経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

自殺に突っ走る 大英帝国 (下)

2018-11-30 07:24:20 | イギリス
◇ 経済は大混乱、イギリスは大不況に = もしイギリスがEUとの協定なしに離脱したら、どんなことが起きると想定されるのか。最大の混乱は、まず物流面に起きると考えられている。たとえば英仏海峡トンネルは、いま1日5000台のトラックが行き来している。ここで通関手続きが必要になると、大渋滞が発生して交通がマヒ状態に陥ることは避けられそうにない。しかも税関の設備や人員も、まだ整っていない。

特にイギリス側では、食料や原材料の不足が心配されている。人の往来にもパスポートが必要に。航空便も新しいシステムに切り替えねばならない。企業もイギリスで取得した営業権は、EU側で使えなくなる。このためイギリス企業やイギリスに本拠地を置く海外企業は、大陸側での商売が出来なくなってしまう。そこで、これらの企業はいま大急ぎで本拠地をドイツやベルギーに移そうとしているわけだ。

ロンドンなどから多数の企業が流出することは、イギリス経済に大きな打撃となるに違いない。そのうえ貿易も縮小を免れない。イギリスとEUの貿易額は、17年で約4200億ポンド(62兆円)にのぼる。無秩序離脱になった場合、この額がどこまで減少するかは、いまのところ計算できないという。イギリスのGDPは今後15年間にわたって、1割ほど減るという試算もある。

こうみてくると、イギリス議会が離脱協定案を否決することは、全く自殺行為のようにみえる。だから来月11日に予定される議会の採決では、賛成が多数を占める可能性もゼロではない。しかし否決の公算は、限りなく100%に近い。その結果は、イギリスが想像以上にEUの束縛を嫌っていることを明示する。ここでも“大英帝国”の自国ファーストが、なによりも最優先されたことになるだろう。

       ≪29日の日経平均 = 上げ +85.58円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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自殺に突っ走る 大英帝国 (上)

2018-11-29 08:29:05 | イギリス
◇ 議会が離脱協定を否決へ = イギリスは来年3月29日、EUから離脱する。離脱後のイギリスとEUの関係を明確にするため、作成されるのが離脱協定だ。この協定作りは大揉めに揉めたが、イギリスは今月14日の閣議で了承。続いてEUも25日の首脳会議で承認した。これで円満な離脱と思いきや、なんとイギリス議会は協定案を否決する構え。もし否決されれば無秩序のままの離脱となり、世界経済は未曽有の大混乱に陥ることになる。

離脱協定の内容は複雑多岐にわたっているが、再重要項目は2点。1つは激変を緩和するため、20年末までを移行期間とする。この間はイギリスとEUの関係を現行のままとし、イギリスはEUに分担金を支払う。もう1つはアイルランド問題が解決するまで、イギリス全土を関税同盟に残すというもの。要するに、完全な離脱をしばらく延期するという内容だ。

この2点に不満なのが、即時の完全離脱を求める政治家たち。これでは国民投票で示された民意が反映されていないというのが、離脱協定に反対する理由となっている。すでに閣僚のうち4人までが、メイ首相に抗議して辞職した。野党ばかりでなく与党のなかにも拒否反応を示す議員が多く、最近の調査では反対する議員数が賛成する議員数を40-60人も上回っているという。

議会での採決は来月11日に行われる予定。ところがマスコミのほとんどは、議会では否決されると予想している。仮に否決された場合、メイ首相は協定案の修正をEU側に求めることもできるが、その交渉が3月末までに成立する可能性はゼロに等しい。また議会を解散して総選挙を実施。あるいは再び国民投票を呼びかける手もあるが、いずれにしても時間がない。3月29日に、イギリスが何の取り決めもなくEUから離脱する公算は、限りなく高まっている。

                             (続きは明日)

       ≪28日の日経平均 = 上げ +224.62円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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赤信号が点滅する 株式市場 (下)

2018-11-28 08:24:10 | 株価
◇ 弱気が増えつつあるのは事実 = 中国経済に対する見通しでも、弱気と強気が混在している。GDP成長率は7-9月期に6.5%まで低下し、さらに減速するという見方が強い。10月の小売り売上高は前年比5.6%増と、過去最低の伸び率に落ち込んだ。特に新車の販売台数が目立って減少しており、ことしは通年でも90年以降初めて前年割れになる公算が大きい。来年は成長率が6%になるという予測さえ発表されている。

中国政府はこれまで減税や預金準備率の引き下げで、景気の下支えをする政策を講じてきた。しかし現在までのところ、効果は出ていないようだ。だが中国の場合は欧米の先進国と違って、政府がハラをくくれば、どんな景気対策でも実現することが可能。だから景気がこのままズルズルと後退することはない。楽観論者は、この辺を重視している。

米中貿易戦争が長引けば、中国経済は大きな悪影響を蒙る。アメリカの物価も上昇し始めた。景気や株価の将来にとって、かなりの重荷になっていることに間違いはない。しかしトランプ大統領によると、、中国は最近142項目に及ぶ打開策を提示してきたという。今週末にはアルゼンチンで、1年ぶりの米中首脳会談が実現する模様。そこから状況は、好転に向かうのではないか。

こうして、すべての重要な問題に関して楽観と悲観、強気と弱気が併存する。そのどちらが、時間の経過とともに優勢になって行くのか。現時点でみれば、弱気がじわじわと増えつつあることは確かだろう。株式市場ではVIX(恐怖指数)が上昇を続け、東京市場では空売り比率が下がらない。こうして市場には、赤信号が点滅し始めた。

       ≪27日の日経平均 = 上げ +140.40円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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赤信号が点滅する 株式市場 (上)

2018-11-27 08:10:12 | 株価
◇ 調整 or 下降局面の入り口 = 振り返ってみると、株価のピークは10月2-3日だった。そこから先週末までに、ダウ平均は2542ドル、日経平均は2624円下げている。米中貿易戦争、中国経済の成長鈍化、アメリカの金利上昇、スマホ需要の頭打ち・・・売りの口実はいろいろあるが、長期にわたって急速に上昇したことへの反動という面も強い。そこで10月以降の下げを健全な調整とみるべきか、それとも本格的な下降局面の入り口とみるべきか。判断は2分されている。

たとえば日本株の見通しについて、大手金融機関などの調査部門が予測を公表している。来年3月末の日経平均をみると、楽観的なのは2万5000円。やや慎重なのは2万1000円で、現状と大きくは変わらない。また2万円を割り込むという悲観的な見方も出ている。このように見方が分かれるのは、最近の値下がりを調整とみるか下降局面とみるかの差だ。

その根底には、株価を動かす大きな材料の1つ1つに対しての、将来展望の差があると考えていい。たとえばアメリカ経済の展望。いまスマホ需要が伸び悩むことから、IT関連の株価が急落した。加えて住宅販売にも陰りが出てきた。新築住宅の販売戸数は4か月、中古住宅は6か月連続で前年を割っている。こうした現象を重視すれば、長期にわたったアメリカの景気拡大は間もなく終わると考えても不思議ではない。

しかし雇用者数は順調に伸び続け、年末商戦も手応え十分だという。さらに株価が下がり、住宅産業が不振に陥れば、FRBは金融引き締めのテンポを緩めざるをえないだろう。そうなれば、企業の業績も高水準を維持できる。このように明るい面ばかりみれば、アメリカ経済の拡大はまだ続く。したがって株価も調整を終えて再び上昇する、という楽観的な考え方にたどり着くわけだ。

                              (続きは明日)

       ≪26日の日経平均 = 上げ +165.45円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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今週のポイント

2018-11-26 08:56:46 | 株価
◇ NYは総崩れ、東京は土俵際 = ダウ平均は先週、休日をはさんで4日間の続落。週間では1127ドルの大幅な下落となった。アップルを筆頭にIT関連株が振るわなかったところへ、住宅関係の指標が予想を下回り追い討ちをかけた。11月決算のヘッジファンドが、利益確定の売りに出たことも響いている。市場では、クリスマス商戦に望みをつなぐしかないという空気が強い。

ニューヨークが総崩れになったにもかかわらず、東京市場はなんとか持ちこたえた。日経平均は先週34円の値下がり。9月中間決算の成績がいいだけに、下値を拾う投資家も少なくない。政府の消費増税対策が煮詰まってきたことも、相場の下支えになっているようだ。ただし今後の株価見通しについては、慎重論が増えてきたことは確かである。

先週末の株価を10月初めの高値と比べると、ダウ平均は2542ドル、率にして9.4%の下げ。日経平均は2624円、10.8%の下落となっている。この辺で下げ止まれば、一時的な調整ということになる。だが、さらに下落が続けば、株価は下降局面入りと判定されることになるだろう。その意味では、今週の動きは重要だ。

今週は27日に、10月の企業向けサービス価格。29日に、10月の商業動態統計。30日に、10月の労働力調査、鉱工業生産、住宅着工戸数、11月の消費者態度指数。アメリカでは27日に、9月のFHFA住宅価格、11月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、7-9月期のGDP改定値、10月の新築住宅販売。29日に、10月の中古住宅販売。また中国が30日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。なお30日にはアルゼンチンでG20が開かれる。

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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