経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

女性新首相が投げた 新型爆弾 / イギリス

2022-10-05 07:51:54 | イギリス
◇ 国債増発で超大型減税の危うさ = 9月6日に就任したばかりの女性首相が、世界経済を揺るがしている。イギリスのメアリー・トラス首相(47)が、その人だ。コトの発端は、新首相が9月23日に発表した新経済政策。その内容は、エネルギー高騰対策に半年で600億ポンド(9兆3000億円)、法人税や所得税を5年間で1610億ポンド(25兆円)減税するなど。財政の大盤振る舞いだった。しかも財源はすべて国債の増発で賄うという、大胆きわまる計画。

これには世界中が驚いた。インフレの火に油を注ぐようなものだし、国債価格も暴落する。さっそく金利は急上昇、ポンドは売られた。これまでインフレ対策で金融を引き締めてきたイングランド銀行は、逆に利上げと国債の買い入れを余儀なくされている。ヨーロッパ市場の株価は急落、影響はアメリカにも飛び火して金利の上昇と株価の下落を招いている。

IMF(国際通貨基金)も「この政策は危険であり、撤回するように」と、異例の警告を発した。このためトラス首相は、所得税の最高税率引き下げだけは撤回した。しかし、こうした財政の大盤振る舞いは彼女の選挙公約であり、あとは撤回しない姿勢。こうして世界中がインフレ対策を強化しているなか、イギリスだけが反対方向の政策を進めようとしている。

イギリスはいまでも金融大国だ。そんな国が不協和音を発すれば、世界の金融システムは動揺する。リーマン・ショックのような金融不安が、どこで起こるか判らない。トラス首相の経済政策はポピュリズムの典型。これまでは左派系の政権が、そして最近は右派系の政権がよくスローガンに掲げてきた。それがイギリスにまで広がったことは、やはりショックである。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +776.42円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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驚異の20%成長 / イギリス

2021-08-19 07:53:48 | イギリス
◇ 日本は1.3%成長だったのに = イギリス統計局が発表した4-6月期のGDP速報によると、実質成長率は前期比で4.8%だった。これを年率換算すると、なんと20.7%という驚異的な数字になる。個人消費と政府支出が大きく伸びた。前期がコロナ不況でマイナス6.1%に落ち込んだことの反動、それにワクチン接種が進んで規制が段階的に解除された効果が加わった。それにしても、20%という成長率には目を見張る。

たとえばイギリスが離脱したばかりのEU。ユーロ圏19か国の4-6月期の成長率は、年率8.3%だった。アメリカは6.5%、日本はわずか1.3%しか成長していない。どうして、こんなに大きな差が生じたのだろうか。ことし1-3月期、イギリスではコロナの感染が爆発、ロンドンを含むイングランド全体のロックダウン(都市封鎖)が実施された。その後、ワクチンの接種が進み、4-6月期には飲食店の屋外営業が許可されている。

イギリス経済はEU離脱によって、少なからず打撃を被った。さらに4-6月期は半導体の不足で、自動車の生産が大きく落ち込んでいる。にもかかわらず規制の緩和で、景気は驚くほどの回復をみせた。この状況をみたジョンソン首相は、7月19日から規制の全面解除を決断。コロナ感染者が増えても経済を優先するという、大胆な“賭け”に打って出た。

この結果、イギリスのコロナ感染者は1日平均3万人近くも増加している。しかしワクチンの効果で、死亡者は1週間で500-600人程度に抑えられている。濃厚接触者は自宅待機を求められるが、街の風景はコロナ前の状態に戻った。このことは厳しい都市封鎖をすれば、解除によって経済は急激に回復することを示している。日本は規制が緩いから、解除しても成長率が低いのだろう。

       ≪18日の日経平均 = 上げ +161.44円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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賛?否? ジョンソン首相の“人体実験”

2021-07-27 08:27:13 | イギリス
◇ 規制解除で沸き上がるイギリス = イギリス政府は先週19日、コロナの流行を防止するための規制を全面的に解除した。店舗の営業からイベントの開催、3密を避けるためのソーシャル・ディスタンス、さらにマスクの着用に関してまで。いっさいの規制を取り払った。サッカー場では6万の大観衆が大声で応援、ナイトクラブは立錐の余地もないほど若者で埋め尽くされた。それから1週間、賛成の声は圧倒的に強いが、批判的な見方も決して少なくはない。

イギリスのコロナ感染者は、目立って増えている。たとえば1日の感染者は5万人、最近1週間では33万人を超えた。イギリス政府も「近く1日10万人に達するだろう」と予想している。にもかかわらず規制を全面解除したのは、重症者や死亡者があまり増えていないからだ。最近1週間の死亡者数は385人にとどまっている。これはワクチン接種率が、成人の68%に達したためと考えられている。

死亡者が少なければ、普通のインフルエンザと変わらない。だから規制を全面解除して、社会・経済をコロナ前の状態に戻す。こう決断したのはジョンソン首相であり、ロンドンのマスコミは「ジョンソンの大きな賭け」と論評した。それから1週間、街は活況を取り戻したから、評判はそこそこいい。だが一部では「危険な賭け」という見方も広まっている。

概して高齢者には、評判が悪い。若者が街を占領しているので「恐ろしくて地下鉄にも乗れない」という嘆き。医療関係者の間でも「感染者が増えると、新たな変異ウイルスが発生する」という警告。さらに死亡者も増えざるをえないが、その人たちはジョンソン政策によって命を落とすことになる。だから今回の規制解除は、ある意味では大規模な“人体実験”ではないのか。厳しい批判も出ているが、賭けの結末は10月になれば判明するだろう。

        ≪26日の日経平均 = 上げ +285.29円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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こんどは 分裂の危機 / イギリス

2021-05-14 07:32:19 | イギリス
◇ コロナ鎮静で独立運動が再燃 = イギリスは大揉めに揉めたあげく、EUから離脱。そのとたん、コロナに襲われ大不況。ワクチンの効果でコロナが鎮静化したら、こんどはスコットランドと北アイルランドの独立運動に脅かされることになった。下手をすると、イギリスは分裂するかもしれない。ジョンソン首相は、またしても難しい問題を抱え込んだ。

スコットランドでは5月6日の議会選挙で、イギリスからの独立を標榜する民族党と緑の党が過半数を獲得。今後2年半のうちに、独立の是非を問う住民投票を目指すことになった。住民投票の実施には中央政府の承認が必要で、ジョンソン首相は絶対反対の姿勢。これに対して民族党は裁判にも訴える構え。コロナが収束したら、独立運動を一気に展開すると公約していた。

北アイルランドでも、独立の機運が高まっている。もともと宗教の違いなどから、イングランド派とアイルランド派が激しく対立。今回のEU離脱でアイルランドとの経済関係が強まり、独立運動に拍車がかかった形となった。スコットランドでも、EU離脱に反対する住民が圧倒的に多い。このようにスコットランドでも北アイルランドでも、イギリスのEU離脱が皮肉にも独立運動を起こすきっかけとなっている。

イギリスは、イングランド・スコットランド・ウエールズ・北アイルランドの4か国による連合体。このうち人口でみると、イングランドが全体の84%を占めている。また面積では、スコットランドと北アイルランドが4割を占める。仮に独立運動が成功してスコットランドと北アイルランドが離脱すると、残るはイングランドとウエールズのみ。大英帝国の面影は、ほとんど消え去ってしまうことになる。
えええ
       ≪13日の日経平均 = 下げ -699.50円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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スコットランドが独立?

2021-01-07 07:50:20 | イギリス
◇ イギリスを襲う次なる難題 = イギリスは昨年末、EUとの間で離脱後の関係を定める広範な交渉で合意した。これによって交渉が決裂した場合に想定された経済的・社会的大混乱は、あやうく回避された。ところが一安心するヒマもない。新型コロナの変異ウイルスが急速に拡散、イングランドでは3度目の都市封鎖が断行された。そのうえスコットランドが、大英帝国から離脱する危険性も強まっている。

EUとの間で合意した内容は、すべての輸入関税を相互にゼロとするFTA(自由貿易協定)の締結。航空・鉄道・車両・船舶など交通機関の現状維持、イギリス水域内での漁業権など。このうち最後まで揉めた漁業権については、EUの漁獲量を25%減らし、少なくとも5年半は操業を認めることで決着した。

交渉の妥結は当たり前のことだが、イギリスとEUの双方が譲歩することでもたらされた。漁業権の譲歩もその1つだが、イギリス国内ではそれに対する不満も高まっている。特にスコットランドでは、批判が強い。もともとスコットランドはEU離脱に反対。離脱を決めた16年の国民投票でも、スコットランドだけをとれば62%が残留に賛成していた。

というのもスコットランドは、工業製品やウイスキーなどEUへの輸出依存度が高い。今回も関税はゼロのままだが、域外国となったため複雑な通関手続きが必要になった。メーカーにとっては、余計なコストがかさむわけである。そして5月にはスコットランド議会の選挙が行われる。コロナの影響もあって、それまでに景気が悪化すると独立派の議席が増える。「イギリスはEUから離脱した。われわれはイギリスから離脱する」という空気が一挙に高まりかねない。

       ≪6日の日経平均 = 下げ -102.69円≫

       ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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