音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■《11人の大作曲家「自筆譜」で解明する音楽史》 の読後感を頂きました■

2022-07-20 01:14:59 | ■私の作品について■

■《11人の大作曲家「自筆譜」で解明する音楽史》 の読後感を頂きました■
~「三つのワルツ 作品64」は一曲として考えるべき、よ〜く分かりました~
            2022年7月20日 中村洋子

 

 

 


《11人の大作曲家「自筆譜」で解明する音楽史》が6月22日に

発売されましたが、のんびりしている間に、ブログ更新が、1ヵ月

も間が空いてしまいました。

 


★その間にも、世の中は目まぐるしい勢いで変化しています。

私の本の、若い読者の方から「じっくり拝読させて頂いておりま

す! この時代にこそ、クラシック音楽が必要であると、痛感い

たします」というお便りを頂きました。

 


★そうですね、困難な時代に、本当に必要なのは、安易に作ら

れた音楽ではないでしょう

大作曲家が全身全霊を込めて、作曲した作品にこそ、時代に

対峙する力がありますし、私たちは、手抜きすることなく、それを

学ばなければならないと思います

 

 

 


★長い間ピアノと離れていましたが、最近またピアノのレッスン

を、再開された方からもお便りを頂きました。

偶然、Chopin ショパンの「Valse Op64.No.2 cis-Moll 嬰ハ短調」

を、レッスンで弾いていらっしゃるそうです。

ショパンのワルツ作品64は3曲から成り、作品64-1は有名な

「子犬のワルツ」です。

この本のchapter 3(第3章)は「子犬のワルツ」でしたので、

第3章から読み始められたそうです。

 


第3章の小見出しをご紹介します。

・ショパンが、フォーレなどのフランス近代音楽の扉を開く


・ドビュッシーは晩年、ショパンの「ピアノ作品全集」を校訂


・「フーガ」を徹底的に学んだラヴェル


・Chopinショパンの「子犬のワルツ」は晩年の大傑作


・子犬のワルツのある「三つのワルツ作品64」は1曲として考えるべき


・冒頭のスラーの絶妙な位置、どう音楽を始めるかを示唆


・子犬のワルツは「四声体和声」、「符尾」の向きは声部を示す


・「作品62-2」の性格を決定する「gis¹」音は、最後に付け加えられた


・1小節の両端に「gis¹」を配置、堅固は"柱”を構築


・大作曲家の五線紙は、建物の設計図と同じ


・「属音」を積み重ね、クライマックスで「主音」に到達させる設計


・ショパン人気の秘密は、ドミナントから主音に達した時の開放感


・大富豪への贈呈譜でも、彫琢の過程を余すところなく記載

 

 

                           モリアオガエルの卵


★この第3章をじっくりお読みいただけましたら、「子犬のワルツ」

冒頭の、この曲のニックネームの由来ともなった、子犬がコロコ

ロと転げまわるような八分音符の主題と、その主題が再現され

る73小節以降は、旋律は同じであっても、ショパンの胸の中では、

違う声部であったことがお分かりいただけると思います。

声部が違うのであれば、当然音色や曲想も異なります。

 


★その答えは、

 《子犬のワルツは「四声体和声」、「符尾」の向きは声部を示す》

にあります。

大作曲家の「自筆譜」にしばしば見られますように、

大作曲家は、音の高さにかかわらず、ソプラノ声部の符尾は

上向き、アルト声部の符尾は下向きに記譜する例が枚挙に

暇がないからです。

正確に把握するためには、まず「自筆譜」をご覧ください。

すぐに納得できると思います。

 


ショパンは、常に「四声体和声」の物差しmeasureに則って

作曲しています

そしてそれはショパンに限らず、本書で取り上げましたどの大作

曲家の頭の中にも、厳然として存在している基準でもあるのです。

ピアノのレッスンでショパンを弾いていらっしゃる方のお便りは、

「三つのワルツ 作品64」は一曲として考えるべき 、よ〜く分か

りました。64-2から始めましたが、何年かかるかわかりませんが、

三つのワルツを弾きこなしたいです》と締めくくられていました。

 

 

 

 


★嬉しく拝読し、この本を書いて「本当によかった!」と思います。

本の校訂は何度も何人かの目を通して、目が痛くなるくらいした

つもりでしたが、ごめんなさい。目次に二カ所ミスがありました。

 


★訂正 その1
目次 chapter 4


Die Kunst der Fugue のFugueのuを削除して、Fugeに訂正して

ください(Fugaに訂正していただいてもO.K.です)。

本の92ページ(注)で詳しくご説明しましたように、

フーガの技法の初版譜のタイトルは Die Kunst der Fuge

すべてドイツ語です。

1742年にバッハが清書したフーガの技法の自筆譜に、バッハ

自身による題名の記入はありませんが、表紙にバッハ以外の

人が書いた題名は「Die Kunst der Fuga」となっています。

この「Fuga」はイタリア語またはラテン語です。

 

 

 


★訂正 その2
目次 chapter 11
「Deux arabesques」のarabesques冒頭の小文字aを、大文字A

訂正してください。

これにつきましては、5月31日当ブログに詳しく書いてあります

ので、是非お読みください。
https://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/ae7bbd01c6a301fbae0a3dab68a15904

小さなスペルにも、これだけ多くの情報が含まれています。

そしてそれは単なる衒学趣味ではなく、

その曲を読み解く大きなヒントとなることもあるのですね。

 

 

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする