経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

劇薬を呑む ユーロ圏

2022-09-13 08:06:09 | ヨーロッパ
◇ 急激な金融引き締めに耐えられるか? = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は先週8日、政策金利の0.75%引き上げを決めた。7月にはゼロ金利政策を放棄、金利を0.5%に引き上げている。今回の決定で、政策金利は1.25%となった。インフレを抑制するためで、リガルド総裁は「物価上昇率が2%になるまで、金利を上げ続ける」と宣言している。ECBが0.75%の大幅利上げに踏み切ったことで、ゼロ金利に固執する日本の姿勢がますます鮮明になった。

ロシアからの天然ガス供給が不安定となったため、ヨーロッパではエネルギー価格が高騰。さらに異常気象やウクライナ戦争、それにユーロ安の影響が加わって、食料品も大幅に値上がりしている。8月の消費者物価は前年比9.1%の上昇だったが、9月以降は2ケタの上昇率になるという予測が多い。ECBがかつてないほどの大幅な利上げを決めたのは、このためだ。

金融引き締めは、確実に景気の悪化を招く。たとえばアメリカのモルガン・スタンレー証券は「ユーロ圏は10月から景気後退に落ち込む」と予測した。しかし大問題なのは、物価の先行きがきわめて不透明なこと。というのも、ロシアがいつ天然ガスの供給を止めるか判らないからである。したがって利上げがいつまで続くのか、見当をつけにくい。

もう1つの大問題は、ユーロ圏19か国の国力に大きな差があること。ドイツやフランスに比べると、ギリシャやリトアニアなどは引き締めに対する抵抗力がいちじるしく低い。こうした国では国民の不満が高じやすく、政治の不安定につながりやすい。もし政情不安が多発した場合、はたしてECBは金利を上げ続けられるのか。仮に政変が起きて過激な政党が進出すると、ほくそ笑むのはプーチン大統領ということにもなりかねない。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +327.36円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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コロナ第2波にざわめく ヨーロッパ

2020-09-29 08:32:10 | ヨーロッパ
◇ 景気の2番底は避けられない = ヨーロッパでは夏のバカンスが終わると、コロナ・ウイルスの再拡大が始まってしまった。スペインやフランスでは1日の感染者が1万人を大きく上回り、イギリス・イタリア・ドイツでも感染者の増加が目立っている。ECDC(ヨーロッパ疾病予防センター)の発表によると、EU全体の1日当たり感染者数は9月が4万2400人で、8月より7割も増加した。第1波に見舞われた4月は2万8500人だったので、今回の第2波の方が波はかなり高い。

このため各国は、あわてて規制の再強化に乗り出した。スペインはマドリード州の一部で移動制限や深夜の営業停止。フランスも集会を1000人までに制限、夜間のアルコール販売を禁止した。イギリスでは一部の地域だが、家族以外の面談を禁止したところもある。各国とも第1波のときに講じた大規模なロックアウトは避けているが、それでもフランスやスペインでは住民が規制の再強化に反対、連日のようにデモを続けている。

経済・社会活動を規制すれば、景気は悪化する。ユーロ圏の景況感指数は9月に50.1と前月より1.8ポイント低下した。これから冬に向かって、景気の落ち込みは避けられない。しかも今回は規制が局地的なため、コロナの鎮静化には時間がかかる。したがって、景気の下降期間も長引くことになるという見方が強まっている。景気の2番底が、春の1番底より深くなるかどうかが問題だという。

コロナ再拡大→規制の再強化→景気の再下降。こうした状況を受けて、先週のヨーロッパ市場では株価が一斉に大幅下落した。英仏独などの株価は3-5%も値下がりした。この不安感はアメリカにも飛び火し、ニューヨーク市場の株価も大きく下降した。さらに東京市場にも影響が及んでいる。ヨーロッパのコロナと景気の動向がどうなるか。当分は目が離せない。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +307.00円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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2020年のポイント ②  ヨーロッパ

2020-01-03 07:49:12 | ヨーロッパ
◇ EUは結束を守れるのか = イギリスが1月末までに、EUから離脱することは確実。だが本当の試練は、そこから12月末までの間に設定された移行準備期間にやってくる。イギリスはこの期間中に、EUを初めとしてアメリカや中国、日本など多くの国と、新しいFTA(自由貿易協定)を結ばなければならない。だが、これは時間的にも物理的にも至難の業。特にEUとの交渉が暗礁に乗り上げると、“秩序なき離脱”に。しかもイギリスとEUの関係は犬猿の仲になってしまう危険性をはらんでいる。

同時にイギリス自体は、国家が分解する危険にも見舞われている。EU離脱に反対のスコットランドは、独立の可否を賭けた住民投票の実施を強く要求している。またイギリス本島との間に関税などの境界線が設けられる北アイルランドでも、独立運動が盛り上がろうとしている。ジョンソン政権はEUとの厳しい交渉に臨みながら、これらの独立機運に対処しなければならない。

一方、EUの内部にも高波が立ち始めた。昨年5月に実施された欧州議会の選挙で、右派やポピュリズム政党が議席の3割を獲得したからである。欧州議会というのは、EUの国会に当たる組織。加盟各国が人口に応じて、議員を選出する。右派やポピュリズム政党はEUの政策に批判的で、EU懐疑派と総称されている。

EUの加盟国は現在、イギリスを含めて28か国。ヒト・モノ・カネの行き来を自由にする単一市場を完成。さらに政治・経済の統合を目指して活動してきた。このEUの基本的な考え方に疑問を持つ政党が、EU懐疑派である。EUの政策に賛成する中道派がまだ過半数を制しているので、すぐにEUの政策が変わることはないだろう。しかし懐疑派の大幅な拡大で、結束が緩み始めたことは確かなようである。     
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牽引車ドイツの 失速 (下)

2019-10-04 08:14:09 | ヨーロッパ
◇ 日本にとっては“反面教師”に = ドイツの現状をみていると、日本にも参考になる点が多い。まずは景気動向。ドイツの場合、輸出の激減で4-6月期の成長率がマイナスに落ち込んだ。生産が低下して、主として製造業が圧迫されている。それが7-9月期には非製造業にも広がり、景気は全体として後退するという見方が広がった。

この点は、日本も同じ経過をたどっているように思われる。ただ日本の輸出依存度は18%程度で、ドイツの47%よりもかなり低い。このため輸出減少の影響は、ドイツに比べると緩やかに広がっているようだ。したがって7-9月期には、まだ非製造業が頑張っているかもしれない。しかし油断は禁物。10-12月期には消費増税の影響も加わって、内需も停滞する可能性が大きい。

もう1つは、財政面からの景気対策。これまで均衡財政に徹してきたドイツが財政出動に傾くと、他のEU諸国の財政規律も緩むだろう。アメリカや中国は、すでに積極財政に乗り出している。このように世界の風潮が変わったとき、日本はどうするのか。先進国中で最も財政状態が悪い日本は、どうしたらいいのか。

ドイツは転んでも、タダでは起きない。景気対策としての財政支出を、まず温暖化防止に活用する。6兆円の支出と同時に、ガソリンの値上げや航空機に対する課税強化も実施することになった。片や日本、原発の再稼働もままならず、再生可能エネルギーの育成にも失敗。将来のエネルギー計画さえ作成できずにいる。このままでは、世界の“お荷物”にもなりかねない。

       ≪3日の日経平均 = 下げ -436.87円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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牽引車ドイツの 失速 (上)

2019-10-03 08:18:55 | ヨーロッパ
◇ 10年間のうたげは終わった = 着実な景気拡大を続けて、EU経済を引っ張ってきたドイツ。そのドイツ経済が失速した。実質GDP成長率は4-6月期に年率でマイナス0.3%に沈下したが、7-9月期もマイナス成長になることが確実とみられている。しかも経済の低迷は長期化する可能性が大きく、経済紙ハンデルスプラットは「10年続いたうたげは終了した」と書いている。

EU経済の牽引車にブレーキがかかったのは、輸出が急激に減退したため。特に自動車の輸出は1-8月で、前年比14%の減少。このため生産台数も316万台と、前年比11%の大幅減となった。米中経済戦争の影響もあって、中国での売れ行き不振が大きい。こうした状況は長く続くと考えられ、ドイツ連銀も「7-9月期もマイナス成長となり、景気後退入りは避けられそうにない」と予測している。

ドイツ経済の停滞が、EU諸国に与える悪影響はきわめて大きい。フランスやイタリアはもちろん、ドイツに工業部品を供給しているハンガリーなどの経済を圧迫することは間違いない。このためEU内部では、ドイツに財政支出による景気対策の早急な実施を求める声が上がっている。

これまでドイツは、厳しい財政規律を守ってきた。だが今回は、政府も景気対策を重視。メルケル政権は9月20日、その第1弾として23年までに環境技術やインフラ投資に500億ユーロ(約6兆円)を支出することになった。これでは力不足の声も出ているが、ドイツが財政出動に転換したという事実は大きい。

                             (続きは明日)

       ≪2日の日経平均 = 下げ -106.63円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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