。またヨーロッパと東南アジア向けはEV(電気自動車)が中心。ヨーロッパは脱炭素に熱心な点を考慮、東南アジアはガソリン車が中心の日本を意識した戦略である。

中国の自動車産業で目立つのは、EVメーカーの急速な成長である。なかでも目覚ましい発展を遂げたのが、BYD(比亜迪)だ。EVと言えば、アメリカのテスラがずっと世界一の座に。ところが昨年10-12月期に、BYDが販売台数でテスラを上回った。その製品は技術的にかなり水準が高いうえに、価格が安い。たとえば日本で売られている同クラスのSUV(多目的スポーツ車)でみると、テスラ製が500万円以上なのにBYD製は300万円程度となっている。

                     (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 上げ +583.68円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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