■「私の家に、テレビはありません」とWolfgang Boettcher先生■
2012.1.7 中村洋子
★新年明けまして、おめでとうございます。
2012年1月1日午後3時前、日本列島から600キロ南方の、
「鳥島」を震源とする、M.7の大深度地震で、
東京も震度4と、大きく揺れました。
これから、まだまだ、何が起きるのか・・・とても不安です。
一日一日、大切に生きることを、あらためて、自覚させてくれました。
★年末年始は、静かな環境で、
「 本物 」 のクラシック音楽を、楽しみました。
例えば、Wolfgang Boettcher ベッチャー先生と、
指揮のNeville Marriner ネヴィル・マリナ― (1924~)による、
Johannes Brahms ブラームス (1833~1897)の、
「 Das Doppelkonzert a-Moll für Violine, Violoncello und Orchester Op. 102 = Double Concerto 」
「 ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 」 (1887) や、
Paul Hindemith パウル・ヒンデミット (1895年~1963) の
「 Cello Concerto チェロ協奏曲 」(1940) を、
Paul Tortelier ポール・トルトゥリエ (1914~1990年) の
名演奏で、聴きました。
★このような名曲と、名演奏を聴く手段は、
いまや、ご自分でそのCDを探し出し、選択するしかありません。
FM放送には、歴史的な名演はほどんど流れません。
新聞のテレビ欄を見ますと、 “ 行き着くところまで逝った ” と、
思わざるを得ないほどの、俗悪な娯楽番組ばかり。
それらに、何の必然もないのに、こびりつかせている
“ 音楽もどき ” の、バックグラウンド騒音には、
耳を、塞ぎます。
★先月の、石川県津幡町・シグナスホールでの、
Wolfgang Boettcher ベッチャー先生との録音には、
東京からも、数名の方ですが、遠路はるばる、
見学に、おいで下さいました。
「 これまでの人生で、あのような幸福感と充実感を、
味わったことは、ありませんでした 」 という、
うれしいお手紙を、頂きました。
★Boettcher 先生の、迫真の演奏をお聴きになり、
ごく自然に、そのようなお言葉が思い浮かんだことでしょう。
本来は、クラシック音楽を聴く人たちが、
日常的に、そのような体験をすべきなのです。
それが、どうして、稀なこととなってしまったのでしょう。
★Boettcher 先生 と、録音以外にも、
本当にさまざまなことを、お話いたしました。
それが、滋養のように、いま、私に染みわたっています。
★以前、当ブログでもご紹介しました、
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20111107
ドイツの風刺番組 『 Heute show 』 について、
「 面白く、素晴らしい番組ですね 」 と、申しましたところ、
先生は、「 それは何ですか? 日本のテレビ番組ですか? 」
私 「 ドイツ ZDF の人気番組ですよ 」
先生 曰く「 私は、テレビをもっていない 」
★「 毎日 Bach を弾き、 Beethoven を勉強し、
それに、Yoko Nakamura の新曲も大変です。
演奏が難しいところは、何十通りものフィンガリングを考え、
practice します。
テレビを見る時間は、全くありません 」
★先生は、ベルリンの自宅に在宅中、
奥さまがラジオから聴いたニュースを、間接的に聴かれるそうです。
1時間のうち、20分はニュースを流している放送局があり、
それをよく聴いていらっしゃる奥さまは、世界情勢にも、
とても、詳しいそうです。
しかし、先生は、読書が大好きで、
「 いま、トルコのノーベル文学賞作家の小説を読んでいる 」
★毎日、倦まず弛まず学び続ける・・・、
そのような真剣な生き方に、必要なものは、
必要なもののみを、集中的に選び、
余分なものを、極限まで捨てる、
そのような態度であると、思います。
Boettcher 先生は、それをまさに日々、実践されています。
★先生は、ベルリンにお帰りになった後もお忙しく、
28日は、ケルン Köln で、「若くて素晴らしい( Boettcher 先生 )」
ピアニストと、Duo recital デュオリサイタルを開催されました。
★「演奏は fantastic で、standing ovation までありました 」 と、
演奏をお聴きになりました、Cellist の Johannes Nauber
ヨハンネス・ナウバー さんから、メールが、届きました。
★Nauber さんは、 Berliner Philharmoniker
ベルリンフィルのメンバーを経て、
現在は、ケルン Köln の、Gürzenich-Orchester
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団で、演奏されている
Boettcher 先生の、古いお弟子さんです。
★この Gürzenich-Orchester ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団は、
上記の Johannes Brahms ブラームス 作曲、
「 Das Doppelkonzert a-Moll für Violine, Violoncello und Orchester Op. 102
ヴァイオリンとチェロのためのドッペルコンチェルト 」Op.102 (1887) の
初演をするなど、歴史の古い名オーケストラです。
★Nauber さんも、私の作品を各地で、演奏してくださっています。
これから、楽しみな一年が始まります。
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