まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

サイレント・ロマンス

2012-04-04 | フランス、ベルギー映画
 「アーティスト」
 今年のアカデミー賞受賞の話題作を観ることができました♪
 20年代、無声映画時代のハリウッド。人気スターのジョージは、女優志願のペピーと出会う。トーキーが主流となり、ペピーはスターダムに登るが、サイレントにこだわるジョージは人気を失い、凋落の一途をたどってゆく…
 評判通り、すごく楽しくて、ちょっと切ない佳作でした。大感動!とか強烈!な内容ではありませんが、優雅なムードや軽妙でテンポのいい展開、ユーモアあふれたシーン、喋らなくても様々な感情が伝わってくる俳優たちの感情豊かな表情や動き、サイレント映画に加えられた仕掛けや趣向など、ユニークで愉快な映画でした。音楽が言葉以上に雄弁でした。
 私はサイレント映画はほとんど観たことがなかったので、最初は無声状態に戸惑い、大丈夫かなあと不安になりましたが、観慣れると、むしろ不必要で無駄な台詞がないだけスッキリしてていいのかも、と思えまました。字幕も、極力少なめになってるので、追うのに疲れることもありませんでした。白黒がすごく美しかったのも印象的。ケバケバしく毒々しい色にさらされて疲れた目には、とても優しく感じられます。美しく優しいモノクロが、映画の世界という夢物語にピッタリ。ハイビジョンとか、私からしたら返って醜く見苦しい。くっきり&はっきりすぎる、リアルすぎる映像も話も、いかがなものかですよね。
 この映画、ジョージとペピーのロマンティックで切ないラブストーリー、とは私には思えなかったです。恋愛要素は、かなり薄かったような。スターの残酷な栄枯盛衰物語、絶頂からドン底へ堕ちるみじめさ、落ちる者あれば昇るものあり、くすぶっていくジョージと輝いていくペピーの逆転ストーリーが、切なくて痛ましかったです。スターにとって死ぬことより怖いのは、忘れられること。あんなにキラキラと我が世の春を謳歌していたジョージが、トーキーという時代の変換によって、あれよあれよと落魄していく。人間、一寸先は闇だなと怖くなりました。サイレントに固執し、どんなに落ちぶれて窮状に陥っても決して妥協せず、自分の信念を曲げようとしないジョージ。人間、こだわりが強すぎて誇りが高すぎるのもいかがなものか、と呆れました。ジョージは立派だけど、愚かだとも思った。小器用に小賢しく生きることに必死な私には、すべてを傷つけ失ってまで守りたいプライドがないからでしょうか。

 ジョージとペピーの恋が、ベタベタしく湿っぽいものではなかったのが良かったです。ペピーのジョージへの想いは、恋というより憧れ、そして滅び行く者への憐憫、代わりに自分が栄えることへの罪悪感、あと恩返しを兼ねた庇護心?それにしてもペピー、めちゃくちゃ善人です。一般人でさえ、あんな心の汚されてない人いませんよ。さんざん利用して、価値がなくなればポイっするのがフツーの女優、野心のために身も心も汚れることが成功の代償って感じなのに、ペピーときたら。落ちぶれたジョージを忘れず、彼に対する優しさも失わず、しかも彼を救おうと行動する。彼女の無償の博愛精神?が感動的です。
 新しいものに呑まれることを拒み、矜持を保ったまま美しく消えてゆく古い価値観…みたいなラストだったら、切ない余韻が残ったかも。でも、ハッピーエンドは後味が良かったです。
 カンヌ映画祭男優賞、そしてフランス男優初のアカデミー主演男優賞という快挙を成したジョージ役のジャン・デュダルダンの快演がトレビアン!です。すごいダンディだけどオチャメで軽快、笑顔が可愛いジャン。フランスでは国民的スターだという彼の作品は、日本ではほとんど未公開。私も「マリアージュ!」しか観たことなかったけど、男前コメディアンとしての魅力と力量を、遺憾なく発揮してのオスカー獲得です。重苦しい汚れ役よりも、ジョージみたいなコミカルかつペーソスある役のほうが難しいと思う。オスカー受賞を契機に、ジャンの他の出演作も日本で日の目を見ることでしょうか。
 ジャン・デュジャンダンって1972年生まれの40歳、木村拓哉さんと同い年!とは信じられないほど大人の男って感じですが、キムタクさんが失ってる肌の艶と張りはあって、やっぱジョニーやブラピよりは若いな~とは思わせてくれます。
 ペピー役のベレニス・ベジョの、元気ハツラツなイキイキとした、そして慈愛に満ちた演技もチャーミング。でもペピーは、もうちょっと若い女優のほうが適してたのでは。ベレニスは美人だけどアップになると、駆け出しの新人女優には見えなくて
 ジョージの映画と私生活のパートナーでもある犬が、驚異の演技。あの犬にも何か賞あげたいです。

 アメリカを制したジャン・デュジャルダンは、もうフランスでは英雄扱い?
 

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4 コメント

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3回めの削除の前に(笑) (Unknown)
2012-04-05 03:31:29
日本ではおおコケ確実!
来年の今頃は“あ~そう言えばあんな映画があったね…”程度(爆)
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うらやまぁ~ (はちたま)
2012-04-06 00:57:11
松さん、こんばんは!
「アーティスト」もう観られたんですか?うらやまぁ~。
水曜レディスdayに「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」を観に行ったのですが、そこで「アーティスト」のちらしもらって『絶対観に行くどぉ~!』と誓ったところでした。(んな大げさな・・・)
ジャン・デュジャルダンは、ちょい見た限りではタイプではありませんが、ワンちゃんが名演技を見せてるのこと、超楽しみです!
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ワンちゃん (amore)
2012-04-08 01:03:31
2人の主役もよかったけれど、このワンちゃんがご主人思いのめちゃくちゃ可愛いキャラで、特におまわりさんのトコまで走り続ける姿にはじわっときました。その辺の若いハナタレ女優なんて、ぜーんぜん話にならんです。この作品のほんの少し前に、ジャン・デュジャルダンが出演したサスペンス作品を観ました。ぜーーんぜん、別人!彼ってすごい。
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名犬 (松たけ子)
2012-04-09 22:12:30
はちたまさん、こんばんは!
試写会で観ました♪すごく楽しい映画でしたよ!はちたまさんのご感想&イラスト、早く拝聴拝見したいです。
ワンちゃん好きなら、犬の名演だけでも必見かも!

amoreさん、こんばんは!
ほんと、ラッシーもソフトバンクのお父さん犬も真っ青な活躍ぶりでしたよね。
ジャン・デュジャルダンの映画って、日本では全然観られない(涙)。そのサスペンス映画、観たい!
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