経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

イギリスの離脱は ない?

2019-04-12 06:59:33 | EU
◇ EUが「10月末までの延期」を認めた真意 = EUは10日の首脳会議で「イギリスの離脱期限を10月31日まで延期する」ことを承認、イギリス側に通達した。ただし5月下旬に開くヨーロッパ議会に、イギリスが議員を送り込むことが条件になっている。このため今後の可能性としては①イギリス議会が10月末までに協定案を批准し、その時点で離脱する②ヨーロッパ議会に議員を送らず、6月1日に“合意なき離脱”となる――の2つに絞られたとみられている。

だがアイルランドとの国境問題を巡って、イギリス議会がまとまる気配は全くない。しかしイギリス議会は「合意なき離脱には反対」の決議をしている。すると①も②も実現する可能性はゼロに近い。残された道は、国民投票によって“残留”を決めるしかないのではないか。EUはそのために必要な時間を、イギリスに与えたのではないか。

いまのイギリス議会は離脱派と残留派が伯仲しており、メイ首相がどんな提案を出しても否決されてしまう。だが“合意なき離脱”の恐ろしさが判ってきたので、これだけは避けたいという主張が多数を占める。この点は一般国民も同じで、いまもし国民投票を実施すれば“残留”票が過半数を占める確率はきわめて高い。

EUはこの方向を、最も望ましいと考えている。イギリスには大きな貸しを作れるし、他の加盟国に対する“みせしめ”にもなる。経済に及ぼす悪影響も、最小限度に抑えられる。もっとも、その場合でもイギリス国内での離脱派と残留派の激しい対立は続くだろう。しかし分裂はイギリスの国内問題に限定されるから、EUとしては傍観していればいい。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +23.81円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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追い詰められた イギリス (下)

2019-03-28 07:38:31 | EU
◇ 消えた大英帝国の面影 = イギリス議会が今週29日までに、メイ首相の離脱協定案を承認する可能性もゼロではない。その場合、イギリスは5月22日にEUを正式離脱することになる。だが、その公算はきわめて小さい。すると、こんどは欧州議会に参加するかどうかを、4月12日までに決めなければならない。そこで不参加となれば、4月12日に“合意なき離脱”となる。また参加と決めれば、離脱は長期的に延期される。

“合意なき離脱”について、イギリス議会は「反対」の動議をすでに可決している。このため残された道は「長期的な延期」しかないという見方が強まっている。しかし長期的な延期は、実際問題としては“残留”に等しい。だから、それに対する反発も決して小さくはない。すべての道が塞がれたときには、再び国民投票するしかないだろう。だがメイ首相は、国民投票の再現に反対し続けている。

イギリスのEU離脱は、EUの移民拡大政策に対する反発から始まった。しかし、その根底に「大陸側の指揮・命令には従いたくない」というイギリス人の感情が作用したことも確かだろう。要するに「イギリスはドイツやフランスの下であってはならない」という歴史的あるいは民族的な自尊心の発露である。その半面、EU内にとどまり経済的な恩恵は享受したいと考える人も多い。

この2つの矛盾する思考が、イギリスを混迷に陥れた。いまのイギリスは対EUの姿勢で、国民が完全に分断されてしまっている。だから“合意ある離脱”でも“合意なき離脱”でも、あるいは“長期的な離脱延期”でも再度の国民投票でも、国民の半数は不満を持つことになる。第2次大戦中のイギリスをまとめたウィンストン・チャーチルのような人物が出現しないと、イギリスという国家は威信を回復できないのではないか。

       ≪27日の日経平均 = 下げ -49.66円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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追い詰められた イギリス (上)

2019-03-27 08:17:13 | EU
◇ EUが最後通告を突きつける = EUは先週21日に開いた首脳会議で、イギリスの離脱問題に関する態度を決定。イギリス政府に通告した。その内容は、①イギリス議会が3月29日までに離脱協定案を承認すれば、離脱の期限を5月22日まで延長する②もし議会が承認しなければ、4月12日までに合意なき離脱か、離脱の期限を長期的に延長するかを選んでほしい――というもの。要するに最後通告であり、とうとうイギリスは全くの瀬戸際に追い詰められた。

まずはイギリス議会が、離脱予定日の3月29日までに離脱協定案を承認した場合。混乱を避けるために離脱日を先送りし、イギリスは5月22日にEUから正式に脱退することになる。ここで言う離脱協定案というのは、メイ首相とEU首脳が合意したもの。その中核は「アイルランド国境管理の問題が解決されるまで、現状を維持する」という内容だ。

これだと国境問題が片付くまで、イギリスはEUから離脱できない。このため反対意見が強く、議会はこれまで2度にわたってこの協定案を否決している。したがってメイ首相が今週中に協定案を提出しても、議会の承認を得ることは難しいという見方が強い。それ以前に、バーコウ下院議長は「同じ協定案を3度も審議することは許されない」と言明しているし、議会内部ではメイ首相の辞任を求める動きも出てきている。

次に議会が今週中に協定案を承認しないと、どうなるか。EUは5月23日から欧州議会を開く予定で、このことが問題を複雑にしている。もしイギリスがEUに残留すれば、この欧州議会に議員を送り込まなければならない。EU首脳は、その決断を4月12日までにしろとイギリスに迫ったわけだ。欧州議会に不参加なら、イギリスの脱退は合意がないまま4月12日。参加するなら、離脱の長期的な延長を認めることになる。

                              (続きは明日)

       ≪26日の日経平均 = 上げ +451.28円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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形勢逆転した イタリア vs. EU

2018-12-21 08:06:30 | EU
◇ 国民投票までちらつかす = つい1か月前までは、出来の悪い生徒とその生徒を叱咤する厳格な教師の関係だった。イタリアのコンテ首相はEUに提出した19年予算案を差し戻され、さらに修正した予算案も認可されず。EU側はイタリアの財政赤字がGDPの130%に膨らんでいる点を指摘、もっと予算規模を縮小しないと制裁を科すると脅していた。

その関係が一気に逆転した。原因は、フランスで起きたマクロン反対のデモ騒ぎである。燃料税引き上げに反対するデモは、マクロン大統領の辞任を求める全国運動に拡大。政府はこれを鎮めるために、燃料税引き上げは事実上の停止。さらに最低賃金の月額100ユーロ(約1万2800円)引き上げや、残業収入の無税化などの施策を打ち出す羽目に陥った。

この結果、フランスの19年予算はGDP比で3.2%の赤字に。EUが決めた3%以内の原則を超えてしまった。なにしろフランスは、ドイツとともにEUを支える大黒柱。EUとしては、そのフランスに制裁を科すわけにはいかない。するとフランスには目をつぶって、イタリアだけを怒るのもどうか。やむなくイタリアの予算案を承認することになった。

これでイタリアは、政府も国民も元気を取り戻した。閣僚のなかには「フランスと同等に扱え」と公言するものも出る始末。国民の間では「EUと戦うコンテ内閣」を支持する空気が強まった。マスコミのなかには「いま国民投票を実施すれば、EU離脱派が確実に勝つ」という論評まで現われた。いま下を向いているのは、厳しかった教師の方である。

       ≪20日の日経平均 = 下げ -595.34円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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異端児イタリアの 正論 / EU (下)

2018-07-13 08:08:42 | EU
◇ ドイツの政局に波及 = 首脳会議ではコンテ首相の正論を否定できず、難民問題は「加盟国が公平に分担すること」を決めた。具体的には域外のアフリカと域内の数か所に、難民申請の受付所を新設することでも合意した。しかし場所を特定するまでには至らなかったので、事実上は何も決められなかったのに等しい。これでEUの権威は低下し、域内の反EU的な動きを強める結果を招いてしまった。

EUの盟主ドイツも、その動きに揺さぶられている。ドイツのメルケル内閣は、CDU(キリスト教民主同盟)とCSU(キリスト教社会同盟)、SPD(社会民主党)の3党による大連立。このうちCSUは移民大反対で「難民は国境で追い返せ」と主張している。これまで難民に対して寛容だったメルケル首相も、CSUと妥協しなければ内閣を維持できない状況に追い込まれた。

結局は「国境に収容所を設け、難民は最初に上陸した国に返す」ことで妥協。あやうく倒閣を免れている。だが、この合意はCSUの主張そのもの。メルケル首相の求心力は大きく低下した。ところが連立を組むもう一方のSPDは、難民支援派。メルケル首相の心変わりに、批判の声が高まっている。メルケル首相は、完全にピンチを脱したとは言い切れない。

EUはイタリアやスペインの不満を抑えるため、少なくとも難民の救済に必要な費用を加盟国が分担しようと考えている。だが、そのためには加盟国からの拠出金を増やさなければならない。ところが多くの加盟国は、これに反対している。このようにコンテ・イタリア首相が投じた一石は、EU全体を揺り動かした。しかし事態は、ますます判りにくくなっている。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +255.75円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ

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