京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間

2012-09-25 09:10:40 | 日記

視覚障害者用時計。セイコー・キャリバー6618
手巻き。当時の定価6000円。

風防を開けて指で針に触れて時刻を読み取る。
自分でやってみるがなかなか正確に読み取る事が出来ない。トレーニングが必要な時計です。
朝の6時か夜の6時なのか12時間制の表示では解らないのが欠点でした。
テレビがない時代、この時計が唯一、時刻を把握できる時代です。

現在はクオーツに進化していて音声で時刻を告知する便利なモデルになりました。

ところが発売当初はクリアーな音声が聞き取りにくく、またまたクレームが殺到。
「何を言っているのかさっぱり聞こえん!」のです。
数回の発売中止を経て改良、進化、ナビシステムなどに応用されています。

海外からの留学生対象に日本のメーカーを説明する際この時計を使いました。
日本企業の「原点」を解りやすく説明できるので便利。
日本企業独特の「サービス残業」についても理解してもらうために役に立ちました。

「視覚障害者」用の時計は完璧な赤字、採算ベースに合いません。
マーケットとしては発売見込み本数が少ない。価格も低く設定する必要があるなど条件が厳しいのです。

学校では目が見えない人でも夜は灯りを点けるように指導されます。
時計は生活上必要なアイテムなのだ。
そこで開発担当者は「手弁当」で働くことでやっと商品化できた。

「会社は従業員・社会みんなのもの。」の概念が生まれる。
「株主」のものなら現在のような「サービス残業」は定着しなかったでしょう。

このように業界では時計を商品化する場合「消費者利便のため」が最優先されるのです。
ただの「利益目的」の商品開発は強化されないのが特徴です。
「コピー商品」や「不良製品」は絶対にダメなのだ。

このように「手弁当」から「サービス残業」に名前を変えた歴史がある。

「銀行」などバンカーたちの金融関係との交渉もある。
「融資」物件の検討時、メーカー担当と交渉する場合はお互い「手弁当」。
企画が潰れることは日常当たり前です。
「どうせ死ぬ子は目が細い!」とつぶやきながらの交渉です。

計算機やコピー機がない時代。あきらめないで何度も企画をだす。
書き出しと末尾の文字が乱れているだけでも企画は通らない。

企画書を15部、20部など手書き「ガリ刷り」の時代なので時間があっという間に過ぎる。そこで社内を歩くスピードは走らない程度の早足になる。

このような工程を辿ってやっと世の中に出た時計です。
昔の時計は大切に使ってください!

「原点回帰」
現在の「サービス残業」は単純な「人件費の節約」目的に変化していないか?

「留学生」に「サービス残業」の意味を正しく伝えられる企業風土があるか?

相当なエネルギーを使って面接に来てくれる学生たちに伝えたい思いがある会社であるのか?

私たち「オヤジ」はここいらで「原点回帰」が必要だと思う。

明日は工房がお休み!歯を食いしばりながら銀行廻りだ。不況はひどくなるばかりですが皆さん、頑張りましょう!



















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