音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■瀬戸内寂聴さん逝去、99歳■~≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫続編を執筆中~

2021-11-14 21:41:56 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■

■瀬戸内寂聴さん逝去、99歳■
~≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫続編を執筆中~


            2021.11.14 中村洋子

 

 

 

 

★もう暦は冬です、一歩一歩冬の足取りが聞こえてきます。

黄色くなり始めた銀杏の葉を、じっくりと見てみましたら、

外縁部と軸の部分は緑のままで、真ん中の部分が黄色でした。

一気に全体が黄色になるのでは、なかったのです。

いままで気付かず、新鮮な発見でした、音楽の勉強もそうです。

当たり前と思っていた事を、じっくり観察し、考えることですね。

 

★このところ、私は、以前に出版いたしました本の続編の執筆で、

忙しく、なかなかブログの更新ができません。

2016年の≪クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!≫

DU BOOKS刊は、三刷となり、嬉しいことに、現在も読み

継がれています。


★執筆中の本は、 Bachを始め、それ以降のMozart や Beethoven、

Schumannなど大作曲家について、その代表的な名曲を「自筆譜」に

基づいて、「対位法」や「和声」を詳しく分析しつつ、クラシック音楽の

歴史を俯瞰する、という企画です。


★入手しうる限りの「自筆譜」ファクシミリを、徹底的に勉強し直す作業

となり、とても手間と時間がかかり、脳も疲労困憊しますが、

次々と新しい発見があり、その都度、喜びと陶酔を感じます。


★例えば、 Bachの「Die Kunst der Fugue フーガの技法」が

何故、「d-Moll 二短調」のみで書かれているか・・・、

その疑問を、完全に解くことができたと、自負しております。

そんな折、作家の瀬戸内寂聴さんの訃報が流れました。

 

 

 

 

★寂聴さんは11月9日に逝去され、99歳でした。

新聞で報道されたのはその2日後くらいでしたが、

不思議な体験をしました。


★私は執筆の合間、息抜きで、軽くて楽しい本を、ソファーに

寝転んで読むのを、楽しみにしています。

この夏から秋は、決して「軽くも楽しくも」ない内容ですが、

「半藤一利」さんの本を、ずっと読んでいました。

戦中、戦後の重い歴史の真実が語られていますが、

軽妙な文章に引き込まれ、ずんずん読んでしまうのです。


★2017年刊の「おちゃめに100歳!寂聴さん」瀬尾まなほ著も、

肩肘張らず、楽しみながら読んだ本です。

瀬尾まなほさんは、寂聴さんの秘書さんで、大変お若い。

本屋さんで、この本のカヴァーに掲載されている寂聴さんと

まなほさんの写真が愉快で、面白そうなので、

「私のソファー読書にぴったり!」と求めました。


★寂聴さんの逝去が報道される以前の11月9日、本棚の一番上にある

この本をふと、手に取りました。

一番上の棚は、あふれる本の中から、処分しようとする本の居場所です。

「おちゃめに100歳!寂聴さん」を手に取り、「そろそろかなぁ(古本屋さんに

売ること)」と思ったのですが、「寂聴さんももうお歳、万が一の時に、

また読み返したくなるかも」と考え直し、本を書棚に戻しました。

 

 

 

 

 


★虫の知らせですね。勿論、寂聴さんにお目にかかったことはありませんが、

あれだけ生命力の強い方ですから、遍く(あまねく)皆さんにお別れの

ご挨拶をされて、旅立たれたのかもしれません。


★2014年の新聞のインタビュー記事が心に残っています。

<戦争なんてすれば、国はなくなるんですよ。それなのに政治家は
日本は永久に続くと思っている>
あっという間に国ってかわるんですよ
<当時もね、われわれ庶民はまさか戦争が始まるという気持ちは
なかったんですよ。のんきだったんです>
<真珠湾攻撃の日は女子大にいたんです。ちょうど翌日から学期試験で
勉強していた。そうしたら、みんが廊下を走ってきて「勝った」「勝った」と
騒いでいる。私は明日は試験がなくなると思って「しめた」と思って寝ました。
試験はちゃんとありましたけど、こうやって国民が知らない間に政府が
どんどん、戦争に持っていく。そういうことがありうるんです


★このお話、この夏読んだ半藤一利さんの「B面昭和史」に

ぴったり重なります。

「B面」とは昭和の正史ではなく、私たち庶民の歴史のことです。

半藤さんは庶民のことを「民草」と書いていました。

為政者から見れば、一般国民は単なる「民」草、雑草に過ぎない

のかもしれません。

庶民は「知らない間に」、気がつかない間に、

戦争に「もって行かれる」のですね。

 

★ふたたび、寂聴さんの言。


<1922年生まれの私は、いかに戦争がひどくて大変か身に染みている。
戦争にいい戦争はない。>
最近の日本の状況を見ておりますと、なんだか怖い戦争にどんどん
近づいていくような気がいたします>


★寂聴さんのお母様は、逃げ込んだ防空壕の中で、焼死されたそうです。
<日本にはせっかく、戦争しないという憲法があるんですよ。
それを戦争できる憲法にしようとしているんですよ。
米国から与えられた憲法だって言うけれど、その憲法で戦後70年、
誰も戦死していないんです

 

 

 

 


★<人間の幸福とは自由であること>と法話で語っておられたそうです。

私には、寂聴さんがこのインタビューを受けられた2014年より2021年の

現在は、更に心の自由が侵食されているようにも感じられます。

<私はすぐ死ぬからどうでもいいけど、子供たちにこのまま、この国を

渡して死ねない>とも語っていたそうです。


★寂聴さんは「どうでもいい」どころではなく、 2012年5月には

大飯原発運転再開に反対するハンガーストライキにも参加され、

身をもって行動されていました。

どうぞあの世(天国、ではなく極楽ですね)でも、大活躍して下さい!

ご冥福をお祈りいたします。


★ソファー読書に浸りながら、仕事をこなしています。

本の原稿もかなり書き上げました。

そのためブログの更新が間遠になってしまい、楽しみに当ブログを

お読みいただいている方には申し訳なく思っています。

もうじき目途も立ちそうですので、またクラシック音楽の楽しいお話を

たくさん書きたいと思います。どうぞお待ち下さいね。


モーツァルトの交響曲「40番ト短調」や、ブラームスの交響曲「4番」

「自筆譜」ファクシミリ等々を勉強して本に書いています。

大作曲家の「自筆譜」に感動の日々です。

Mozartも、Beethovenも、Chopinも、大作曲家は誰も彼も皆、

≪Bach バッハ羅針盤≫を手に握りしめ、音楽の“大海原”を

航海していたのです。

どうぞお楽しみにお待ちください、

来春の発行予定です。

 

 

 

 

★寂聴さん逝去の新聞記事です。

死刑や憲法9条改正の反対運動も 瀬戸内寂聴さん
                        2021/11/11  サンケイ新聞
https://www.sankei.com/article/20211111-IYJGAWINYFOZ3BQAJY5UYZ5ZMY/

 9日に99歳で死去した作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんは、女性の業(ごう)を
描いた小説の執筆や法話を通じた多彩な活動を続ける一方で、死刑や
東日本大震災後の原発再稼働、憲法9条改正に反対する運動にも積極的に
参加していた。

平成28年10月に福井市内で開催された日本弁護士連合会の死刑制度に
関するシンポジウムでは、ビデオメッセージで「人間が人間を殺すことは一番
野蛮なこと。殺したがるばかどもと戦ってください」と発言。犯罪被害者支援の
関係者から批判が上がり、後に「お心を傷つけた方々には、心底お詫(わ)び
します」と謝罪した。

東日本大震災をめぐっては、義援金活動や被災地訪問を重ねつつ、
原発再稼働に抗議するハンガーストライキに参加したこともあった。
被災地支援について、「お見舞いや寄付などできることはなんでも
してきましたが、それは、仏教徒ゆえの義務です」と語っていた。

憲法9条改正にも反対の立場で、25年に東京都内で開かれた
宗教者による集会では「今後も日本は戦争をしない国として生きる
べきです」とのメッセージを寄せた。
27年には国会前の安全保障関連法案反対集会に参加した。



 

 

 


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