☆先ずは、今週のロードショー作品では『ジャンゴ:繋がれざる者』を観たかったのだが、どうしても、夕方の用事との兼ね合いで、今日は見ることが出来ず、こちらを観た。
予告編の印象では、なんか航空機事故の派手さが目立つ物語に思えたが、それはツカミでしかなく、思ったよりも、数倍 後半の地味な展開が面白い作品だった。
要は、アル中の男が、事件の渦中で自分を見つめ直していく物語だ。
「フライト:酒に繋がれた者」だ。
不可抗力と思われる航空機事故、奇跡的な操縦で、大多数の乗客を救ったウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)だが、事故後採取された彼の血液からは、通常を遥かに超えるアルコール値が検出されていた。
果たして彼は、ヒーローなのか、罪人なのか、っちゅう話。
話は面白くて、二時間半、不思議と全くダレ場が感じられない。
だけど、別に、舞台設定を航空機事故にする必要性は感じなかった。
ロバート・ゼメキス監督は、この作品を、大人の複雑な恋物語として、ちゃんと描いていたと思う。
証拠としては、冒頭の、情事の朝の恋人同士の部屋の様子が、相手の女性(ナディーン・ヴェラスケス)の極上のボディラインとともに印象的に描かれていくことで分かろう。
その女性は、飛行機事故で亡くなるのだけど、その、華奢だが たわわなボディの見せ方の意味は、物語最後の、ウィトカー機長の決断(告白)を促す伏線として、最高の機能を果たす。
作品の途中で現われる、薬物中毒者として、ウィトカーと同類相憐れむような関係となる女性(ケリー・ライリー)がいるのだが、とても優しい目をしていて可愛く、私は、ウィトカーが羨ましくなった。
二つばかし、ややベタだが、なかなか強烈に印象に残ったシーンを挙げておく。
一つは、事故の公聴会の前夜、酒を断っているウィトカーが、酒の誘惑を断ったかと思われた瞬間、画面上に残されたアルコ-ルを鷲掴みにしてしまうシーンだ。
酒を飲んだからこそ、公聴会で真実を話す(せる)という逆説に繋がり、
酒を飲んでいたからこそ、あの、曲芸のような全滅事故回避のアクロバティックな操縦を可能にしたような気もする。
また、公聴会のクライマックスで、わざとに、もう一人のキーパーソンである恋人の名前や写真を、最後まで隠す演出は、なかなか効果的だ。
デンゼル・ワシントンの演技はよく、善良→倣岸→偽善へと変貌を繰り返し、公聴会の途中で、明らかに顔の雰囲気を変える演技は、
果たしてそれが、良心の目覚めか、コカインの効果が切れたのか分からなかったが、見事だった。
(2013/03/01)
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