経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

割れた 雇用統計の見方 / アメリカ

2024-01-10 07:30:20 | アメリカ経済
◇ インフレは‟しぶとい”と知るべし = アメリカ労働省が5日に発表した12月の雇用統計。最も注目される非農業雇用者の増加数は21万6000人で、事前予想の17万人を大きく上回った。平均時給は前月比0.4%の上昇で、これも予想を上回る。また完全失業率は3.7%で、前月と変わりなし。雇用の状況はいぜん底堅く、これではFRBの利下げも遠のいてしまう。--投資家の半分近くはこう考えて、株式を売った。

しかし残りの半分近くは、そう考えなかった。労働省は10月と11月の非農雇用者数を、計7万1000人も下方修正した。とにかく月平均の雇用者増加数は、22年の40万人から大幅に減少している。したがって12月の雇用統計は「見た目よりは弱い」から、FRBも6月までには金利を下げるだろう。こう考えて、株式を買った。その結果、その日のダウ平均は26ドルの小幅な上昇となっている。

どちらの考え方が当たっているのかは、判定できない。肝心の物価動向をみても、インフレが収束したかどうかは、よく判らない。11月の消費者物価は前年比3.1%の上昇だった。8-9月の3.7%からはずいぶん下がってきたが、10月の3.2%からは下げ止まりの感じもする。食料やエネルギーを除いた指数では4.0%上昇と、まだまだ高い。

EU統計局が5日に発表したところによると、ユーロ圏の12月の消費者物価は2.9%の上昇。このところ下がっていた物価が、8か月ぶりに再び上昇した。このためECB(ヨーロッパ中央銀行)による政策金利の引下げは、遠のいたと考えられている。要するにアメリカもヨーロッパも、インフレの収束を確認できずにいる。どうやらインフレは、そんなに簡単には消え去らないようだ。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +385.76円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
  
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インフレは 終わるのか? / アメリカ

2023-09-05 07:22:53 | アメリカ経済
◇ 労働需給が明らかに緩和 = アメリカでは「間もなくインフレは終息する」という見方が、急速に強まっている。というのも、物価上昇の最大の原因とみられている労働市場の需給逼迫が明らかに緩んだからだ。その変化は、労働省が1日発表した8月の雇用統計にはっきりと表れた。市場では「FRBは9月の利上げを見送る」という観測が圧倒的に強まり、同時に「経済は後退に陥ることなく、軟着陸する」との楽観論も広まっている。

雇用統計では、まず農業を除く雇用者の増加数が前月比で18万7000人にとどまった。さらに6月と7月の数字が大きく下方修正された結果、この3か月間の平均は15万人の増加となっている。非農業雇用者の増加数は20万人が適正と考えられているから、予想以上に低い数字が出たことになる。また失業率も3.8%で、前月より0.3ポイント上昇。さらに平均時給も前年比4.3%の増加で、前月より0.1ポイント低下した。

インフレは、モノとサービスの価格が上昇することによって進行する。アメリカではウクライナ戦争の勃発で、初めはエネルギーや資源、食料などモノのインフレが進行した。そのあと人手不足による賃金の上昇が引き金となって、各種サービスの価格が上がっている。労働需給の緩和は、このサービス・インフレの終息につながると期待されているわけだ。

ただし、この労働需給緩和がじっさい物価をどのくらい下げるかは不明。FRBは当然、これから発表される消費者物価など物価関連の指標をみてから金融政策を決めることになるだろう。また雇用者の増加数が鈍り、失業率が上昇することが、消費に悪影響を与えないかどうか。もし消費が委縮するようだと、経済の軟着陸は望めない。今後の物価と消費の動向には、注意が肝要だ。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +228.56円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ≫   
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効き目が薄い 引き締め政策 / アメリカ (下)

2023-04-26 07:54:26 | アメリカ経済
◇ カネ余り状態が解消しない = アメリカでは政策金利の急速な引き上げにもかかわらず、エネルギーや食品を除いた物価の上昇が続く。その一因は、人手不足で賃金が上がったことに求められる。また将来のインフレ期待が弱まらないためだという説も強い。さらに基本的には、カネ余り状態が少しも解消していないことが原因だと考えられる。

FRBは昨年6月から、金融の量的引き締めも実施している。保有している国債や住宅ローン担保証券を毎月950億ドルずつ市場で売り戻し、資金を吸収する操作だ。しかし、それまでの緩和政策で市中に放出した資金量は膨大。まだその1割程度しか吸収し切れていない。たとえば市場でリスク感が高まると、資金の多くはMMFにいったん逃避する。MMFというのは短期国債などで運用する投資信託。その残高は現在、5兆2800億ドル(約70兆円)もある。

その一方で、利上げの副作用は確実に現われ始めた。住宅ローンの上昇で不動産価格が低落、消費者ローンの上昇で小売りが低迷、中小企業のカネ繰りも苦しくなった。そこへ金融不安の影響で、銀行の融資態度が急に厳しさを増す。景気の先行きに対する見方は、ますます慎重になってきた。物価高と不況が共存するスタグフレーションを警戒する声も強い。

量的引き締めがまだ不十分だから、カネ余り状態は解消しない。豊富な資金が市中に滞留しているから、株価の腰は強い。悪材料が姿を消すと、すぐに上がる。しかしFRBとしては、利上げや量的引き締めを続けなくてはならない。その気配が強まると、株価は下がる。上値は重い。なんとも矛盾に満ちた状況だが、これが現実なのだろう。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +26.55円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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効き目が薄い 引き締め政策 / アメリカ (上)

2023-04-25 07:30:08 | アメリカ経済
◇ インフレ圧力が衰えない = FRBは来週5月2-3日に開くFOMC(公開市場委員会)で、政策金利をさらに0.25%引き上げる見込み。物価上昇の勢いが衰えないためで、市場も完全に織り込んでいる。年内には利下げに転じるという期待も、ほぼ消滅した。この結果、かつては5.1%程度と想定された年末の政策金利は、ついに6%に近付くという予想が一気に強まっている。

アメリカのインフレ圧力は、一見すると鈍化したようにもみえる。たとえば3月の消費者物価は、前年比5.0%の上昇にとどまった。2月の6.0%上昇からは、目に見えて改善している。ところがエネルギーと食品を除いたコア指数は5.6%の上昇で、2月より上げ幅が0.1ポイント拡大した。要するに総合指数の改善は、原油の国際価格が下落したことによるもの。金融引き締めの効果が出たわけではなかった。

人手不足がもたらす賃金面からのインフレ圧力も、いぜん続いている。3月の雇用統計によると、平均時給は前年比4.2%の増加となお高い。このためヘルスケア・小売り・旅行部門では値上げが続き、物価水準全体を押し上げている。人手不足はコロナ禍で離職を余儀なくされた人が、なかなか元の職場へ復帰しない。少しでも高い賃金を求めて転職する人が増えているためだ。

インフレ抑制のため、FRBが金融政策を引き締めに転換したのは昨年3月。そこから急ピッチで利上げを繰り返し、政策金利の水準はすでに5%に達した。またFRBは昨年7月から量的引き締めも開始、原則として毎月950億ドルの国債などを市場に売り戻している。だが、こうした大規模な金融引き締め政策にもかかわらず、インフレ圧力は収まらない。なぜだろう。

                     (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 上げ +29.15円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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パウエル議長の 胸の内は?

2022-11-15 07:41:27 | アメリカ経済
◇ 「株高は引き締めに邪魔なんだ」 = 先週10日のこと、消費者物価の上昇率が予想を下回ると、株価は急騰した。これでFRBによる金融引き締めのテンポが緩むと、市場が期待したからである。さらに市場では年明け早々に利上げは終了、政策金利の最終的な高さも予想より低くなるという推測までが飛び出した。パウエル議長としては「市場ははしゃぎ過ぎ、冗談じゃないよ」と言いたいところだろう。

消費者物価の伸びが鈍化したと言っても、まだ前年比7.7%も上昇している。これが2%台の上昇にまで沈静化するには、相当の時間を要するだろう。12月の政策決定会合までには、11月の雇用統計や物価も発表される。だから「それらの数字を見てからFRBの姿勢を決めるのは当然だ」「その数字によっては、利上げ幅を0.5%に抑えることは考えてもいい」というのがパウエル議長の胸の内だろう。

中間選挙の前は、インフレ退治を声高に叫ぶ必要があった。しかし選挙が終わったために、FRBは政治的な配慮なしで行動できるようになった。したがってインフレ退治を急いで、3倍速の利上げを続けてもホワイトハウスから文句は来ない。逆に引き締めのテンポを緩めても、何ら問題はない。要するにFRBは、自由に行動できるようになった。「このことは投資家の皆さんも覚えておくべきだ」とパウエルさんは言いたいに違いない。

最大の問題は、おそらく賃金インフレが収束するかどうかだろう。物価上昇率が賃金上昇率を下回れば万々歳だが、金融政策にはそうする力がない。また「株価の高騰も、金融引き締めを阻害する。資産効果で消費が増えてしまい、物価を押し上げるからだ」「要するに、株式市場のはしゃぎ過ぎはFRBにとって迷惑なんだ」--パウエル議長の本音かもしれない。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -300.10円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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